25 夜宴(サービスつき)
俺はスケスケのアイマスクというハンデを背負いながらも、なんとかその場を乗り切った。
コリンに背中を流してもらったり、グランと一緒に炭酸ジュースを酌み交わしたり、イーナスと潜りっこをしたりして、スタッフとの親睦も深まったような気がする。
そして温泉を堪能したあとは、洞窟を伝って再び村へと戻る。
すると出口のあたりで、大勢のエルフたちが待ち構えていたんだ。
村じゅうの大人たちが全員集まったようなその人だかりは、俺たちの姿を見るなり一斉にひれ伏した。
「お願いします! 領主様! どうか、どうか、増税だけはお許しください!」
「領主様もご覧になられたでしょう!? この村は毎日のようにゴブリンたちに襲われています!」
「そのせいで、日々食べる分を稼ぐのも、やっとの有様……! そこに増税とあっては、私たちは全員飢え死にしてしまいます!」
土下座したまま、口々にまくしたてる村人たち。
ヒューリはこの直訴は知らなかったようで、穏やかな顔を一変させたかと思うと、
「愚か者っ! 直訴など、何を考えているのですか!? 下がりなさい!」
たったの一喝で、村人たちを黙らせてしまった。
彼女はクール系の美女なので、怒るとまわりを凍りつかせるような迫力がある。
村人たちは、極寒の地に棲むドラゴンのブレスを浴びたかのように固まってしまった。
矛先は向いていないものの、三人娘やビリジアンまで硬直している。
「新しい領主様が決められたことに、いきなり異議を申し立てるなど……無礼にもほどがあります! すぐに解散するのですっ!」
ヒューリの怒鳴り声に、なんだかこっちまで責められているような気分になっちまった。
増税を決めたのは俺たちじゃなくて、白豚親子なんだがなぁ……。
でも村人からすれば、俺たちが決定したように見えるんだろう。
無理もねぇか、領主が変わったタイミングでの増税だもんな。
それに「決めたのは自分じゃない」なんて言い訳が通用するわけもねぇ。
拝領を承諾した以上、責任はすべて領主にあるんだからな。
と、いっても……コリンが承諾したわけじゃなくて、元はといえば俺のせいなんだよなぁ……。
わずかな自省の念を感じていると、不意に人垣が揺れた。
大勢の足元から這い出るようにして、ちびっこエルフたちが次々と姿を現す。
真っ先に立ち上がった、リーダーらしきガキんちょ……長い耳がところどころ欠けているいかにもワンパクそうなソイツが、俺を指さしながら叫んだんだ。
「アイツが村のみんなを苦しめている悪い領主だ! よぉし、やっちまえ!」
「おおーっ!」という雄叫びとともに、ポケットから石を出して投げつけてくる悪ガキ軍団。
「わっ、ちょ、やめろっ!?」
俺はとっさに腕で顔を覆ったが、石がぶつかる直前に盾を構えた美少女エルフたちが守ってくれた。
「あなたたち、なにをやっているのですか!」
ヒューリは子供たちのほうに向かおうとしたが、途中でガツン! と投石を額に受けしまう。
「や、やべえ! 村長に当たっちまった! 逃げろーっ!」
蜘蛛の子を散らすように逃げていく子供たち。
ヒューリはその背中をため息とともに見送ったあと、俺たちのほうに向き直る。
ガバッと地に伏し、石畳に頭を叩きつけんばかりの勢いで土下座した。
「皆様、誠に申し訳ありません……! 村人たちがまさかこのような行為に及ぶなど……! 私の管理不行き届きに他なりません! 罰を与えるのであれば、この私に……!」
伏した前髪を、赤い雫が伝っている。
コリンは弾ける悲鳴とともにヒューリの元に駆けつけ、しゃがみこんだ。
「ば……罰だなんて、とんでもない! それよりもお顔をあげてください! 血が出ています! 早く手当てしないと……!」
取り出した白いハンカチで、ヒューリの額を拭うコリン。
まるで自分が投石を受けたみたいな、泣きそうな顔で。
「……ありがとうございます。コリン様。私はなんともありません。それよりもせっかくお越しいただいたのに、このようなご無礼、誠に申し訳ありませんでした。村人たちには私のほうから、きつく言い聞かせておきます」
ヒューリは気丈に言いながらも、弱々しく笑い返すだけで精一杯だった。
どうやら、村人たちの行動がかなりショックだったようだ。
突然の直訴と襲撃……それは俺たち一行にとっても、大きな衝撃を残すこととなった。
イーナスとシャリテはそれほどでもなかったが、グランは信じられない様子で「マジかよ……!」を連発し、コリンは事態の原因は自分にあると己を責めているようだった。
そして、ビリジアンはゴブリンの襲撃を見た時のように抜け殻となっていた。
今まで乗ってきた船が、泥舟だったと気づいたタヌキみてぇな顔してやがる。
まぁ、理由はなんとなく想像がつくが……今はそれどころじゃねぇ。
俺はこの村をどうするかで、頭がいっぱいだったんだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
その日の夜、村いちばんの屋敷で歓迎パーティを受けた。
そこは大きすぎるので賓客をもてなす時のみで、普段は使っていないらしい。
広々としたホールの中心には円形のステージがあって、舞台上ではエルフたちの踊りが披露されている。
まわりを囲むテーブルはひとりにひとつあてがわれ、ごちそうが山盛り。
女性陣にはイケメンエルフたちが、俺には美少女エルフたちが付き添い、サービスしてくれる。
美少女エルフたちは昼間の武装姿から一転、豪奢なドレスに身を包んでいた。
そのドレスは露出度の高さがハンパではなく、胸元は普通なんだが、スカートのスリットは脇の下まで入っていて、まるで前掛けみたいになっているんだ。
生足どころか、くびれた腰や脇腹……さらにノーブラだったので、横乳まで丸見えだった。
そんな格好で両端について、料理を口に運んでくれたり、お酌をしてくれたりする。
他の子たちは目の前で跪いて、孔雀の羽根みたいなので仰いでくれていた。
しかも当人たちはこの格好に慣れていないのか、やけに緊張というか、恥ずかしいのを無理してやってるみたいに動きがギクシャクしてて……。
それがまたかえって初々しくてエロいというか、いや、無理してやらなくても……という気持ちにさせられる。
「嫌なら別にいいんだぞ?」と声をかけてやったんだが、判を押したように「レイジ様のお世話ができて、たいへん幸せです」としか言いやがらねぇ。
言わされてる感満載だったが、それに突っ込んでもしょうがないと思ったので、俺は楽しむことにする。
あんな事があった後なので、他のメンバーはあまり食が進んでいない様子だったが……俺は気にせずバクバク食べた。
そうやって腹が満たされると、別のモノにも興味が湧いてくるってもんだ。
俺の手は少女たちに促され、めくれたスカートから覗くまばゆい太ももの上に乗っていた。
それをすべすべと撫でさすってみる。
彼女たちは一瞬表情を強張らせたものの、触りやすいようにスリットをめくりあげてくれた。
横乳どころか片乳が見えそうになり、俺の目は釘付けになる。
「どうぞ、レイジ様の手で、私のすべてを、ご覧になってください……それが、私の喜びです……」
頬を赤らめ、幼気に震えるエルフの少女。
ほっそりした耳までもが、羞恥に染まっている。
あんまり喜びを感じてるようでもなさそうなんだが……。
それとも、嫌よ嫌よも、ってヤツなのか……!?
判断に迷っていると……煩悩と葛藤の狭間に、突き刺すような視線を感じた。
それは氷の包丁のように冷鋭で、焼け火箸のように灼熱で……!
眼光の気配を辿っていくと、浮気現場を押さえた幼妻みたいな形相で睨んでいたのは……他ならぬコリンだった。
な、なんでアイツ、あんな怖ぇ顔してやがるんだ……?
あっ! もしかして怒ってんのか……!?
でもアイツが怒るだなんて、珍しい……!
ハイザーさんの葬式の時に、子豚くんに言い返した時以来じゃねぇか……!?
っていうか、今はそれと同じくらいの状況だっていうのかよ……!?
俺は理不尽なものを感じつつも、あの視線にはとても耐えられそうもなかったので……手を引っ込め、お行儀よく自分の膝の上に置いた。
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