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ツバメは街へゆく③

幼女、子犬、私の3人で構成されたドラクエまがいのパーティー編成は、正直私にとって大変ありがたいものだった。


変なお姉ちゃん扱いされる以外は至極愛想の良い子で、私がご飯と寝床を探してると話すと

「分かった!それじゃお家泊まれないかお母さんとお父さんに聞いてみるね!」

なんて最高の返事が返ってきた。



聞けばこの子の両親は麦畑で働いているらしく夕暮れまで帰って来ないらしい。

それまでほったらかしにするのも親としてどうかとは思ったけど、街の雰囲気を見るに皆が顔見知りだそうで。

市場の人と親しげに話す女の子の姿は、とても頼もしく私の目に映った。


「お前のお友達は凄いねえ」

女の子が市場の人と色々話している最中、その後ろで子犬にそんな言葉をかければ、子犬も満足そうにワンッ!と返してくれた。


「はい!おねーちゃんこれあげる!」

いつの間にか会話を終え、私の方にやって来た女の子の手には、美味しそうな焼きたての丸いパンが握られていた。


「え、これ?いいの?いいんですか?」

驚いて女の子と市場のお兄さんを交互に見る。


「いいよいいよ!お姉ちゃんニナちゃんと友達なんだろ?持ってきな!」  

ニッコリ笑顔で返してくれたお兄さん最高すぎる…!

「あ、ありがとうございます…!」 

お腹は空いていたからめっちゃ嬉しい。

今日からこのお兄さんはパン兄さんとでも名付けよう。いや本当に嬉しい。


パン兄さんが口にした“ニナ”というのは女の子の名前らしい。


「ニナもありがとね!」


「いいよー!私おねーちゃんと友達だもん!」


ニナまじ天使。

本当にありがとう。




そこからニナの案内の下、色々と街を回った。

どうやら皆私の奇抜な服装のせいで売れない旅芸人とでも思っているようで、あちこちで何か芸をしてくれと言われた事以外は、比較的楽しく朗らかに街を観光できたと思う。


ちなみに何をやったかは墓まで持ってくつもりだ。口が裂けても私は言わないぞ。ウケなかったし…


そんなこんなで夕暮れになり3人で麦畑に向かった。


「こんな時間までお父さんとお母さんお仕事で大変じゃない?」

道中そんなことを聞いたが、

「うーんちょっとさみしいけど…でも皆優しいし大丈夫!」

「ほんと?」

「うん!それに今はおねーちゃんがいるから大丈夫!」


はー天使かよ…。尊すぎる…。




そんな中視界が急にひらけ、もう街を出るのだと認識した。





そして光景を見て思わず絶句した。




だってあまりにも綺麗だったから。




傾きかけた日の光が畑一面に広がる金色の麦に乱反射して、金に輝く世界が私の眼前に延々とそこに在った。


それが緩やかなそよ風にヒラリヒラリと揺れ動き、その姿は見る者を飽きさせることなく、きらびやかに私達とアルファンの街を照らし続ける。



私が今まで見たどんな景色よりも美しかった。



「すごい……」


感嘆のため息とともに、そんな言葉をポツリと呟いたのは私だ。


「わたしもこの景色すき!」


隣で太陽みたいな笑顔でニナが言う。

子犬もそれに同意するようにワンッ!と鳴いた。


「あ!お母さん!お父さん!」


急にニナが金世界に駆け出した。

よく見れば二つの影がこっちに向かってきてるのが分かった。


片方の影がやってきたニナを抱き抱え、もう片方の影が隣でニナの頭を優しく撫でる。 



「なんかいいなあ…」


色々と不安とか疑問はあるし私に特別な力は無いけれど、



それでもこの世界に来て良かったなと。



この世界に来て初めて思った。

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