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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その86 ミケラルド? 誰だそれは?

 あの後、ドマークの話を聞いたが、やはりあの男はリプトゥア国で買った奴隷だという事だ。リーガル国での奴隷の売買は行っていないが、リプトゥア国に行き買って奴隷と契約してからリーガル国に戻る事は、咎められないとの事だ。

 何より重要なのが奴隷購入時にする【契約】であり、奴隷はそれを遵守しなければならない。確かにリプトゥア国であれば、転移魔法の事を……いや、ミケラルド商店の内部事情について口外しない【契約】した奴隷を購入し、従業員として働かせる事が可能。

 これであれば、ミナジリ村の労力を裂かずともミケラルド商店の営業が可能。

 ……しかし奴隷か。ナタリーが奴隷として魔界に来た経緯もある。

 これに関しては皆に相談してからだろうな。


「お待たせリィたん」

「おぉミック! どうだ! 私は立派に倉庫番を務めたぞ!」


 もの凄い胸をさらに突き出し、もの凄いしたり顔で言ったリィたん。

 俺の見間違いじゃなければ、今このシェンドの町の二号店倉庫内では、何本か聖水のピッチャーが割れている。リィたんの中で、これはおそらく失敗じゃないのだろう。

 まぁ、仕方ないよな。

 この程度で済んでよかったし、リィたんはそれ以上を確実に稼ぐからな。


「うん、良い仕事ぶり」

「そうか! ふふふふ、倉庫番の仕事はもうマスターしたといっても過言じゃないな!」


 そいつぁ凄い。


「リィたん、店も落ち着いてきたから、先にリーガルに行っててよ。俺もすぐ行くから」

「ふっ! 次なる仕事の場へ行こう! 待ってるぞミック!」


 俺は勇んでテレポートポイントに向かったリィたんの背中を見送り、零れた聖水を風魔法で乾燥させた。


「ふぅ」


 ◇◆◇ ◆◇◆


「ミック、どの依頼を受けるんだ!?」

「いや、依頼の下見だよ」

「ほぉ? 何か狙いがあるという事か」


 にしてもやたら注目されてるな。

 あぁ、そうか。リィたんが首都リーガルの冒険者ギルドに来たのは初めてだったな。


「アンタがリィたんかい?」


 リーガル国で数少ないランクAの冒険者リィたん。

 そりゃ、この人(、、、)に声を掛けられない方がおかしいよな。


「誰だ貴様は?」


 鋭い視線で見るリィたんに、リーガルのギルドマスターであるディックは、両手を前に出し、リィたんを諫めるように言ったた。


「っと、何て殺気だ。おいミケラルド。紹介してくれよ」

「リィたん、こちらギルドマスターのディックさん。その後ろにいるのがギルド員のニコルさんだ」

「その二人が何の用だ?」


 うん、まだ目がキツい。

 きっとリィたんのお楽しみを邪魔したからだろうな。


「ただの挨拶だよ。今後面白い仕事があったら二人を呼ぶからそのつもりでってな」


 このディックの言葉がリィたんの琴線(きんせん)に触れたのだろう。


「面白い仕事! お前はそれを私にくれるというのだな! 今か!?」


 面白いって単語に反応してしまうリィたんマジ可愛い。


「ははは、あればすぐにでも見繕ってやるんだがな。今のところランクAの仕事はねぇよ」

「それは残念だな」

「ま、数ヶ月に一度はランクAの仕事も入る。そん時ゃよろしくな!」


 言いながらディックは冒険者ギルドの奥へ歩いて行った。


「ミケラルド様、リィたん様、失礼します」


 ニコルも三角定規の如く丁寧なお辞儀をし、仕事に戻って行く。

 まぁ、リィたんの性格も悪い方向には転がらなかったし、顔見せとしては上々か。

 その後、俺たちは冒険者ギルドを後にし、首都リーガルの南門までやってきた。


「なぁミック。何故今日は依頼を受けなかったのだ?」

「依頼は受けずに動くんだよ」

「一体どういう意味だ?」


 リィたんの疑問に答えるべく、俺は満面の笑みをリィたんに見せながら【チェンジ】を発動したのだった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「た、助けて! 誰か! 誰かぁあああああああ!!」


 低ランクの冒険者のパーティ発見。あれはリーダー格の男戦士か。


「こ、このままじゃ!」


 軽装の男が悲痛に塗れた声を出している。


「お願い誰かっ!」


 魔法使い風の女が叫ぶ。さて、そろそろだな。


「とうっ!」

「「っ!?」」

「はぁあああああああっ!」

「す、凄い! 一瞬でモンスターを!?」

「いや、待て! あの姿はまさか……――」

「――エルフ(、、、)!?」


 これが、サマリア侯爵であるランドルフから依頼された、エルフのリーガル国進出計画だ。当然、ランドルフが作戦の内容を知る事はない。

 何故なら依頼内容は「エルフへの偏見を可能な限りなくして欲しい」というものだったから。

「大丈夫ですか?」

「な、何が目的だっ!?」


 リーダー格の男が剣を構えて叫ぶ。

 この作戦は、こういった人間の意識を変える事に意味がある。


「目的? 困っている人がいたら助けるのは当たり前でしょう。それでは私は急ぐので。失礼」

「あ、おい!」


 これをする事により、冒険者の意識は徐々に変わってくる。

 当然、今のリーダー格の男のような人間は、おそらく「エルフに助けられた。なんという恥じ」とか思って、誰にもこの事を話さないだろう。

 しかし、彼らが冒険者ギルドに帰ると……いるのだ(、、、、)

 まるで見ていたかのように、彼らを助けたエルフの話を流布するリィたん(なかま)が。先程の冒険者ギルドの下見は、分不相応な依頼を受け、少なからず危険になるであろう冒険者たちをピックアップしていたのだ。

【探知】の魔法を使えば、ある程度周囲の状況もわかるし、優先順位もつけられる。

 日を重ねる毎に、助けられる冒険者は増えていく。誰に? そう、エルフにだ。

 流石に毎度リィたんが流布してはまずいので、リィたんには【チェンジ】で顔を変えてもらったりして色んな場所で情報を撒いてもらっている。若干棒読みなのが難点だが、暗くなれば俺も首都リーガルに戻って情報を撒き散らすつもりだから問題ない。

 これが、ミケラルド式エルフプロパガンダ作戦の第一章である。

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