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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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89/917

その88 エルフ大流行

2019/6/15 本日二話目の投稿です。ご注意ください。

「はーい、ウォーターの魔導書(グリモワール)は一人一冊までですよー! あの! 謎のエルフが使うウォーターの魔導書(グリモワール)! 白金貨一枚でーす! 押さないでくださーい! 在庫はありますし、今日でなくても買えますからー!」


 殺到する無数の客。

 これまでにおける幾度ものプロパガンダ。

 やはり謎のエルフの登場は間違いじゃなかった。

 民衆は気付いていない。既に謎のエルフの登場に抵抗がないと。

 俺が助けた人間の中では、エルフに助けられて喜ぶ者まで出始めた。「あの謎のエルフに助けられた!」と歓喜する者に対しては、去り際の言葉を変えたりしている。「今後もエルフを宜しく!」とか「エルフも人間と仲良くしたい!」とか言って去ってる訳だ。

 当然、エルフ全体ではなく謎のエルフにのみ心を許しているケースもあるが、ここからは色々小出しに出来る。

 その一つがこれ。憧れの謎のエルフが使う水魔法ウォーター。これを、魔導書(グリモワール)に込めて売る。魔法が既に入っているから安くなってしまう。という法則を利用して、多くの客層に届く金額に設定した。何故なら白金貨一枚とは、金貨百枚。決して貯まらない金額ではないからだ。

 そして買ってさえしまえば、その利益は計り知れない。

 水は生活の必需品。生きる上で必ず必要なモノだ。これを高いととる者はいないだろう。

 既に倉庫の半分の魔導書(グリモワール)が無くなっているが、リィたんが随時リーガルのダンジョンから補給してくれているので、今日売り切れたとしても明日はまた売れるのだ。

 当然、夜は俺もダンジョンに潜っている。

 これにより、約三十分で二冊の魔導書(グリモワール)が在庫に入る。

 そして、販売は首都リーガルに固定した。マッキリーの町とシェンドの町で売らないのには理由がある。何故なら、欲しい人間はリーガルを目指す。つまり、長いリーガルの道を歩む他ないのだ。俺が商売している今現在、謎のエルフ役は【チェンジ】でエルフに姿を変えたジェイルが行っている。

 新聞の効果も上々で、クロードの執筆速度……というよりモチベーションが上がっている。クロードの名前も徐々に売れてきているので、そろそろ一度サマリア侯爵であるランドルフに相談に行く頃合いか。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「何? エルフを従業員として?」

「えぇ、国家としてエルフが働く事を認めてくだされば、後はミケラルド商店で彼を守ります」

「ふむ……そもそも亜人を働かせてはいけないという法もないが?」

「重要なのはそこです」

「ほぉ?」

「法に書いてない事柄だからこそ、アピールしなくてはいけません。大事なのは、国が亜人を働かせても問題ない。国に亜人が住んでも問題ないというアピールです。理想は遙か遠いですが、亜人を奨励する国家を目指すべきです」


 俺がそう言い切ると、ランドルフは長い沈黙へ入った。

 何かを考えている。反論を考えている。俺はそう思って黙っていたが、長い沈黙から戻ってきたランドルフの口から出た言葉は、意外なものだった。


「…………頃合い、か」

「へ? 何がです?」

「当然、ミケラルド殿を陛下と引き合わせるという意味だが?」

「……何ですって?」


 おかしい。

 話がおかしな方向に転がり始めたぞ?


 ◇◆◇ ◆◇◆


 サマリア侯爵ランドルフは、非常に優秀な男である。

 公明正大さる事ながら、行動は極めて鋭敏。即断即決が出来る男。

 だからといって、訪問した当日に「リーガルに行こう」なんてなると思わなかった。

 しかも、ランドルフにもまだ転移魔法の事は伏せているので、コレ(、、)を使う他無かった。


「はははははは! ミケラルド殿! もっとだ! もっと速くだ!」

「これが限界ですよ! まったく!」

「なんと素晴らしい能力! なんと素晴らしい乗り物(、、、)だ!」


 俺がシェンドの町で依頼しておいた車輪のない豪華な馬車。

 いや、構造的にはバスが近いだろうか。

 長方体の絢爛豪華(けんらんごうか)な外装と、内装。

 まるで貴賓席のようなコの字型のソファ。そして今ランドルフには、超ファーストクラス用の俺の席――運転席に腰掛けてもらっている。これは、俺が運転しながら走る事が出来るようになったら座る席であり、ランドルフのような位の高い者が座る席である。


「ミケラルド殿! あ、あまり父上の言うことをきかなくてもぉおおおおおお!?」


 何故か付いてきたサマリア侯爵家の長男であるラファエロは、どうやらこの乗り物が怖いようだ。そうだ、これを機にこの乗り物を【ミックバス】と名付けよう。


「ミケラルド! 兄様の事はいいの! もっと速くーっ!」


 なるほど、何故か付いてきたサマリア侯爵家の長女――レティシアはやはり父親似の性格という事だな。


「ほっほっほっほ!」


 ゼフなんて窓から身を乗り出している。この人執事じゃなかったっけ?

 目が完全に少年のソレなんだけど?

 サマリア侯爵家の奥方、リンダだけはお留守番との事だったが、一緒に行きたがっていた。まぁ、家の事もあるのだろう。ラファエロとレティシアには社会見学させなくちゃいけないだろうし、仕方の無い事か。


「おぉ! もう見えてきたぞ! 流石ミケラルド殿だ! さぁ! さぁさぁさぁ! 速く!!」


 楽しそうだな、このランドルフ(おっさん)

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