表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

898/917

◆その895 異変2

お久しぶりです。スランプでした。

執筆がんばります。

「異変」というミケラルドの問い。

 当然、ミケラルドと霊龍はその意味を理解している。

 本来、ミケラルドはこのSSS(トリプル)ダンジョンで霊龍と再会する事はなかった。

 何故なら、霊龍自身が過去ミケラルドに『もうここでアナタと会う事はないでしょう』と言ってたからだ。

 ミケラルドから霊龍に会う手段がない以上、霊龍から再会を望んだのだ。ミケラルドがこの再会を「異変」と述べるのには十分な理由と言えた。


「まさかまたお会い出来るとは思ってませんでした。あ、握手でもしておきます?」


 ミケラルドが手を差し出すも、霊龍がそれに応える事はなかった。


「えー、握手したからって世界のバランスが崩れるんですかー?」

「いえ、人型への変態は慣れてないもので」

「慣れてないと何か不都合でも?」

「場合によってはその右腕が消滅する事も――」


 霊龍がそこまで言うと、ミケラルドはバっと手を引っ込めた。


「……過度な力を持つのも苦労しますねぇ」


 霊龍の実力を再認識したミケラルドは、ハンカチで冷や汗を拭きながら言った。

 胸元にハンカチを戻したミケラルドは、両手を隠すように後ろで組み、再度霊龍に言う。


「それで、今回のこの異変はどういう事で?」

「三日の後、魔王が完全に復活します」


 淡々と事実だけを伝える霊龍を前に、ミケラルドはついに軽口を止めた。張り詰めた緊張が、ミケラルドを俯かせる。


(三日……三日? 三日って何だ? 何三日って? 今、この美人三日とか言わなかった? 三日あれば大地を作り、海が生まれ、地に植物がはえちゃうけどっ? 三日? 本当に三日なの? いやぁ~、どうも三日って顔してるぞ。ところで三日後に何が起こるって言ってたっけ? 魔王? 復活? いつ? 三日……? …………っ! ど、どどどどどうしよう!? まだやらなきゃいけない事が沢山あるのに準備が間に合わない! そ、それに可愛い女の子とデートだってしたいし、十代男子からおっさんまで羨むような嬉しいハプニングも経験してない! くそ、くそっ、クソッ! 頭の整理が追いつかない! まずどうすればいい? リィたんに膝枕してもらって、ナタリーと笑いながらタイムカプセルを埋めよう……! いやいやいやいや、それも確かに大事かもしれないけど、今やらなきゃいけないのは、国家の統制と、国家間の協力体制! 【魔導艇ミナジリ】の配備は国家単位で一艇が限界か? 【魔力タンクちゃん】搭載の魔導アーマーもおそらく百機がせいぜい。輸送は転移魔法で何とか出来るとしても、全国民への周知だけで三日なんてあっという間だ。とはいえ、ある程度の布告は済んでいるが、国民の混乱を考えただけで、頭が禿げそうになる…………あ、でも霊龍が実は協力してくれたり――)

「――いたしません」

「で、ですよねぇ~……」

「私が手を出せないのには別に理由があるのです」

「と、いいますと?」

「世界の崩壊を防ぐため」

「魔王の強さによっては崩壊しますけど?」

「世界の荒廃か、世界の消滅か……と、申し上げれば私が手を出せない理由もわかるでしょう」

「っ!? ま、まさか!?」


 ミケラルドが表情が凍りつく。


(……つまり、霊龍が動けば世界が消滅するという事。確かに魔王側が勝ったところで、この世界には魔族が生き残るだろう。だが、霊龍が動けば世界自体に影響が出る。というか消滅するって言ってたな。という事は……霊龍はこの世界を支えている存在だという事だ)

「そういう事です」

(……まるでギリシャ神話の天空を支え続けるアトラスだな)


 大きな溜め息を吐いたミケラルドは、どっかり腰をおろし、胡座(あぐら)をかきながら宙に浮かんだ。


「……この話、あの子たちには?」


 ミケラルドは、今、別空間で霊龍に対し三つの質問を投げているであろうオリハルコンズについて尋ねた。


「いいえ」

「何故……?」

「オリハルコンズにはオリハルコンズの報酬を。最初はそれだけで十分だと考えていました」

「最初は……?」

「ですが、ミケラルド殿のこれまでの世界への貢献を鑑み、それ以上の報酬が必要だと判断しました」

「三日後の情報が……世界貢献の報酬だと?」

「別の報酬が良かったと?」

「いえ……これ以上ない報酬ですよ」

「それは……何よりです」


 これまで淡々と話していた霊龍の一瞬の間。

 それがミケラルドの首を傾けさせた。


「まだ何か?」

「……申し訳ありません」


 唐突な霊龍からの謝罪。

 それが何を意味するのか理解出来ないミケラルドは、ただただ目を丸くしていた。


「…………え?」

「貴方の世界貢献は、私を(もっ)てしても刮目すべき偉業だと言うのに、私が出来るのがこの程度だという事に、私は強い憤りを感じています」

「え、あ……そ、そうですか」


 世界的珍事とも言える霊龍による愚痴に、困惑を顔に浮かべるミケラルド。


(……まぁ、仕方ないか。彼女にはクレームを入れられるカスタマーサポートもない訳だし)

「三日後の戦い」

「え……はい」

「かつてない絶望が貴方の視界に広がるでしょう」

「そんな天気予報みたいに言われても……」

「流石の咬王ミケラルドも、(おの)我儘(わがまま)を貫き通すのは難しいかと」

「我儘……?」


 霊龍の話が理解出来なかったのか、ミケラルドは首を傾げる。しかし、霊龍の次の言葉がミケラルドの口を噤ませた。


「貴方が守り切れる人数にも限度があると申し上げています」


 ――だが、


「…………っ!」


 無意識に(あふ)れる彼の魔力が、今度は霊龍を閉口させた。

 そしてミケラルドは、重く閉ざされた口をこじ開けるように言った。


「……俺は……俺はなぁ? 少ない手札の中……一所懸命にやってるだけなんだよ! 魔王だっ?! 霊龍だぁ!? 魔王だの、霊龍だの……手札に最初からジョーカーがあるみたいにこっちは恵まれてないんだよ、クソッタレッ!!」


 そう、言ってのけたのだった。


「人間を……あまり()めないでください……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ