表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

877/917

◆その874 分岐点

 空を見つめるミケラルド。

 (そこ)にいたのは古の賢者。

 二人の視線が交わる事はない。

 古の賢者の目はミケラルドに向いていなかったのだ。

 その視線に気付いたミケラルドは、古の賢者の視線を追う。

 そして気付くのだ。視線の先にイヅナとオベイルの姿があった事を。


(イヅナとオベイル……いや、違う)


 古の賢者の表情を今一度見た時、ミケラルドが気付いた。


(なるほど、【魔導アーマー】か)


 そう、古の賢者が見ていたのはイヅナとオベイルではなかったのだ。彼が見ていたのは、今しがたミケラルドが造った【魔導アーマーミナジリ】。

 ミケラルドがそれに気付いた時、古の賢者の表情も相まって、すぐにその意図を知る。


「……なるほどね、【魔導アーマー(アレ)】は知らないって事か」


 そう零した時、ミケラルドの視界からは、既に古の賢者の姿はなかった。


(……つまり、ここが【分岐点(、、、)】)


 古の賢者が知る事、ミケラルドが知らない事。

 過去をどれだけ遡ろうとも、覆らなかった事実。

 しかし、ここからは全てが不明。そう理解したミケラルドが薄気味悪い笑みを浮かべる。


「ようやく同じ土俵に立てたって事か」


 それが何を意味するのか、ミケラルド自身もわからない。

 未来視など出来ない。当然の事。しかし、その表情の変化を捉えていた一人の女は顔を引き()らせていた。


「どうしたんですアリスさん、顔が怖いですよ?」

「どの口が言ってるんですかね?」

「勿論、この口です」


 言いながらミケラルドは、自身の指で口角を上げて白い歯を剥き出しにした。

 それに対しアリスは大きく溜め息を吐いて額を押さえた。


「……聞いた私が悪かったです」

「ところでアリスさんって聖女でしたよね?」

「今更何を言ってるんですか?」

「エメリーさんの事、助けなくていいんですか?」


 そう言ってミケラルドはエメリーを指差した。

 エメリーは一緒に吹き飛ばされたリィたんが救出したものの、満身創痍(まんしんそうい)という表情だ。既にナタリーが対応しているものの、早急な対応が必要な状況。

 ミケラルドの言葉に驚き、すぐにエメリーへと駆けよるアリス。

 慌ただしいアリスの背を見送り苦笑するミケラルドと、それを横目に見ていたキッカとハンが話しかける。


「で、何でミケラルドさんは行かないの?」

「いやいや、皆まで言ってくれるなキッカちゃん」

「あら、どうして?」

「ミケラルドの大将は、実はもう疲弊し切ってるんだよ」

「あらあら、それはどうして?」

「考えても見ろよ、俺たちのお(もり)をしてガンドフまで行軍、更にはアリスちゃんの【聖加護】をその身に受けながらエメリーの剣を造ったんだぜ? これで疲れてなかったらどんな超人だよって話だろ?」

「確かにその通りね」


 まるで劇中劇のような会話。

 ミケラルド自身も「深夜の通販番組みたいだな」と思っていた。


(けど、なかなかどうして……よく見てるな)


 当初、その体力はミケラルド自身も七割と見積もっていた。

 しかし、ミケラルドが考えるよりも、状態は良くなかったのだ。


「【聖加護】……か」


 ミケラルドの後ろで呟くように言ったのは、雷龍(シュリ)だった。


「流石、よくわかっていらっしゃる」


 振り返らずミケラルドが言うと、


「勇者の剣が造れる程の聖女の聖加護を受けて、ただで済む魔族なんている訳ないだろう。一週間は大事をとれ、ナタリーには私から話しておいてやろう」


 雷龍(シュリ)はそう言って姿を消したのだった。

 その後、ナタリーの指示で魔王の尖兵の亡骸を回収。その翌日ガンドフのウェイド王に事のあらましを説明したのだった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 ガンドフの迎賓館(げいひんかん)の一室。

 そこにはミケラルドとリィたんが顔を突き合わせていた。


「そう、尖兵の亡骸はやっぱり消えちゃったか」

「元々は魔王の瘴気から生まれたもの。煙のように消えるのは必然……木龍(クリュー)がそう言っていた」

「まぁ、そうなるよねぇ」

「ところでミック」

「なんざんしょ?」

「それは……ナタリーが?」

「よくわかったね」


 (こも)った声でミケラルドが言うとリィたんが苦笑する。

 雷龍(シュリ)の報告により、ミケラルドの身体が完全でないと知ったナタリーは、ウェイド王と交渉。冒険者デュークとして参加した今回の一件だったが、他国の王が勇者の剣製作で疲弊していると知ったウェイド王は、ミケラルドを迎賓館に迎えたのだった。

 看護を申し出たナタリーにより、ミケラルドの身体は包帯でぐるぐる巻きにされ、いかにもなミイラ的様相でベッドに横たわっていたのだ。


「外傷なんかないのにねぇ」


 溜め息と共にミケラルドが言うも、リィたんはそれを否定するかのように首を横に振った。


「ミックはそうでも、他の者は元気だと騙されてしまう。そうでもしないと、他者もミックも何をしでかすかわからない。そういう事だろう」

「なるほど、ナタリーなりのポーズって訳か。相変わらず上手いねぇ」

「無論、それだけではないだろうがな」

「へ?」


 ミケラルドが首を傾げるも、リィたんはくすりと笑うばかり。そして、話題を変えるように言ったのだ。


「ミックはしばらくここで安静にしていろ。我々オリハルコンズは、戻り次第……法王国のダンジョンに潜る」

「え、それって……?」

「ランクS、SS(ダブル)のダンジョン攻略だ」

「おー、遂にか」

「いつまでもミックに頼ってばかりではいられないからな」


 笑いながらそう言って、リィたんは部屋を後にしたのだった。誰もいなくなった部屋で、ミケラルドは零す。


「なんのなんの、いつも助けられてばかりですよ」


 そうニコリと笑って、布団を被るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ