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包帯公爵の結婚事情  作者: 奏 舞音
結婚式編

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172/205

第9話 王城からの帰り道

今回もお待たせして申し訳ありません!

久しぶりのアルフレッドとシエラです。



 王城からの帰り道、馬車の窓からは夕陽が差し込む。

 眩しさに目を細めると、アルフレッドがそっとカーテンを閉めてくれた。


「景色が見れるかと思ったが、眩しかったな」

「いえ、ありがとうございます」


 結婚前、王都に来ることはあっても、街を眺めることはできなかった。

 呪いが解けて視力を取り戻してから、シエラは街の風景を眺めることが好きだった。

 それを知っているアルフレッドは、どこかへ出かけることになると必ず、窓の大きな馬車を手配して、景色のいい道を通るようにしてくれているのだ。

 アルフレッド本人はなにも言わないけれど、いつも素敵な景色を見せられていれば気づくというもの。


(アルフレッド様は毎日わたしを幸せな気持ちにさせてくれるわ)


 カーテンを閉めて景色が見えなくなっても、隣には大好きなアルフレッドがいる。

 それだけでシエラは満たされている。

 アルフレッドの美しい横顔をじっと見つめていると、「どうした?」と優しい低音が耳に届く。


「幸せだなぁと思いまして」


 ふふっと頬を緩めれば、アルフレッドも相好を崩す。

 そして、シエラの額にちゅっと軽いキスを落とした。


「あぁ。この幸せがずっと続くように、今の平和を守っていかなければならないと思う」


 ぎゅっと抱きしめながら、耳元で言われてしまえば、シエラはコクコクと頷くことしかできなかった。

 心臓が痛いくらいにはねている。

 夫婦として過ごす時間が増えても、いつまでも夫にドキドキしてしまう。


(アルフレッド様は真剣なお話をされているのに、落ち着いてわたしの心臓!)


「イザベラ王女の協力はありがたいが、陛下がどう考えるかは不安だな」


 イザベラが"呪われし森"に同行する許可が出た。

 しかし、以前シエラが釘を刺されたように、ザイラックは今回の計画に反対している。

 友好国の王女がその計画に参加することをどう考えるだろうか。

 内密にしていても、国王の耳となる存在はあちこちにいる。

 いつかはザイラックの耳に入るだろう。

 アルフレッドが女神の加護を得て、イザベラが協力するとはいえ、確実に呪いが解けるかは未知数だ。


「すまない。心配していても仕方ないな。陛下が何と言おうと、私たちは進むしかない」


 アルフレッドの力強い言葉に、シエラも頷いた。


「大丈夫です。わたしたちならきっとやり遂げることができますわ」

「そうだな。私にはとても心強い妻がいてくれるからな」

「わたしも。かっこよくて強い旦那様がいてくださるので、安心してついていけますわ」


 二人で笑みを交わし、そっと唇を重ねた。

 しばらくそうしていたが、ガタンと馬車が揺れ、名残惜しくも唇が離れる。

 その代わりに手を繋ぎ、アルフレッドが切り出した。


「だが、リーベルトに帰る前にやるべきことがある」

「やるべきこと、ですか?」

「ウェディングドレスの試着だ」

「えっ!?」


 にっと笑ったアルフレッドの言葉に、シエラは目を輝かせた。

 やはり大好きな人との結婚式で着るウェディングドレスというのは特別なものだ。

 最初にアルフレッドのもとへ押しかけた時にも、花嫁衣装はとびきりきれいなものを選んでもらった。

 それに、今はシエラ自身が見てドレスを選ぶことができるのだ。


「ありがとうございます! でも、石碑の制作を優先しなくても大丈夫なのですか?」

「シエラ以上に大切なものはない。それに、女神の呪いを解いて、半年後には大聖堂で結婚式を挙げる。この予定を変えるつもりはない」


 裏返せば、失敗する未来はないと信じているということだ。

 これからどんなことがあったとしても、自分たちが結婚式を挙げて皆で笑い合う未来が待っている。

 シエラもアルフレッドと同じ気持ちだ。

 絶対に成功させる。


「あとは、殿下を慰めることにならなければいいのだが……」

「そうですね」


 繋いだ手にぎゅっと力を入れて、クリストフとイザベラの話し合いがうまくいっていることを願った。

 もし何かあれば、相手の心に寄り添いたいと思いながら。


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