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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

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882/917

その879 聖女の経済効果

「ミケラルド様ぁー!」

「アリス様ー!」

「なんと神々しい!」

「アリス様がいればミナジリ共和国も安泰だな!」


 届く声援と歓喜の声。

 只今、俺とアリスは竜騎士団の護衛の中、民衆の歓声に応えている。隣のアリスはぎこちない笑顔を浮かべ、周りに手を振っている。

 オープンカーさながらの土台を俺が浮かし、首都ミナジリを一周。簡単ではあるが、経済効果は抜群である。

 魔族と聖女が手を取り合い、公に動き回るのだ。ない訳がない。これを話した時の、ロレッソのホクホク顔は忘れられないものだ。


「こんな事してていいのでしょうか?」

「大丈夫ですよ、霊龍の意思でこちらへ来ている事は各国へ通達済みです」

「でも、霊龍様が私をここへ呼んだ理由は別にあると思うんです」

「そんなの当然じゃないですか」

「へ?」

「現在その準備に人員を割いてる途中です。これはそのついでに聖女の名を利用しているだけです」

「それ、本人の目の前で言う事ですか?」

「私、アリスさんに極力隠し事をしたくないんですよ」


 ナタリー同様、後が怖いからな。


「ミケラルドさんの場合、裏というより裏しかないのでわかりづらいんですよね」

「こうやって手を振ってるだけで民衆が安心出来るんです。コスパ最高でしょ」

「言い方」

「最近は安心の価格が高騰してましてね、一手打っておきたかったところです」

「はぁ……それで、霊龍様の意図というのは?」


 短いながらも濃く付き合ってきただけに、話題の戻し方を心得てきたな。


「今回、霊龍はアリスさんだけをここへ送りつけた。聖女だけ。本来、聖女とセットでやってくるのが」

「エメリーさん、ですね?」

「そうです。けど、エメリーさんは霊龍に目を付けられなかった」

「『選ばれなかった』とか言いようがあると思うんですけど?」

「いえ、この言い方であってますよ」

「へ?」

「先日の尖兵の一件で、既にエメリーさんの覚醒は成っています。勿論、まだ魔王の足下にも及びませんが、龍族(リィたん)と足を揃えるくらいには成長しています。だから、後は時間の問題なんですよ」

「はぁ……?」

「ですが、【聖加護】の完全コントロールは成ったものの、聖女の実力は勇者をサポート出来る段階にない。『やっべぇ、バランスとれてねぇーじゃん』と霊龍は思い、アリスさんをここへ呼んだ」

「つまり、目を付けられたのが」

「アリスさん、という事になりますね」


 それを聞き、アリスはガクリと肩を落とした。


「あれ? どうしたんです? 何か崇高な使命でもあると思ってました?」

「くっ、少なからず……」


 拳を握り、もどかしい気持ちから逃げたいであろうアリス君。


「戦争なんて足し算と引き算の世界ですからね。世界の調整役を担う霊龍としては、人間の手に委ねつつ上手くやりたいってだけの事でしょう」

「ミケラルドさんは魔族じゃありませんでしたっけ?」

「人間界にいる魔族ですからね、いいように使われてるんでしょう」

「ミ、ミケラルドさん? ちょっと顔が怖いんですけど……?」

「霊龍には頭が上がらないんですよ、ホント。でも、上がるようになった時には……仕返しくらいはしたいと思いまして」

「そうなったらもう世界の終わりなのでは?」

「いいですね、それ」

「え?」

「いえ、アリスさんからの信頼は厚いようなので、ちょっと嬉しくなりました」

「え? ちょ、何でそういう事になるんですかっ」

「だってアリスさん、私が霊龍に届かないとは思っていないようですし?」

「あ……それは……その……まぁ……うん。そうですね」

「力においては信頼頂けているみたいですね」

「そ、そうです。力においては何より信頼していますっ。それが何かっ?」


 そうムキになるアリスを横目に、俺はくすりと笑うのだった。その後、聖女パレードは昼過ぎまで続き、ミナジリ邸に戻る時には、既に日が暮れかけていた。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「こ、これは……!」


 アリスが見下ろすのは、ミナジリ邸の地下に建造された秘密の訓練場。

 無数にある見慣れたゴブリン人形の後ろに立つ俺と、正面に位置する聖女アリス。


「懐かしの戦略(ストラテジー)ゲームですね。以前アリスさんはレベル7まで攻略しました。今日からレベル8以降を攻略してもらいます。レベル7攻略時のアリスさんはランクS。現在のアリスさんは……おそらくSS(ダブル)からSSS(トリプル)の実力があるでしょう。ですが、依然ランクはS。緋焔組はSS(ダブル)になりましたが、アリスさんは上がりませんでした。依頼消化が少ない事も起因していますが、同時にこれはアリスさんへの冒険者ギルドの信頼度とも言えます。つまり、アリスさんがミナジリ共和国にいらっしゃるこの超短期間に、実力の向上、信頼と実績を積み上げ、冒険者ギルドのアーダインお爺ちゃんの太鼓判を頂く」

「せ、聖騎士学校の授業は……?」

「そんなものはサボタージュですよ。サボってサボってサボりまくってください。下種く、卑しく、聖女的に――ですよ」

「とってつけたかのように聖女を付け足さないでください……」


 そう嘆くアリスを見て薄ら笑いを浮かべる。

 長らく停滞してきた聖女ゴリラ計画、いよいよ大詰めだな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 聖女ゴリラ化計画♪ 達成した暁には呼び間違えて、 ゴリラさんとか、聖女ごりすさんとか 呼んで欲しい("⌒∇⌒")
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