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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

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906/917

その903 私がやりました

「ミケラルドさんのせいって……一体どういう事です?」


 アリスが渋面をしながら俺に聞いてきた。

「またお前何かやったのか?」と言いたげな顔である。

 とりあえず自己弁護しておこう。


「正確には、私とナタリーが出会った事が原因……というより、事の発端でしょうね」

「事の発端……?」

「まず、大前提として、私が魔界で寄生転生をしなければ、ナタリーは魔界でその命を終えていた」


 神妙な面持ちで、エメリーとアリスが頷く。


「これを念頭に聞いてください。あ、ところでお二人とも、【天恵】のシステムをご存知ですか?」

「シ……システムゥ?」


 素っ頓狂な声を出すアリス。

 エメリーもこの表現には苦笑いのようだ。


「……えーっと霊龍さんが私たちに授けてくださった恩恵?」


 システムという言葉をエメリーなりにオブラートに包んだ言い方である。

 俺はエメリーに頷き、魔法に精通しているアリスに聞く。


「アリスさん、パワーアップの魔法はどういう効果があるかわかります?」

「え? パワーアップ……ですか? んー、短時間ですけど、対象者の力を向上させる魔法……ですかね?」

「そうです。では、パワーアップの魔法効果が消える時ですが、パタッといきなり効果が切れますか?」

「いえ、徐々にパワーアップの効果が薄れていきます」


「そんな事、常識でしょう?」といった表情である。


「じゃあ、法王国のアイビス皇后の聖女の力ですが、いきなり失われましたか?」

「え……? い、いえ……徐々に……だったと聞いてますね――っ! ちょ、ちょっと待ってくださいミケラルドさんっ! まさか天恵が――」

「――そう、【天恵】とは霊龍による強化魔法だという事です」


 これにはエメリーもアリスも驚きのようだ。

 まぁ、人間の世界で敬われていた【天恵】がただの魔法だと知らされたのだ。天恵の株価が急転直下って感じだろう。


「そして天恵は対象者の肉体的能力向上、魔力的能力向上に伴い、強化倍率が上昇する効果を秘めている。次代の勇者や聖女が誕生すると共に力が失われていくと言われてますが、実際には対象者の時代と選定を霊龍自身が行っているだけです」

「凄い……でも、何でそこまで言い切れるんですか?」


 エメリーの疑問(もっと)もである。


「だって次代の勇者が現れると同時に減衰(げんすい)していく魔法を構築するより、時間と共に減衰していく魔法を構築した方が簡単でしょ?」


 そんな補足に、エメリーとアリスは目を丸くする。


「私もミックに言われるまでは考えた事がなかったが、言われてみれば確かに全てが納得出来る説明だった」


 リィたんが肩を竦めて言うと、アリスが思い出したように聞く。


「あ、そ、それで……ナタリーさんの件にその天恵の説明がどうして必要なんですか?」

「数は絞ってるでしょうが、霊龍は同じ時代の才能ある存在に天恵の魔法を使っているはずです」

「それがナタリーさん……だと?」


 俺がそれを否定するように首を横に振ると、二人は小首を傾げ、見合った。


「中には当然、不慮の事故で死んでしまう天恵候補者がいたはず。その中で生き残ったのが、エメリーさんとアリスさんという訳です」

「えっと……ナタリーさんは?」

「生き残り、天恵の発現にまで至ったのはお二人だけでしょう」

「あの、ですからナタリーさんは……?」

「ですが、これには【同じ時代に】……という注釈が付きます」

「そ、それって……」


 アリスの視線がすっとナタリーへと向く。


「そうです、ナタリーはおそらく次世代の聖女――という可能性が非常に高い」

「「…………」」

「エルフは勿論の事、ハーフエルフも人間より長寿です。本来であれば、アリスさんが頑張って生きておばあちゃんになる――」

「おばあちゃん……」

「――その頃合いにナタリーの天恵が発動するはず……だった」


 そこまで言うと、エメリーがハッとした様子で俺を見る。


「ナタリーさんは魔界から生還してから冒険者になった……!」

「その通り! 冒険者になり、オリハルコンズに名を連ねる程成長した。はい、アリスさん」

「え、え? は、はい!」

「天恵のシステムは?」

「うっ……えと、天恵は対象者の肉体的能力向上……魔力的能力向上に伴い……強化倍率が――ぁ」


 その小さな気付きと共に、アリスはバッと俺を見た。


「ミケラルドさんが……ナタリーさんの成長を助けた。特にこの二週間の訓練で、ナタリーさんの実力はランクA以上になって……天恵は発現を得た……」

「ね、私のせいでしょう?」

「本当だ……」

「霊龍だってこんな事わかるはずもないですもんね。なんせ『天恵掛けたあのハーフエルフの子、魔界に連れ去られちゃった……別の子探すかぁ~……あ、助かった! 何あの吸血鬼? え、あの子は数十年単位で徐々に頭角を現していくと思ったのに、あの吸血鬼のせいでこんな急成長を……? あ、発現した』――ですもん」

「ですもんじゃないですよ! ですもんじゃ!」


 別に悪い事じゃないのに、何故アリスは怒っているのだろうか。


「こういった理由で、当代聖女のアリスさんと、次世代聖女のナタリーが爆誕してしまった訳ですね」

「世界が……世界がミケラルドさんのせいで……めちゃくちゃです……」


 以上、アリスさんからの理不尽なクレームでした。

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