殺人犯と唯一話した女性。
かなり駄文だと思いますので、誤字、脱字はご了承下さい。また、アドバイスやコメント等よろしくお願いいたします。
「この本を出版したら、その全ての利益を寄付して下さい。」そう彼は言って私にだけ自身の心の内を語ってくれたーーーーーーー。
世界では暴動や戦争等が起きているのに対し、この国のトップニュースは「スーパーで窃盗事件発生」だった。世界からは「えらく平和だな」と嘲笑されるだろうか、それともこんな事がニュースとして載る平和を羨ましがられるか。だが、そんないつも通り日のの午後のニュースは違った。
○○県○○市で殺人事件発生。6人殺害で夫逮捕。
久しぶりの事件にマスコミやネット掲示板は大きく盛り上がった。マスコミ各社ではいち早く手柄にしようと互いに足を引っ張り合いながら容疑者の顔を撮ろうと躍起になっている。インターネット掲示板では、一昔前に驚異の特定力を誇る事で有名となっていた[特定班]が再び活動を再開し、マスコミ各社を大きく上回る速度で情報が出回った。
容疑者の名前は春山 義和。(はるやま よしかず)
年齢は28歳、身長175.3cm 体重55.7キロ
経歴は至って普通で特に目立った部分は無し。
殺害したのは、自身の両親、妻の春山 咲子、咲子の母親の中西 洋子 (なかにし ようこ)と咲子と不倫関係にあった大山 大輔 (おおやま だいすけ)
そして驚きだったのが義和と咲子の娘、春山 恭子 (はるやま きょうこ)だった。
殺害された当時、7歳。今年から小学校に通う予定だった。
幼児の殺害という事でマスコミや掲示板では義和は大バッシングを受けた。マスコミでは「一家6人殺し」と呼ばれ、掲示板では義和の死刑を望む声が上がり、署名活動まで展開された。
この間、義和は一切の黙秘を貫いた。弁明も自供も一切話さなかった。ただ1人、現場を見ていた咲子の父親、中西吉蔵(なかにし よしぞう)の証言により事件の概要が明らかになった。
事件当時、義和と咲子は離婚協議中だった。離婚理由は義和によるDVである。咲子がDVにより洗脳状態になっていた所、咲子の両親により、カウンセラーの大輔を紹介され、親しい仲になった。だがこの状態は不倫とも取れるので過去を精算する為に義和と離婚協議を開始。また義和が暴れない様に義和の両親と咲子の両親、大輔も呼んでいた。
離婚協議は拗れ、義和は再構築を希望するが、咲子は拒否、すると声が大きくなっていたのか、2階に居たはずの恭子が1階に降りていた。
その際、義和は恭子に「お父さんとお母さんと恭ちゃん、皆一緒が良いよね?」と聞くが恭子は「お父さん、キライ!」と拒否。
これにより義和は発狂。事件が起きたと言う。
しかし、 マスコミが被害者の周囲と交友関係のあった人をインタビューしていくと矛盾点が何点か見られた。
1つは大輔はカウンセラーの資格を取得していた事を知る人が居なかった事。
2つは夫婦を見たことのある人物によると義和の方がDVを受けているように見えた事。咲子はぽっちゃり体型だったが、義和は痩せこけていたとの事。
事件の概要が報道された時、初めて義和は口を開き、こう言った。「その報道は真実では無い。」と。
世間ではこの発言を「狂言」 として扱ったが、報道されなかった部分で、義和はこの事件の根幹とも言える証拠を握っていると話した。警察はこれを虚偽とは思わず、義和の言った住所へ警官を向かわせた。その住所は古びたアパートだった。管理人の許可を得てから指定された部屋に入るとダンボールが1つだけ置かれていた。警察はこれを重要な証拠とし、押収した。
そして初公判が行われた。世間の関心は高く、傍聴席には多くの人が詰めかけた。そして傍聴席には洋子と咲子と恭子の遺影を持った吉蔵の姿があった。検察官は「非常に残忍かつ類を見ない事件であり、情状酌量の余地は無く、被告人には死刑が妥当」とした。
こんな死刑以外ない様な裁判で弁護士は堂々と言った。「今回の事件では被告人だけで無く事件現場にいた恭子ちゃんを除いた全ての人に責任がある」とし、殺人は恭子ちゃんのみ認め、その他の人の殺人については情状酌量の余地があるとした。この裁判中でも質問以外に義和は顔を伏せ、一言も話さなかった。
裁判では驚きの連続だった。余りにも多くの真実が隠されていたからだ。
事実は小説よりも奇なりとは良く言ったものだ。
義和は家庭内でDVを受けていた。それも1人からでは無く、咲子、洋子、吉蔵からだった。また、恭子は義和と咲子との子供では無く、大輔との子供だった。
事件当時、義和の肉体は限界を迎えており、衰弱していた。咲子らが義和に高額の保険を多数掛けており、
恐らくそれを受け取るためと推測された。離婚を決意し、5人を自宅に呼び寄せた所からは義和か仕掛けたというカメラで録音されていた。
咲子は「あなた何かと結婚して最悪だった。早く大輔君と会うべきだった。」と話し、大輔は「早くこんな男が咲子さんと結婚して咲子さんにバツを付けるなんて!咲子さんに謝れ!」と激昴、洋子と吉蔵は「そんなみすぼらしい姿をしておきながら咲子見たいな美人と結婚出来たんだ。しっかりとお礼金は頂く」と義和を罵倒した。
義和の両親は「お前見たいな取り柄の無い男を愛してくれたんだ。お金は縁切り代としてやりなさい」と言った。だか、義和は恭子さえ居ればお金も何も要らなかったと話した。しかし、現実はそうも行かなかった。話を聞いて恭子が1階に降りた時、恭子は義和を見向きもせず、大輔の隣に座ったのだ。
この時の恭子の一言は裁判所で傍聴していた人は絶対に忘れないだろう。
「おとうさんはおとうさんじゃないんだって!だいすけおにいちゃんが本当のおとうさんなんだってー。だから、おかあさんとだいすけおにいちゃんときょうちゃんのかどでをいわってください!」
と元気一杯の声で言った。
彼女は幼いからこそ、皮肉や嫌味等無い、心から思っている事を口にしてしまったのだ。この時から5分間は記憶が無いと義和は私に話した。
気が付くとそこは地獄絵図だったという。
壁や扉には血が至る所に着いており、自身の手も同様に赤く染まっていたそうだ。
義和の両親は壁に寄りかかった状態で頭部が血で赤くそめられたおり、咲子は顔面がひしゃげて、見るに堪えず、大輔はズボンに大きなシミを作って呼吸をしていない。洋子は腕が関節では無い場所から曲がっており、吉蔵は異臭のするズボンをこちらに向けて「お助けぇ、お助けぇ、」とか細い声で命乞いをし、恭子の首には絞めたかの様な跡が残り、動かなかったという。
裁判所でこの時の音声は公開されていない。裁判所で流された音声は恭子の言葉で止められ、裁判所内は異様な雰囲気に包まれた。吉蔵は顔を隠し、「違う、違う、あいつが、、」とうわ言を呟き続け、廃人の様だった。記者席に座っていた記者はメモを纏めると急いで各々の部署に電話を掛け、口々に「デカいネタが来ました!絶対売れます!」と興奮しており、裁判長から「傍聴席及び、記者席の方々は静粛に」と注意されていた。
その後、裁判は進み、裁判長は「確かに、被告人には責任は無いが恭子ちゃんを含め、6人という命を奪った事には変わりなく、情状酌量の余地はあるが、この事実は変わらない」とし、義和を死刑とした。その次に裁判長は吉蔵を見て「私にも娘がいますが、あなたは父親として、娘を叱らねばならなかった。その役割を放棄しただけでなく、保険金のために人を殺そうとするあなたを私は軽蔑する。」と言った。吉蔵は下を向いて唇を血が出る程噛んでいた。記者達は吉蔵に「鬼の父親」「裁判長、吉蔵を徹底的に批判、あなたを軽蔑する。」等付けて、雑誌のトップには、「一家6人殺しの闇!この判決は妥当か!?」等様々な題名がつけられた。
義和は最後に「確かに私は6人の命を奪いました。しかし、私は恭子の命を奪った事以外は後悔していないし、恭子だけには謝りたい。最後に、お義父さん、いや吉蔵さん。良くもこんな場所に3人の遺影を持ってこられましたね。その神経の図太さだけは凄いと思います。」顔色を一切変えずに言い残し退廷しようとした瞬間、吉蔵が「お前が大人しくしておけばーーーーー!!!!!!」と怒号を出しながら義和に迫ったが、即座に取り押さえられ、裁判長から退廷を命じられていた。
そんな中、私、大春 華子は偶然にも傍聴席を獲得した一般人だった。
裁判所を出て直ぐに私は世間からの好奇の目とマスコミの取材を求める声に僻癖していた。マスコミには何故か住所がバレたようで
連日家の前で「大春さん、例のビデオはどの様な物でしたか!?」「義和さんは何か言われていましたか!?」と近所迷惑を考えない取材が相次いだ。
正直、私に取材されても、と思っていた。私は義和との関係もないし、ただ興味が湧いたから裁判所へ出向き、偶然、傍聴席の席に座ることが出来ただけだった。しかし、私はどうしても拭い切れない疑問があった。
義和は何故、吉蔵を殺さなかったのか、である。
義和にとって保険金殺人を企てた3人は殺してもおかしくない。しかも、その内2人は殺害しているのに、吉蔵だけは殺害していない事に私は疑問を感じざるを得なかった。そう考え込んでいる内に私の足は義和のいる留置所へ向かっていた。