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異世界ゲームクリエイター  作者: 佐藤謙羊
ゲームで村おこし編
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47 村おこしのあとで

『ブリーズボード大会』の進行のほうは村長のヒューリに任せ、次は『ゴブリンストーン』の様子を見に行く。


 こっちは主に、招待した村長たちにプレイしてもらってたんだが、みんな画面に喰らいつくようにして遊んでいた。



「お、面白い……! こんな面白いものが、この世の中にあっただなんて……!」



 感激の声があがるなか、俺は割って入った。



「そうだろう! しかもそれだけじゃねぇんだ! このゲームはな、パンダンティフ王国の御親(ごしん)騎士サマの監修なんだ!」



「なんと、あの誉れ高き御親騎士様の……!?」



「そう! ゴブリンが本物みたいな動きをしてるだろう!? だからこのゲームで遊べば、楽しくゴブリン撃退のノウハウが学べるんだ!」



「な……なるほどぉ!」



 ……俺が招待した、村の村長たち……。

 それは、この村と同じく「ゴブリン被害に悩まされている」ヤツらだったんだ。



「……そういうことだったのね」



 俺のそばにきたビリジアンが、呆れたような、感心したようなため息をついた。



「レイジくんがやろうとしていたのは、ゲームで観光客を呼ぶだけじゃなくて……ゴブリン退治のノウハウをゲームという形にして、他の村にも売ることだったのね」



「そうだ。この村を見た時、ゴブリンに困っている他の村があるんじゃないかと考えたんだ。ソイツらにこの村のゴブリン退治のノウハウを輸出すれば、石版素材なんかよりもずっと儲かるんじゃないかと思ったんだ」



「現地でノウハウを教えるのでは人手が必要だし、本とかでは伝わりにくいから……ゲームにしたのね」



「そういうこと!」



 俺はビッ! とひとさし指を立てたが、女騎士サマはまだ納得がいかない様子だった。



「でも、ノウハウは売れても、この村のゴブリン被害はなくならないのよ? それはどうするつもりなのよ?」



「……お前、やけにこの村のゴブリンに恨みを持ってるよな……。ま、ちゃんと考えてあるって。おーい、そこの! お前、記者だろ? これからこの村でキャンペーンをやるから、それを記事にしてくれねぇか? そのキャンペーンの優待券を新聞に載せれば、部数アップにつながるぞ!」



 部数アップと聞いて、記者たちが俺を取り囲む。

 そして明かされた『キャンペーン』に、ビリジアンは目を丸くした。



「……ゴブリン退治キャンペーンですって!?」



「そうだ! この村の周辺にいるゴブリン1匹につき、ポイント進呈! ポイントをためればゲームのフリープレイ券や、温泉にタダで入れるサービス券に変えられるんだ!」



 ……俺が考えたのは、この村にゲームにつられてやってきた冒険者に、ゴブリン退治をしてもらうこと。

 冒険者の客が見込めれば、それだけ多くのゴブリンが駆逐されるっていう寸法なんだ……!



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 新作ゲームのお披露目会は、無事大成功に終わった。


 と、いっても……それから村はますます忙しくなっちまったんだ。


 噂が噂を呼び、各地から『ブリーズボード』のプレイヤーがあつまり、ゴブリン被害に悩む人々が押し寄せた。


 たかがゲームに、と思うかもしれないが、いままで貴族にしか遊べなかったものに触れられるようになったんだ。

 それがこの世界の民衆にとっては、かつてない刺激となった。


 なんたって王族が寝る間も惜しんでプレイする俺たちのゲームに、他の奴らが夢中にならないわけがない。


 そしてゲームで汗を流したあとは、ゆったりと温泉に浸かる……一連の流れができあがり、村はますます繁盛した。


 駅から村までの道は整備され、村は外壁を超えてさらに発展。

 『ゴブリン退治キャンペーン』の効果と相まって、ハルム山脈からゴブリンが一掃されるのに、そう時間はかからなかった。


 気がつくと……ハルムの村は、この国いちばんの税収をほこるベレーヘンを抜き、トップの収入を誇る一大観光地域となっていた。


 そうすると手のひらを返したように、ブルット伯爵がハルムのことを自慢するようになったんだ。



「ハルムの村は、私が統治する村でもっとも力を入れている村です。ゲームクリエイターとして名だたるブルット家が総力を結集し、ゲームによるテコ入れを行ったのですが、いやはや、それが大成功……! 10倍の税収アップを目指していたのですが、それが今や100倍……! これもすべて、この私の人徳と才能によるものなのです!」



 なんてぬかしてやがるが、王様はちゃんとわかってくれてるみたいだったので、別にヨシとするか。

 ネステルセル家はまた貴族としての階級があがって、例によってコリンが気絶していたが、今どのあたりにいるかはよく知らねぇ。


 そんなことより……庶民がゲームに触れられるキッカケが、ようやくできた。

 今はまだこの村にしかねぇが、これは大いなる一歩だ。


 あとはこの形態をパッケージング。ゲーム専門の施設として、全国に広める。

 ようは、『ゲーセン』を作りあげるんだ……!


 そうすれば、もっともっと多くのヤツらにゲームをプレイしてもらうことができる……!

 やっとこの世界のゲームを、地位や身分、貧富なんてくだらねぇものに縛られねぇ、本当の娯楽にすることができるんだ……!


 さあて……これからますます忙しくなるぞ……!

自然友良様よりレビューをいただきました、ありがとうございます!


そして『ブリーズボード編』はこれにて終了となります。

拙い文章を最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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