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包帯公爵の結婚事情  作者: 奏 舞音
女神の加護編

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162/205

エピローグ 愛しの天使像

 誰よりも大切な愛しい妻の誕生日は、自分が一番に祝いたい。


 ――シエラの誕生日には、いつも音楽会を開いていた。


 音楽会の開催日程を相談した際、クルフェルト伯爵から聞いた話だ。

 誕生日にはどうしても母親のことを思い出してしまうから、シエラの幸せと笑顔を願うクルフェルト楽団の皆で決めたことで、一度も欠かしたことはないという。

 そして今年は、結婚して初めて迎えるシエラの誕生日。


『もう私たちがいなくても、シエラは君がいてくれれば大丈夫だろう』


 クルフェルト伯爵の少し寂しそうな表情を見て、アルフレッドは提案した。

 誕生日の前日に音楽会を開くことを。

 毎年の誕生日に大勢の仲間たちと音楽を奏でながら過ごしていたのなら、きっとシエラも寂しいと思うから。

 その代わり、日付が変わった瞬間、シエラの誕生日を祝おうと決めていた。

 音楽会は無事に終わり、特別で大切な日がやってくる。

 シエラはアルフレッドからの贈り物を喜んでくれるだろうか。

 そんな心配は杞憂に終わり、シエラは涙を流して嬉しいと微笑んでくれた。


(よかった……シエラが喜んでくれて)


 初めて出会った満月の日には、冷たく突き放して泣かせてしまった。

 けれど、今夜は満月の下、シエラの笑顔を見ることができた。

 シエラが台座にプレートをはめる様子を見ながら、アルフレッドは改めて今ある幸せをかみしめる。

 その直後、天使像が満月の光ではない眩い光に包まれた。


『ようやくそなたの愛情が形となったようだな。美しい愛に祝福を――』


 不思議な声が脳内に響いたかと思うと、アルフレッドの耳に美しいメロディーが聴こえてくる。

 シエラの誕生日に間に合うようにと公務の合間に制作していた天使像が、幸せを願う歌を紡いでいた。

 女神ミュゼリアの祝福が、天使像に降り注いだのだ。


「ア、アルフレッド様。これって……!」


 同じように天使像の歌が()()()()いるのだろう。

 シエラが興奮気味にアルフレッドに詰め寄る。

 まだ信じられなくて、アルフレッドは茫然と天使像を見つめることしかできない。


「あの、アルフレッド様? 大丈夫ですか?」


 あぁ、可愛い声が自分の名を呼んでいる。

 心配そうに見上げてくる虹色の瞳が愛おしくて、思わずシエラをぎゅっと抱きしめていた。


「やはり、シエラの声は癒されるな。もっと、私の名を呼んでほしい」

「……アルフレッド様! もしかして、耳が?」


 シエラの声に、アルフレッドは頷いて答える。


「〜〜アルフレッド様、アルフレッド様っ! 大好きです! 本当に、よかった……です」

「心配をかけてすまなかった。女神から祝福を授かれたのは、シエラのおかげだ。本当にありがとう」

「わ、わたしは何も……でも、少しでもアルフレッド様のお力になれたなら嬉しいです。女神様にも感謝を伝えないといけませんね」

「そうだな」


 アルフレッドにとってはシエラが女神のような存在であるが、魔女の呪いで喪った聴力を取り戻してくれたことには感謝している。

 あの時に賜った言葉でひとつ引っかかっていることがあった。

 『ようやく』ということは。


(ずっと、女神は私を見守っていたのだろうか……)


 愛しいぬくもりを腕に抱いて、天使像が紡ぐ歌を聴きながらアルフレッドは女神へと思いを馳せる。

 やがて歌が終わると天使像の輝きも消え、庭園はしんと静まり返る。


「シエラ、喜んでもらえただろうか?」

「もちろんですっ! 最高の誕生日ですわっ!」


 全力で頷いて、シエラは天使のような笑みを浮かべた。

 女神の加護を得たことよりも、聴力を取り戻したことよりも、シエラが喜んでくれたことがアルフレッドにとって何より嬉しかった。


「アルフレッド様」

「ん?」

「ふふふ」

「どうしたんだ? シエラ?」

「わたしの声に返事をしてくださることが嬉しくて」

「……かっ」


 あんまり可愛すぎることを言わないでほしい。

 理性が一瞬で飛びかけた。

 そんなアルフレッドの葛藤に気づかず、シエラはアルフレッドにぎゅっと抱き着いた。


「アルフレッド様、わたしとっても幸せです」

「あぁ。私も同じ気持ちだよ」


 アルフレッドが女神の加護を得たことで、呪いを解く計画は本格的に動き出すだろう。

 また危険な目に遭うかもしれない。

 それでも、この幸せな時間がこれからもずっと続くように。

 大切な人たちを守るために。

 そのために必要なことならば、どんなことでもしてみせる。


「そろそろ屋敷に帰ろうか」

「はいっ!」


 二人は仲良く手を繋ぎ、歩き出した。


 満月の光を浴びながら、天使像は祈るように歌う。

 どうか、二人の行く末が幸せでありますように。


いつもお読みいただきありがとうございます。

《女神の加護編》、完結しました!!!!

途中で結婚式どころではなくなり、章タイトルを《女神の加護編》に変更したりと色々ありましたが、ようやく一区切りつきました。

ここまでお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございます。


アルフレッドがついに女神の加護を得ました~~~!!

色々と葛藤はあったけど、本当におめでとう;;

そして、シエラお誕生日おめでとう!! また時期がくればアルフレッドの誕生日もお祝いしたいですね。

クリストフの恋の行方はまだ分かりませんが、ベスキュレー公爵夫妻は問題が起きてもラブラブで安心安全です。


さて、今後の予定としては、来年2月か3月頃に「魔女の呪い編」の連載をスタートできるように準備を進めていきたいと思います。

次の連載開始まで日が空くので一旦「完結」設定にしておきます。


休止している間は、ぜひコミカライズを読んでいただけると嬉しいです!!!

本当に美しく描いてくださっていて、シエラが天使なので!!!

まだコミカライズを読んでいない方、ぜひマンガUP!のアプリをダウンロードして読んでくださいね!!


今後とも、『包帯公爵の結婚事情』を見守っていただけると幸いです。

応援よろしくお願いします!

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