7話:奥さま(仮)は騎士団長
広場につくとみんなが揃っていた。最初俺の脚を切り落とそうかとしていた連中も一緒である(あんな恐ろしいことを言っていたが、実は気のいい男たちである。昨日酒を延々と俺の盃に注ぎやがった)。
「予見者様!おはようございます!」
「「「おはようございます!」」」
むさくるしい顔のおっさんどもが俺に挨拶をする。見ているだけで暑苦しいが、好意を向けられていること自体は悪くない。
「あぁ、おはよう」
「皆の者、おはよう。今日は王国軍の到着が昼に控えている。それまでに昨日落とした敵陣の堀を埋め、侵攻のための前線基地を設ける。早く飯を食ってさっさと働け!」
「「「おう!」」」
ナタリアさんが屈強な野郎どもを叱責する。女性でも騎士団長、その迫力は桁違いだ。
ひらひらのエプロンじゃなきゃもっと迫力があったろうに…。
ナタリアさんの叱責の後、みんな食事をとり始めた。
「予見者殿は私の隣だ」
見るとそこだけ机と椅子が置かれ、さらには侍女までついている。他の騎士団のみんなは地べたに胡坐で食事をとっている。
「そんな、みんなに悪いですよ」
「そういうな、貴殿には私の隣に座る権利がある。それとも、私の隣ではいやか?」
しゅんとした顔で俺に聞くナタリアさん。俺もうロリコンじゃなくていいや。
「ナタリアさんが言うなら、同席させていただきます」
椅子に座ると数人の侍女が食事を運んできた。予見者とは相当すごい人物だと思われているらしい、もてなすための豪華絢爛な料理が並ぶ。
ただこれ朝食にしては多くね?
「さぁ、食べようか」
ナタリアさんはナイフで柔らかそうな肉を切り分け、フォークで刺した。そして、
「ほら、あーん」
とそれを差し出してきた。
え、まじで?
「あのナタリアさん!さすがにそれはちょっと」
「そ、そうか!?新婚というものはこうやって妻が夫に食事を食べさせるものだと聞いていたのだが…」
え、新婚?
「予見者様、朝からお熱いねぇ!」
「世界一の別嬪さんを嫁にもらったんだ、あーんくらいさせてあげろよ!」
え、嫁?
「あのナタリアさん」
「なんだ?えっと、旦那様…」
ナタリアさんは恥ずかしそうに答える。ほっぺを手で押さえるとかマジ反則だろおい。
「あの、なんで俺とナタリアさんが結婚していることに?」
「そんな、ナタリアさんなどと他人行儀に呼ぶな。私のことはナタリーと呼んでくれ」
指をもじもじさせるナタリアさん、もといナタリー。
「ナタリー」
「はい、旦那様」
「俺と、ナタリー、結婚、なぜ?」
「何故も何も、昨夜私のことを求めていたではないか。私も一人の女、好ましいと思った殿方の求婚には応じるさ」
な、なんですと!?
「ま、まさか昨晩の言葉は偽りだったというのか!」
「そりゃないぜ予見者様!」
「せっかくナタリア嬢の貰い手が見つかったんだ、今晩は婚約パーティーの予定だったんだぞ!」
「女の身で騎士団長まで上り詰めたナタリア嬢は俺らのアイドルだ!」
「ナタリア嬢を泣かせるなんて俺らが許さねえぞ!」
どうやら逃げ道はないようだ。
ナタリーを見る。なにやらどうせ私は男女だとか剣だけが取り柄の大女だとか言っている。
うむ、泣き顔もかわいい。じゃなくて!
「ナタリアさん、いやナタリー、いやナタリア・ヘルガ・シュバイツァー」
覚悟を決めよう。
「どうしたのだ予見者殿よ、私のような可愛げのない女に結婚した気になられてさぞ迷惑だったろう」
「ナタリア!」
「はいっ!」
ナタリアの肩をつかみ、見つめあう形になる。突然のことにびっくりするナタリア。
「ナタリーと出会ってまだ1日と経っていないが、ナタリーのことはすごく可愛いと思っている!」
「か、かわい!?」
「だから君と結婚することに何の疑問もないが、今は戦時中だ。まずは恋人という形から初めてみないか?」
我ながら恥ずかしい告白である。
ナタリーは目に涙を浮かべ、顔をゆがませて、
「あぁ、大歓迎だマイダーリン!」
俺に抱き着きながらそう答えた。
唐突ですが、嫁(仮)ができました。




