最終話後編 君の生きた証
今日は二話分投稿してるので最終話前編を読んでない方はそちらから先にお読みください。あとがきで色々話します。
あの日から5年。
無事大学も卒業し、私は小説家になっていた。
気を紛らわすために始めた趣味だったのだが、ふとしたことから書籍化。
どんどん売れていった。
だが、私が完結させた物語は1つだけ。
それ以外は、完結させようとすると結局同じ終わり方になって、別の物語が書けなかったからだ。
今となってはもう、他の物語を書く気は無くなっていた。
今日はサイン会。
私も有名になったものだ。
たった1つの物語が、多くの人の心を動かした。
その勢いは未だ留まるところを知らない。
「あ、あのっ!」
ファンの子の声にハッと我に返る。
次は学生2人組のようだ。
すでに1つの決まった形となった挨拶をし、笑顔を浮かべる。
「応援ありがとう」
「は、はいっ!」
「あの、このお話、元になったものとかあるんですか?」
唐突に聞かれたその質問に、私は5年前の出来事を思い出していた。
「······うん、あるよ」
私の消え入るような声にも、ファンの子達は反応した。
「わあ!やっぱりー!」
ファンの子たちの声が遠い。
やはり、克服など出来るはずもない。
いや、克服など、しなくてもいいのかもしれない。
受け止めて、私の中に遺して行けばいい。
私が、その存在を知っている。
――――来亜······。私は······
自分の世界に入りかけたところで、また声がかかる。
「じゃあ、何でこれを書いたんですかー?」
その質問への答えは、すでに心の中に存在していた。
むしろ、これが全てであり、これを無くしての物語はただの抜け殻だ。
周りの目など気にせず、自分に言い聞かせるように。
そして、ゆっくりと想い出を辿るように。一筋の光が頬を伝う。
「······遺す為、かな」
これは、赤城来亜という一人の少女が生きた証。
誰よりも早く散った、残酷な一輪の花が咲いた物語。
彼女は、確かに存在していたのだと。
これがその存在を証明してくれる。
私の死と共に消えるのではなく、未来へ残っていく。
《ありがとう、莉乃》
その時、来亜の声が聞こえた気がした。
【あなたへ -end-】
まず、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました!僕が連載してる物語で初めて完結したやつです。それぞれが短い上にたった六話(最終話を前後編に分けてるから正確には五話)で終わるというなんとも言い表せないものとなりました………。拙い文章でしたが、どうでしたでしょうか?感想など頂けると喜びます!ブックマークとかね?ちょっとポチッと押してもらえるとまた何か書こうって思えるので切実にお願いしますっ!今回のこれ、あまりにも端折りすぎたんで気が向いたら端折ったところをちゃんと書いて改訂版として出します。では改めて、僕の物語を読んでくださり、本当にありがとうございました!