表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/917

その89 リーガル国王

2019/6/15 本日三話目の投稿です。ご注意ください。

「はぁはぁはぁ……つ、着いた!」


 途中から首都リーガルの皆に見つからないように、【ミックバス】を空高く持ち上げ、サマリア侯爵家の別宅まで運び、下ろす。

 空に持ち上げる時のラファエロの悲鳴。ランドルフ、レティシア、ゼフの嬉しそうな叫び声。

 空から下ろす時のラファエロの悲鳴。ランドルフ、レティシア、ゼフの嬉しそうな叫び声。とても滑稽だったが、ラファエロは今度眠らせてやろうかと思ったくらいだ。


「はっはっはっは! とても愉快だったぞ、ミケラルド殿!」

「ミケラルドー! またしてくださいませ!」

「か、帰りに……」

「はい! 楽しみにしていますわ♪」


 侯爵家の庭で大の字に寝ている俺を許してくれるランドルフもそうだが、こき使ったのはあの人だという事を差し引けばこれは許されて当然なのではないだろうか?

 レティシアは屈んで俺の疲れ果てた姿を嬉しそうに見つめている。

 ゼフは既に馬車の準備を始めている。日が完全に落ちているというのに、これから王城に行くのだろうか、ランドルフは?


「では早速行ってくるぞ! ミケラルド殿は我が屋敷で休んで行かれるがよろしい! はぁーっはっはっはっは!」


 剛胆だな、あの人。

 まぁ、そのくらいじゃないと国の重鎮は務まらないか。

 ゼフと共にリーガル城に行ったランドルフの厚意は有り難いが、俺はこれから魔導書(グリモワール)マラソンをしなくてはいけないのだ。

 疲れはあるが、このマラソンをおろそかに出来る程、店の在庫は安定していないのだ。

 まぁ、リィたんは延々と潜り続けてるけどな。ただ、あの人の場合、闇空間の魔法がないから一々ミケラルド商店の倉庫に届けに来るんだよな。


「お、リィたん。奇遇じゃん」

「ミックか! ここは楽しいな!」


 リーガルのダンジョンの前には、まるで泥棒の如き風呂敷を抱えたリィたんがいたのだ。

 まぁ、二十階層分のお宝だしな。どれも無駄に出来ないのを考えるも、そろそろ宝箱を意識しなくてもいいとも思える。他の在庫は増えてきてるからな。

 にしてもリィたん。本当に楽しそうだな。遊園地にでもいるかの少年少女のような屈託のない笑顔である。


「……おし、リィたん。ちょっと宝箱意識せず。最終階の魔導書(グリモワール)と宝箱だけ…………って、そうだ。俺が魔導書(グリモワール)に闇空間の魔法を込めればいいのか」

「おぉ! それは盲点だったな! そうだ! ミック! この魔導書(グリモワール)を使うといいぞ!」


 リィたんの風呂敷から採れたてホヤホヤの魔導書(グリモワール)が出される。

 俺はリィたんからそれを受け取り、闇空間の魔法を込めた。


「ほい」

「うむ!」


 魔導書(グリモワール)を持ったリィたんの手がぼやっと光り、闇色の光が包む。

 瞬間、リィたんの瞳に闇色の光が吸い込まれていったのだ。

 頭をカクリと後ろに跳ねさせ、元にもどってくる。目を瞑っていたリィたんが目を開くと、ニカリという笑顔を向け、闇空間の会得を俺に知らせた。


「これならばもっと早くなるぞ! ミック! 先に行ってる!」

「あ、ずりぃ!」


 首都リーガルのダンジョンに夜潜る者は皆無である。

 この時間は俺たちの時間という訳だ。休息であれば早朝の数時間で事足りる。

 俺とリィたんの魔導書(グリモワール)回収大作戦は、明け方まで続いた。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「うぇ!? 今すぐですか!?」

「うむ、非公式の場故、他の貴族が登城していないタイミングは、この時間しかない」


 何とも精力的な王様だこと。

 ジェイルからエルフの姿で助けた冒険者や商人の情報をテレパシーで聞いていた俺は、ダンジョンから帰った直後やってきたゼフによってランドルフに呼ばれた。

 応接室でその話を聞いた俺は、すぐにクリーンウォッシュの魔法を使い、以前この屋敷に来た時に新調したスーツを着る。

 ランドルフに話を聞いてから、ゼフが馬車をひくまでの時間は、ものの十数分の出来事だった。

 ……まだ白い霧が見える中、俺とランドルフを乗せた馬車が城内に入って行く。

 何度か忍び込んだ事はあるが、正面から入るのは初めてだな。

 まるで全ての手続きが終えていたかのような迅速な案内によって、俺は早朝の謁見の間という異空間に連れて来られたのだ。

 中央奥の玉座……そこに座っていたのは、寝間着姿の人の良さそうなオッサンだった。

 目を点にする俺だったが、隣のランドルフはすぐに跪き、(こうべ)を垂れた。

 まじか。確かに非公式ではあるが、寝間着の王が迎えるとはビックリだぜ。

 だが、火急の用件の際は、どこもこんなものなのかもしれないな。

 俺はランドルフに倣い跪いて頭を下げる。


(おもて)をあげい。……余が、ブライアン・フォン・リーガルである」


 長く続くリーガル王家の親玉(ドン)

 よく鍛え込まれた身体なのはガタイを見ればわかるが、表情はとても柔和(にゅうわ)である。視線からは敵意も好意もない。ただじっと俺を見つめている。

 その温かな瞳に吸い込まれそうになるが、少しだけ目を外す事で耐える。


「ほぉ、外すか」


 ……なるほど、どうやら俺の知らない【特殊能力】を持ってるな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ