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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

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◆その867 剣の名

 ミケラルドとアリスは、疲労困憊(ひろうこんぱい)になりながらもガンドフ城へと辿り着いた。

 真なる【勇者の剣】ともなれば、ウェイド王への報告が必須であり、当然の事ながら各国への周知も必要だ。

 勇者エメリーを呼び、簡単ながらも御前での授与式がとり行われる。

 緊張を露わにしたエメリーがウェイド王から二本の勇者の剣を受け取り、皆の前で未来を守るための決意表明をする。

 無数の拍手に囲まれ、授与式は終了。その後は立食形式の宮中晩餐会が開かれたのだった。


「どひぃ~……」


 疲労を体現するかのごとく出た声がバルコニーに響き渡る。

 といっても、そこには声の主とアリスしかいなかったのだ。


「あの、その姿どうにかなりません?」


 バルコニーの柵の上に器用に寝そべる中肉中背の男は、恰幅がよく豊かな髭を蓄え、頭頂部が薄目の……平たく言えばどこにでもいるようなオッサンだった。


「……どちら様でしょう」


 男がアリスに聞くも、


「目立ちたくないからって姿を変えてたらダメですよ、ミケラルドさん」


 アリスにはバレバレだった。


「ぎくり」

「デュークさんやルークさんの姿にならなかったって事は、オリハルコンズからも隠れたいって事ですかね?」


 ジト目を向けられたミケラルドは、てすりの上で器用に寝返りをうってアリスに背を向けた。


「流石に今日は疲れたんですよ」

「それは私もです」

「お互いにお疲れ様です。では、おやすみなさい」

「いや、話は終わってませんからっ。それに、そんな事してると嫌でも目立っちゃいますからね」

「大抵の人からは何にも見えてませんよ。見つけられるのはアリスさんみたいに魔力の強い方だけです。その中でも、私を私だとわかるのは、アリスさんと――」

「――あー!」


 ミケラルドが言いかけた時、アリスの後ろから大きな声が響く。

 ミケラルドを指差し、ぷんすこしながら二人に近付く少女。


「何やってるのよ、ミック!」

ナタリー(この子)だけです」


 ミケラルドは背後のナタリーを指差し、溜め息を吐いてアリスにそう言った。


「この子って何よ、この子ってっ?」

「いや、まさかこんなに早く見つかるとは思わなかった……」

「ミナジリ共和国の元首がいるって皆探してるからね」

「そんなにモテてもしょうがないしなぁ」

「「それは絶対ない」です」


 ナタリーとアリスが、声を揃えミケラルドの発言を否定する。

 目を丸くしたミケラルドは、また寝返りをうち二人に顔を向ける。


「いや、意外にモテるんですよ、私?」

「それはミックの中身を知らないからでしょう」

「特にこの宮中晩餐会じゃミケラルドさんにあやかりたい人だらけですからね」

「いや、でも」

「そうそう、ミックの武具を卸したいって人から声掛けられたよ」

「私もさっき、ミケラルドさんに娘を紹介したいって方に声を掛けられました」

「モ、モテてる……よね?」

「軍事的」

「政治的にモテてるだけです」


 ナタリーとアリスの余りの息の揃いっぷりに、ミケラルドも引き気味である。

 その後、ナタリーはミケラルドの顔を覗き込み、訝しみながら聞く。


「ん~、初めて見るタイプの顔だね? 知ってる人?」

「昔のバイト先の店長の顔」

「バイト?」

「死ぬ前の話だよ」

「あー、異世界の話か」


 と、ナタリーが得心すると、アリスはそこに疑問を持った。


「そういえば、ミケラルドさんって……どうして死んじゃったんですか?」

「…………事故ですよ」


 死因の詳細を話す事は、ミケラルドの沽券(こけん)に関わるのだ。


「怪しい……」

「……本当ですかぁ?」


 ナタリーとアリスの視線がミケラルドに深く突き刺さる。


「い、いいじゃないですか、そんな事は。それよりエメリーさんは大丈夫なの?」


 話を逸らすようにナタリーに聞く。


「どこからも引っ張りだこだよ。グラスはもう三回割ってる」


 直後、響いてきたエメリーの「わぁ?!」という声と、「どすん!」という衝撃音と、「パリン!」という破裂音。


「今ので四回目」


 会場を指差しながら淡々と言うナタリー。


「流石我らの勇者様」


 ミケラルドが苦笑しながら言うと、今度はアリスが心配そうに言った。


「本当に、これでエメリーさんは【覚醒】に至るんでしょうか……?」

「大丈夫ですよ、着々と内包魔力が上昇しています」

「え、そうなんですかっ?」

「どうやら一気に覚醒するんじゃなくて、徐々に身体に適応していくようですね。流石に覚醒分の魔力を一気にあの小さな身体に詰め込めば、何が起きるかわかりませんし。霊龍もそういう細かいところを考えてるって事でしょう」

「相変わらず身も蓋もない言い方ですね……」

「出来れば、このまま何も起きなければいいんですけど、そうもいきませんからねぇ……ん?」


 ミケラルドが見たのはアリスとナタリーの間。

 二人がその視線に気付き、振り向くと、そこには勇者の剣を抱えて転ぶエメリーの姿があった。


「いちちち」


 赤鼻を押さえ痛がるエメリーと、ようやく手すりから降りるミケラルド。


「人が集まって来ちゃったなぁ」


 ミケラルドはそう言いながら【チェンジ】を解き、エメリーに手を差し出す。


「あ、ありがとうございます、ミケラルドさん」

「どうしたんですか、そんなに嬉しそうな顔をして?」

「あ! 今ガイアスさんに聞いたんですけど、この剣の名前って何ですか?」

「なんとも、脈絡のない聞き方ですね……」

「ガイアスさんが『若造に聞け』って!」


 ガイアスのキラーパスに困り顔を浮かべたミケラルドだったが、純粋なエメリーの表情に遂には押し負けてしまう。


「……そのままですよ」

「え?」

「【エメリーの剣】、それ以外にないじゃないですか」

「…………ぁ」


 それを聞き、エメリーは頬を紅潮させ、ぎゅっと剣を抱きかかえる。

 くすりと笑うナタリーとアリス。

 すると、エメリーはそんな二人に後押しされるかように、顔を綻ばせたのだ。


「はいっ!」


 そんな輝かんばかりの笑みをエメリーが見せる一方、ガンドフの北――魔界では、大きな異変が起こっていたのだった。

次回:「◆その869 異変」

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