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第一話「烏」

「やっぱお前って、絵心無ぇよな」


哀しみを込めてそう言うと(からす)は血の散らばった部屋を後にした。








・・・・・一ヶ月前








「おい烏、部長が呼んでるぞ」同じ職場の中織(なかおり)が通りすがりに耳元で囁く。


「ちぇっ、またかよ」溜息を吐きながら烏は席を立った。




「あれ?何で呼んでるか俺に聞いてみないの?」


「聞いたとしてさ、お前が知ってるとは思えない」


「なんだよソレ、知ってるかもよ?」


「知ってたとしてさ、お前が理解できてるとは思えない」


「あ!お前そーやって言葉尻ばっか取ってコノヤローッ」




ハイハイ。と手を振りながら烏は部長の所へ行った。その後ろでは中織がまだ何か言ってる。




「ちょっと部長、何ですか。この前やったばっかじゃないですか」


「そう言うなって。今度はちょっと社長もマジになってるってよ」


「何でです?」


「知るかよ、社長の考える事なんだ。」


「ふ〜ん」


「ま、俺は何も知らないしさ、社長のとこ行ってこいよ」


「普通、どの会社でもそうだと思うんですけど・・・今って忙しいんじゃ・・・」




会社の時計は午後二時十一分を、腕の時計は午後二時八分を、

あたかも自分が正しいかのように光っていた。


ように思えた。




「ウチの社長はアレだ、暇なんだよ」


「あ、いいんですか?そんなこと言っちゃって」


「あーうっせぇな、さっさと行け!」部長の顔が少しだけ赤くなっているのに気付く。




やべぇやべぇ。と、烏は社長室の方を向く。




「あ、あと一つだけ言っとくことがあった」


「部長、なんですか?今急いでるんですけど」


「その喋り方、やめといた方がいいぞ。社長、怒るかもしれんしな」


「暇、なんでしょ?大丈夫ですって。むしろ喜ぶんじゃないですか?君と話せて嬉しいよ。って」




部長と話すのに飽きてきてる烏は早く話を終わらせたい。


もういいや。


そう言って烏は部長の顔をじっくりと見て早歩きで社長室に向かった。




「そういや、暇、だったな」




そう言った部長の声は当然、烏には聞こえない。

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