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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

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◆その865 勇者の剣5

 ミケラルドによる明確な殺意。

 ガイアス、アリス共に息を呑み言葉を失っている。


「アーティファクトには成長の余地がある。そうですよね、ガイアスさん」


 ミケラルドの質問に、最初ガイアスは戸惑いを見せた。

 しかし、それに気付いた時、ミケラルドの殺意の意味を知った時、ガイアスはハッとミケラルドを凝視したのだ。


「アーティファクトの成長って……どういう事ですか?」


 アリスの質問に、ミケラルドが答える。


「アーティファクトの一段階上……(すなわ)ち【遺物(レリック)】の事です」

「っ! レ、遺物(レリック)ってもしかしてミケラルドさん……!?」

遺物(レリック)はその名の通り、遺物。製作者が死んだ後にアーティファクトが進化するもの。現在、勇者の剣はアーティファクト止まりの存在ですが、製作者が死ねば……勇者の剣は遺物(レリック)となる」


 その説明を聞いた時、アリスはようやく理解した。

 ミケラルドの殺気の意味を。


「ま、まさか……!?」


 そんなアリスの衝撃と共に、ガイアスが小さな溜め息を吐く。


「ふっ……そうか、確かにそうすりゃ勇者の剣は成長し、遺物(レリック)になる。つまり俺様が死ねば、世界も安泰って訳だ」


 肩を(すく)め諦めすら見せるようなガイアスの態度に、アリスはギョッとする。そしてミケラルドに訴えかけるように言うのだ。


「確かに遺物(レリック)になれば勇者の剣は強力になるでしょうけど、ガイアスさんの命を奪ってまでするような事じゃありません! そ、そうだ、それなら私の命を……!」

「おいおい聖女の嬢ちゃん、アンタは世界に必要な存在だ。大体、聖女なくして勇者の覚醒はないんだからな」

「っ! ミケラルドさん、思いとどまってください!」

「さぁ、名残惜しいが、スパッとやってくんな!」

「ミケラルドさん!」


 直後、ミケラルドの打刀が振り下ろされる。

 絶命必至の絶対強者による一撃。

 ガイアスは満足気に笑い、アリスは余りにもショッキングな状況に目を瞑る。


「てい」


 直後、ミケラルドの間の抜けた声が響き渡った。

 振り下ろされた打刀(うちがたな)は、ミケラルドの分裂体をバッサリと斬り、消滅へと追い込んだ。


「おろろん」


 ふざけた声と共に分裂体は消失。

 この一連の流れに、ガイアスとアリスは目を丸くさせていた。

 ぱちくりとしたアリスの目を覗き込み、ミケラルドが失笑しながら手を振る。


「おーい、アリスさーん? お元気ですかー?」


 ミケラルドが何度か手を振ると、アリスはようやく覚醒へと至った。


「………………はっ! ミ、ミミミケラルドさん!?」

「ははは、いやですねぇ。私が好き好んで殺生する訳ないじゃないですか」


 肩を(すく)め、からかうように言うミケラルドに「ぐぬぬ」と唸るアリス。


「じょ、冗談にしても限度ってものがあるでしょうっ!」

「えー、でも、たとえ自分の分裂体といえど、殺気なしで倒すのなんて難しいですよ」

「だから! 無駄に溜めなきゃよかったじゃないですか! 私もガイアスさんも気が気じゃなかったんですからっ!!」


 怒るアリスの指摘に、ミケラルドはガイアスをちらりと見る。


「そうなんですか?」

「ちょっとだけ花畑を歩いた気がしたが……まぁ、白昼夢ってやつだな」


 と、飄々(ひょうひょう)とした様子で返すガイアス。


「だそうです」


 そう言ってミケラルドはアリスに視線を戻す。


「心配した私が馬鹿でしたっ!」


 少年のようにケタケタと笑うガイアスを前に、ついにアリスが諦めを見せる。そして、深い溜め息の後、仕方なしという様子でミケラルドに聞くのだ。


「……それで、今のは一体?」

「以前からこの世界のシステムを利用して【遺物(レリック)】を造れないかと試行錯誤してまして、雷龍(シュリ)ミナジリ共和国(ウチ)に来る前あたりにようやくカタチになったんですよ」

「それが……これですか?」


 アリスは、Vサインを天井に向けながら倒れるミケラルドの分裂体を指差した。それはもう嫌そうな顔で。


「その時出来た【魔力タンクちゃん(、、、、、、、、)】がなければ雷龍(シュリ)には負けてただろうなぁ」


 ミケラルドが思い出すように言った後、ガイアスがハッとして聞く。


「っ! もしかして、あの水龍の【魔槍ミリー】も遺物(レリック)か!」

「ご明察」


 ミケラルドはガイアスを指差してそう言った。


「ジェイルさんにも【魔剣ジェラルド】って武器をあげましたね。勿論、遺物(レリック)です。更には先日お披露目した【魔導艇ミナジリ】も、私の分裂体で手分けして造ったので、当然の事ながら遺物(レリック)です」


 次々と明らかになる遺物(レリック)の存在。

 ひけらかす訳でもなく、淡々と事実を伝えるミケラルド。


「はっ、おったまげたな……」


 顔を揉み驚くガイアスと、


「はぁ、呆れました……」


 相変わらずのアリス。


「しかし、今回はその限りではありません」

「「え?」」


 ミケラルドは再びガイアスを指差し、先の話を掘り返すように言った。


「ガイアスさん、私が先日ここにお邪魔した時、私は何て言いました?」


 ミケラルドが促すように聞くと、ガイアスはポカンと口を開けたまま、先日の突然の来訪を振り返っていた。


 ――――二人で叩き、二つの特性(、、、、、)を持った最強の剣を造ります。


 その言葉を思い出した時、ガイアスは震える瞳でミケラルドを見たのだ。


「……二つの特性(、、、、、)

次回:「その867 二つの特性」

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