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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 8 残党狩り  作者: 石渡正佳
ファイル8 残党狩り
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ゲリラパニック

 翌朝また向後課長から電話があった。「伊刈さん、またやられちゃったよ」

 「今度はどこですか」

 「それが同じ場所なんだよ。今度は二台なんだ。ゴミがゴミを呼ぶってやつだな。こりゃほんとに一大事だよ」

 「昨日と同じものですか」

 「いや違う。一台は似たような廃材なんだけどもう一台は中途半端に野焼きした消し炭みたいな廃材だ。同じものじゃないよ」

 「それは便乗投棄ですね」

 「どうすりゃいいんだい」

 「とにかく証拠を拾っておいてください。今から行きます」

 「毎日悪いね。うちの職員を現場に待たせておくから指導してくれないかね」

 「わかりました。特別ですよ」

 伊刈は今回は遠鐘を指名して現場に急行した。照稲役場の職員二人が廃棄物には触れずに伊刈たちの到着を待っていた。

 伊刈が教えたとおりの方法で照稲町役場職員が証拠を調査した結果、最初の一台は埼玉の解体業者が県内のダンプ運転手に渡したものだと判明した。運転手が現場を確認する日には伊刈も立ち会うことになった。出頭した運転手の樋口は三十代のガタイのいい男だった。

 「どうしてこんなとこに棄てたんだ。いくら田舎といったって信号のある交差点だぞ」向後課長がたしなめるように言った。

 「昼間見るとずいぶん目立つんすね」樋口は自分ながらバカなことをやったと後悔して頭をかいた。

 「やられた地主のことも考えろよ」

 「そおっすね」

 「犬咬に行こうと思ってたのか」

 「ええまあ」

 「じゃなんで行かなかった」

 「ここまで来たら犬咬は取締りがきつくてやれないって聞いたんすよ」

 「無線でか」

 「ええまあ」

 「やっぱりそうか。それでここに棄てたのか」

 「ほんとにすんません。すぐに片しますから、なんとか穏便に願えませんか。子供もいますし逮捕されてダンプ取られたらもうおしまいっすよ」

 「だったらこんな危ない仕事するなよ」

 「そおっすよね」

 「片せば県庁や警察には通報せずに勘弁してやるからきれいにしろ」向後が言った。

 「わかりました」樋口は撤去を約束してすごすごと帰った。

 後から捨てられた二台も埼玉県のダンプ運転手二人がつるんで棄てたものだと判明した。

 翌日、照稲町で最初に撤去を約束させた樋口から伊刈に電話がかかった。「あの、撤去のことなんすけど」

 「撤去の相談なら照庭役場にかけたらどうだい」

 「役場にかけたら伊刈さんに相談しろって」

 「しょうがないなあ。なんの相談かな」

 「高いんすよ。正規のとこに処分代聞いたらダンプ一台二百万なんて言われたんすよ」

 「不法投棄の撤去だって正直に言ったから足元見られたんだろう。それにしてもちょっと高いな。それ、どこだよ」

 「茨城なんすけどね、ぼったくりっすよ。なんとかならないすか。二百万円は俺とてもムリっすよ」

 「わかった。処分先はこっちで探してやるよ。埼玉のゴミなんだから埼玉へ持って帰ればいい」

 「ほんとすか。じゃほんと頼んます」

 電話を切るとさっそく伊刈はこれまで撤去指導したことがある埼玉の業者の中から適当な処分先を選んで電話をかけ、通常料金の二十五万円で協力させることにした。

 「伊刈さんの頼みじゃしょうがないすね。目つむって受けますよ」電話口に出た工場長が言った。頭をかいているのが目に見えるようだった。

 「でも二十五万なら損はさせてないだろう」

 「ま、そうすけどね。どんなのが来るんですか」

 「廃材にちょっと燃え殻が混ざったくらいだよ」

 「勘弁してくださいよ伊刈さん、それ品目違反かもしれないですよ」

 「だったら断ればいいよ」

 「ほんとによく言いますよ」工場長はすっかりタメ口になっていた。

 樋口はさっそくユンボを回送して伊刈が段取りした処分場に不法投棄物を持ち込んだ。

 稲庭町ゲリラ事件の最初の一台はなんとか一件落着となった。

 「ほんと助かりました」撤去させられたというのに樋口は感謝感激で伊刈に電話をかけてきた。

 後から棄てられた二台も同様にして片付いた。

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