1話:敵陣にて
「巴御前」という人物を知っているだろうか。
平安時代は末期、源氏の猛将木曽義仲に仕えた女武者であり、かの有名な平家物語では長い黒髪に白い肌の美貌を持つ一騎当千の人物であったと記されている。また彼女の名を有名たらせた逸話として「敵方の武将の首をねじ切る」というものもあるが、実のところ後の脚色だったという説もありそもそも彼女自身の存在が伝説上のものであるという話もある。
しかしまぁ、女性アスリートいうものも珍しくなくなり、テニスや卓球といった球技だけでなくレスリングや柔道といった「力」を発揮する女性プロが存在する現代を知る身としては、流石に首をねじ切るまではいかなくとも刀や薙刀を振り回し敵兵をばっさばっさとなぎ倒す女性がいてもおかしくないのではと思うのが正直なところである。
しかし待て。
確かに女性が男よりも強いということは大いにあり得るだろう。女性の方が力が弱いというのはあくまで人間という種全体を見ての話であって、すべての女性が男性に力で劣るのではないのだ。
しかし待て。
武術においては力そのものよりも技術や用いる武器の得手不得手、また精神の強さが勝敗を決するという。一見ひょろくて背の低い人物であっても、それが武術の有段者であれば決して素人などには後れを取らないという。
しかし待て。
仮にだ。俺の周りにいる屈強そうなおっさんどもが、実は剣を持ったことのない戦闘初心者だとしよう。素人は武器を持っていても、たとえそれが現代で最も簡単かつ確実に人を殺められる銃や誰でも使い方の分かるお手軽武器のナイフであったとしても、戦闘のプロの前には無意味なのだ。
しかし待て。
いっそこの世界が剣と魔法の世界だとしたら。王国一の腕前を持つ女騎士やおよそすべての魔法を使いこなす魔女、はては異世界から勇者の力を女神様にでも授けられた美少女がいてもおかしくはないだろう。
しかし……しかし。
それでも俺の目の前の美女が野球場を覆い尽くさんとばかりの野郎ども相手に一人で無双するのは流石に無理があると思うんだ。
初投稿、初執筆です。生暖かい目で見てくれると幸いです。




