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落ちる二人は何処へゆく

訳あって異世界へ飛ばされた朝日奈ツバメは、そこで紆余曲折しながら彼女らしく生活する。

だがそんな仮初めの平穏を時代は許さない。

苦難と決断の渦に巻き込まれた彼女は何を思い何を願うのか。


※戦闘描写は少なくなっています。

 また、基本シリアス面がちょっと強いかもしれませんがご容赦ください。


《本章における主な登場人物》


・朝日奈ツバメ

春に高校三年生となった。バスケ部所属。図書委員。

身長150cm半ばの茶髪ボブ。


・夜月カケル

ツバメの同級生。3年間同じクラスだった。読書好き。図書委員。

身長170cm半ばの焦げ茶混じりの黒髪クシャクシャ頭。


・ニナ

アルフォンの幼女。動物が好き。


・ニナの父母

麦畑で仕事をしている。


・リン

剣の国の女戦士


・グンダ・ドスプル

魔の国の兵士



 3年間同じクラスでずっと席が隣だった男の子を放課後の図書室に呼び出して、

「てかLINEやってる?」並みに軽いテンションで連絡先を聞き出そうとした途端、足元にぽっかり穴が開いた。



―――なんて経験をした女子高生は私以外にいるのだろうか。





いや決して緊張でふらついてとか何かの心情表現とか比喩とかじゃなくて。


マジで、リアルに、普通の………普通の穴って何だ?分かんないけどまいっか。



とにかく気づけば私たちの足元には、半径2mほど墨汁を塗りたくられたような真っ黒に円が広がっていた。



「あの、3年間同クラだった夜月(やづき)くん…だよね?せっかく同じ図書委員になったことだし良かったら連絡先交換しない?」


他意もなく単に私はこれを言っただけ。

こんな差し障りの無い発言がトリガーになったかのようなタイミングで穴が開けば、一介のバスケ部JKでなくてもそりゃ唖然とするでしょ?


私なんて余りにも急すぎて、相手の反応を見る余裕も「あ」とか「え」とか感嘆する間もなかった。

ただだだ私の身体は足元に広がる暗がりに沈み込んでいく。



「わあ」


そして放たれた第1声が間抜けすぎて自分でも驚いた。

突拍子もなさ過ぎてJKの思考回路じゃどうやら処理しきれていないみたいだけど、それにしてもあまりに間抜けすぎるよ私。


 なんて1人ツッコミは出来ても肝心な思考が働かないからか、感覚的には中学の卒業旅行で乗った遊園地にあるフリーフォールに近いかも…なんてぼんやり考えていた。


そんなことは露知らず、身体は下に下にと進み続ける。


やったことないけどもしかしたらスカイダイビングもこんな感じなのかもしれないな…何て思いながら図書室の天井が遠くなるのをぼんやりと見つめながら身体は沈む。



朝日奈(あさひな)!朝日奈!!」


大きな声で名を呼ばれて。はっと我に返って。

声の主である夜月(やづき)カケルの姿を探す。


身体中にGがかかる中で目線だけで何とか周りを見渡し、そして上空に彼の姿を捉えた。

当たり前だけど私のように夜月くんも穴に囚われていたみたいだ。


「朝日奈!大丈夫か!?」


「え、えと!大丈夫じゃない!」


普段物静かな彼からあんな大きな声が出るギャップに驚いたからか意味不明な現状に対する苛立ちからか、思いきりどストレートに返事をしてしまった。

いやだってどうみても大丈夫じゃないでしょお互いに。意味分からないし。



「朝日奈、掴まれ!!」


彼が私に向かって手を伸ばす。




ただ



それでも



私は手を伸ばす。



夜月くんも手を伸ばす。




闇の中で、まるで映画のワンシーンのように私と彼は互いに手を伸ばす。






けれど、その手は繋がれる事もなく。





彼の姿は鬱蒼とした闇に吸い込まれていき、やがて微塵も見えなくなった。


「ツバメ!」


最後に名前を呼ばれた気がした。


そして私も薄れゆく意識と心細さと共に同じ闇に取り込まれるようにして深く深く沈んでいった。


…高校3年じゃなければ「落ちる」って直接的表現も出来たのになぁと暢気な事も頭の隅で考えつつ、


…彼が私の名前を知ってくれていたことが少し嬉しかったなんて私らしくないことも頭の隅で考えつつ、



朝日奈ツバメも夜月カケルも穴に囚われ



―――そしてその日二人は図書室から姿を消した。


ツバメ視点とカケル視点で話を進めます。



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