表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ゲームクリエイター  作者: 佐藤謙羊
ゲームで村おこし編
27/47

27 光と闇の対決

 次の日の朝、屋敷の外から聞こえてくる大声で目が覚める。

 聞き覚えのあるキンキン声に、カーテンごしから覗いてみると……階下にある庭で、村人を集めて演説しているビリジアンの姿があった。



「……そこで私は昨晩、一睡もせずに考え抜きました! そして決めたのです! この村を救うために立ち上がろうと!」



 昨日はずっとフヌケていたが、ようやくいつもの元気を取り戻したようだ。


 ……それはそれで、ウザいけどな。


 木箱の上に立って拳を振りかざす女騎士サマは、奮い立てとばかりに叫ぶ。



御親(ごしん)騎士であるこの私、ビリジアンが討伐隊隊長となり、この山にいるゴブリンを根絶やしにします! さぁ、今こそ立ち上がる時……! 我こそはと思う者は、討伐隊に志願を! さぁさぁ、ともに戦うのですっ!」



 迎え入れるように両手を広げ、熱く吠えるビリジアン。


 しかし村人たちは顔を見合わせあって、ひたすらざわめくばかり。

 心を打たれるどころか、むしろ引いているようだった。


 すみっこの方にいる他のメンバー、三人娘とシャリテ、そしてヒューリは困った様子で事の成り行きを見守っている。


 俺は寝室の窓を開けると、見下ろしながら下々の者たちに声をかけた。

 物理的にも心理的にも上から目線で。



「おーい、ちょうどよかった。村のみんなを集めてもらおうと思ってたところだ。ついでだから、ちょっといいか?」



 「あっ」と一斉に見上げる村人たちに続き、「ハッ」と振り向くビリジアン。



「……レイジくん!? そんな所でなにをやっているの!? それにいま私が話しているのだから……!」



 俺は抗議を無視して話を切り出す。



「昨晩もヒューリに言ったんだが、増税は予定どおり行う。この村を見て確信したんだ。10倍……いや、100倍はとれるってな」



 すると、あちこちから悲鳴じみた声があがった。



「ひゃ、100倍……!? そんなのムチャクチャだ!」



「増税前の今だって、ギリギリだってのに……!」



「食うものも食わずに税金をおさめてきたのに、この仕打ちだなんて……!」



「ひどい……! ひどすぎるよ……!」



 100倍と聞いて、ヒューリも驚いたようだ。

 皆を鎮める立場であるはずなのに、誰よりも前に出て声をあげはじめた。



「お……お待ちくださいレイジ様っ! この国でいちばんの納税額を誇るベレーヘンでも、この村の50倍です……! さらにその倍だなんて、絶対に無理ですっ……! 私たちに死ねとおっしゃるのですか……!?」



「絶対に無理……か。俺がいちばん嫌いで、いちばん好きな言葉だ。そう言われちゃ、なおさら100倍目指したくなってくるぜ……! それに言っただろ? 『この村を見て確信した』って……!」



 俺は挑発的に言ってやった。

 それでなにを想像したのか、ヒューリの顔がサッと青ざめる。



「ま……まさか……! レイジ様は、私たちに身体を売れとおっしゃるのですか……!?」



 さらなるどよめきと、怒声が突き上げてきた。

 こっち側の人間であるはずのビリジアンまでもが、「最低……! 見損なったわ、レイジくん……!」と反逆者のような睨みを向けている。


 俺の尊大な態度は、暴虐のかぎりを尽くす王のように見えているのかもしれない。

 まったく……単純なヤツらだなぁ……。


 対して三人娘とシャリテは何も言わず、じっと俺を見上げている。

 コイツらは、いいかげん俺のことをわかっているようだ。


 俺は、わかってないヤツらに向かって「バーカ!」と叫んだ。



「俺をブタみてぇな貴族どもと一緒にするんじゃねぇ! それとも何か? お前らは自分の取り柄がその容姿にしかねぇと思ってんのか!? だったらもう一回言ってやるぜ、バーカっ!!」



 俺が口汚く罵るのは、相手を逆上させて感情を引き出すため。

 案の定、挑発に乗った村人が口々に叫び返してきてくれた。



「ば……バカだとぉ!? いくら領主様でも、言っていいことと悪いことがあるぞっ!」



「そうだそうだ! 取り消せっ!」



「それに……この村にはいいところがいっぱいあるんだ!」



「そうだそうだ! たった1日滞在しただけなのに、なにがわかるっていうんだ!」



 俺は大勢の野良犬を相手にした一匹狼のように、一歩も退かずに吠えた。



「……うるせえっ!! 『いいところがいっぱいある』だぁ!? だったらなぜそれで稼ごうとしねぇ!? 俺に言わせりゃなぁ、この村は宝の山だ!! 果物しかねぇベレーヘンと違ってな!! お前らの目はフシアナだ!! だからバカって言ってやったんだ!! このバーカっ!!」



「い……言わせておけばぁ……! だったらアンタには、この村の税収を10倍……いや100倍にする考えがあるってのかよ!?」



「あるに決まってるだろうが!! イザとなったら身体を売ることしか考えねぇ、お前らと違ってな!!」



「だったらそれを言ってみろよ! 今すぐにっ!」



 会話にリズムがでてきた。



「俺の言った意味が、まだわかってねぇようだなぁ……! そうやって考えねぇから、バカって言われんだよっ!!」



「ああっ、わかったぞ……! コイツ、口から出まかせを言ってやがる! 本当はなにもねぇんだ!」



「……あるさ……!! ソイツを見せてほしいか……!? だがその前に、ふたつ約束しろっ……!!」



「ああ……言ってみろよ! なんだってやってやるぜ! どーせそれもハッタリだろうからな!」



「まずひとつは、これから半年の間、村のヤツら全員、俺の命令に絶対服従すること……!! 俺がやれと言ったことは絶対にやり、俺がやるなと言ったことは絶対にやらない……!! それを守ってもらう……!!」



「ぜ、絶対服従……!?」



 リズムができたので、売り言葉に買い言葉でノッてくれるかと思ったが……これにはさすがに躊躇したようだ。

 庭をさらなるどよめきが支配し、誰もが不安がっている。


 すると、ある村人が告発するように、2階にいる俺にひとさし指を突きつけてきたんだ。



「わ……わかったぞ! アイツは、税金が取れないこの村を潰すつもりなんだ! その前に好き勝手やって……男を奴隷にし、女を手篭めにするつもりなんだ!」



 俺は庭からでもわかるくらい大げさに、肩をすくめてみせる。



「バーカ! ……ったく、コレ言うの何度目だよ……! 俺は女を手篭めになんかしねぇ! それはそっちの村長サマがよっくご存知のはずだ!」



 村人の視線が、俺からヒューリに移る。

 口ごもるヒューリにかわって、俺が教えてやった。



「昨晩ヒューリはエルフの女の子を連れて、俺の寝室に夜這いに来たんだ……!」



 瞬間、コリンの顔に影がさしたように見えた。

 しかし今はそんなことはどうでもいい。



「そしてヤツは言ったのさ『自分の純潔と引き換えに、この村の増税をとりやめてくれ』ってな……! だが俺は断ったんだ……!」



 「本当ですか!?」と村人たちから詰め寄られ、ヒューリはしどろもどろになっている。

 冷静沈着な彼女のいつにない反応に、村人たちは真実だと悟ったようだ。


 俺は話題を引き戻す。



「さて……! 俺の清廉潔白さがわかってくれたところで、どうする!? 自力で10倍の税収を目指すか、それとも、俺のやり方に従って100倍の税収を得るか……! ふたつにひとつだ!」



 そして大事なことを思い出す。

 蚊帳の外だった女騎士サマに視線を落とした。



「それとだ、ビリジアン! 絶対服従には村人だけじゃなく、お前も含まれる! それがふたつめの条件だ!」



 急に振られたビリジアンは「ええっ!?」とたじろぐ。



「わ、私も……!? なんで私がレイジくんの命令に従わなくちゃいけないのよっ!?」



「俺の作戦には、お前の協力が不可欠だからだ! もちろん、コリンとグランとイーナス、そしてシャリテの協力も絶対必要だがな! お前にだけ制限を課すのは、お前は暴走しやがるからだ! 今もこうやって、村人たちを扇動しようとしてただろう!?」



 それはビリジアンにとって、かなり心外な指摘だったようだ。

 急にムッとした表情になる。



「せっ……扇動だなんて、そんなことないわよ! 私は私の考えで、この村を救おうとしただけ……! それにレイジくんみたいに絶対服従だなんてムチャなことは言ってない! みんなのやる気を期待して……!」



「じゃあ、皆に決めてもらおうか!!」



 俺は委員長の言葉を途中で遮った。



「ここにいる村人(ヤツ)らに、俺とビリジアン、どっちにつくか決めてもらうんだ! ちなみに俺はゴブリン討伐には反対だ! 今までどおり、防戦をする……!」



「それがダメだったんじゃない! ゴブリンの襲撃に防戦一方だったからこそ、この村は衰退していった……! すべての元凶がゴブリンにあるのは明白でしょう!? そんなこともわからないの!?」



「『そんなこともわからない』か……そっくりそのまま返してやるぜ。だが今は、お前と言い争うつもりはねぇ。どうする? 俺の提案に乗って、村人たちの審判を仰ぐか? それとも尻尾を巻いて逃げるか?」



 コイツを導くのは簡単だ。

 選ばせたくないほうに「逃げる」とか、そういうネガティブな単語を入れてやればいいだけなんだからな。


 狙い通り、ビリジアンはクッ、と唇を噛んだ。

 「逃げてたまるもんですか……!」みたいな表情で。



「い……いいわ! 受けて立つ! 私の明瞭で的確で、正義にあふれる『光の作戦』と……レイジくんの不明瞭で乱暴で、悪逆に満ちた『闇の作戦』……! どっちにつくか、村の人たちに決めてもらいましょう!」



 さっそく印象操作を始める光の騎士サマ。

 しかし俺の心は、玉座に座る悪の魔王のように揺るがない。


 そして……光と闇の勝負が決するのに、それほど時間はかからなかった。


 木箱のお立ち台の周りには、誰もおらず……屋敷の軒下には、大勢の人が集まっていたんだ……!

面白い! と思ったら下のランキングバナーをクリックして、応援していただけると助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★クリックして、この小説を応援していただけると助かります!
小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=900173672&s script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ