表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/917

その91 良き友として

 ほんの少しの沈黙の後、ブライアン王が俺に聞いた事はかなり核心に迫っていた。


「……ミケラルドがそこまで申す理由。その根底にあるのは何か?」


 これは……もしかして俺が魔族だと気付いている?

 ランドルフが話したという事? いや、ただ単純に聞いているだけなのか?

 ランドルフにテレパシーで聞いてもいいが、ここでランドルフに手札を見せたくないのも事実。

 ……仕方がない。手元にある手札だけで戦うしかないか。


「有効な力の使い道を考え続けた結果、でしょうか」

「ほぉ」

「目的がなんであれ、出来る力を持っているならば、ソレを行使しないのは弱者への怠慢だと思っています」

「傲慢……ともとれるが?」


 ならば、ちょっと傲慢にいってみるか。


「そうとれるのは、陛下が力を持っている証拠です。本当の弱者は傲慢とはとりません。……いえ、傲慢という言葉すら知らないかもしれません」

「……なるほど、一理ある」

「私は、それを陛下に一端といえど見せる事が出来たと思っています」

「ふふふ、先のアルフレドの一件を出されるとこちらも弱くなるな」


 アルフレド事件の真相について書かれた二通の手紙。

 これをブライアン王の寝所に置いたのは俺だ。それが誰なのかは、もうブライアン王も俺だと知っているはず。むしろ、この笑顔を見るに、まるで「知っているぞ」と俺に伝えたかったようにすら思える。


「必要なのだろうな。そういった意識改革が」

「はい」

「先にも述べたが、謎のエルフの一件、余の耳にも届いている。こうも上手く民を誘導するとは見事だ。クロードを国家として認めるのは問題ないと言っておこう。明日にも公布しようじゃないか」


 おぉ、なんかスムーズに話が進んだぞ?


「元々シェルフの商人を招くための策を、余がランドルフに任せたのだ。その手助けをするだけ。他の者も納得する」

「ありがとうございます」

「だが、シェンドの町の西の自治権とはまた話が別」

「っ!?」


 にゃろう、ランドルフめ。

 ゆっくり話を進めたいと思ってたのに、もう話してたのか。

 いや、ランドルフの事だ。ブライアン王に話して問題ないと判断したからこそなのか?

 どんな判断にせよ、一言くらい相談があってもよかったのに。


「ふっ、あまりランドルフを睨んでやるな。ランドルフが口を割ってない部分もあるのだぞ?」

「っ!」


 これはおそらく俺の正体。

 が、この人の事だ。薄々気付いているんだろうな。


「確かにあの地は我がリーガルの土地。そこに集落を築こうが好きにするがいい。どこの野盗もやっている事だ。しかし、自治権ともなると話は別だ。住みにくき山々だったとしても我が地。そう易々と割譲(かつじょう)する訳にはいかぬ」


 易々と、と今言ったな。

 つまり、この後ブライアン王から出てくる内容は……何らかの条件。


「陛下は何がお望みなのでしょう?」

「無論、シェルフとの同盟よ」

「っ!?」

「此度の一件が国内で落ち着いた頃で構わぬ。ミケラルド、其方はシェルフに(おもむ)き、リーガル国の使いとしてシェルフとの友好関係を構築するのだ。必要な身分は、この一件の功績でなんとでもなる」

「…………かしこまりました」


 ◇◆◇ ◆◇◆


「な、なぁミケラルド殿? そろそろ口を開いたらどうだ? ん?」

「……性急過ぎると思いましたよ?」

「え、笑顔なのに目が笑っておらぬな。ははははは…………すまん! ミケラルド殿っ!」

「はぁ……まぁ、悪い方向に転がってないと思いましょう」


 俺とランドルフはサマリア侯爵家の別宅に戻っていた。

 寝間着の王様はあの会話の後、すぐに消え、俺は屋敷に戻ってくるまで無口を貫き通した。

 ランドルフの申し訳なさそうな顔を見られただけめっけもんかとも思うが、正直、してやられた感が強い。


「……ミケラルド殿は、陛下の狙いにも気付いているのだろうな」


 ランドルフは声を落とし、ジッと俺を見てきた。

 流石はブライアン王の懐刀だ。そういう策略も見えているのか。

 今更だが、俺はもの凄い人と知り合いになったんだな。


「えぇ、割譲の条件にシェルフとの同盟。なるほど、上手く考えられた策です。同盟が成った時、陛下は我らが土地を割譲くださるでしょう。シェルフとリーガルに挟まれたあの土地を」

「シェルフはミケラルド殿が住まう地の更に西。そことリーガルが同盟を組めば、ミケラルド殿が立国(りっこく)したところで、前門の虎後門の狼。なんとも陛下らしい抜け目ない策略よ」


 威厳こそ感じられなかったが、伊達に国王を長くやってないって事だな。


「ところで、この一件が終わったら陛下は必要な身分を用意すると仰ってましたが、あれは一体どういうおつもりなのでしょう?」


 この一件とはつまり、シェルフの商人団体がウチへ買い物に来る事を指し、その団体が満足して自国へ帰った後の事。


「む、シェルフへの使者として相応しい身分……ともなれば、男爵位か子爵位ではなかろうか?」

「は?」

「この一件が終われば、ミケラルド殿は貴族になるという事だな」


 そういう事か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ