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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

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その848 再会、そして対話2

 龍族の二人が完全にビビっている。

 それもそのはずで、ここまでの接近を気付かせなかっただけでなく、賢者の身体から漏れ出る魔力が異質なものだと理解したからだ。

 ……凄いな。

 膨大な魔力を圧縮し、それでも尚漏れ出ている状況。

 どうやるんだろ? 圧縮だから……薄く引き伸ばした魔力を折りたたむように丁寧に丁寧に……こんな感じか?


「「っ!?」」


 リィたんんと雷龍(シュリ)がバッと振り返る。

 どうやら、俺の魔力が賢者と同性質になったようだ。


「流石だな。ことイメージにおいて、この世界でお前の右に出る者はいないという事か」


 降り立った賢者が歩み寄る。


「お久しぶりです。求愛のダンスには応えて頂けなかったようで」


 俺も賢者に歩みよる。

 しかし、そんな俺の足を止めたのが、先程から臨戦態勢にあった雷龍(シュリ)だった。

 彼女は俺を腕で遮り、俺の代わりのように賢者に向かって歩み始めたのだ。強者故の興味というやつかもしれない。

 賢者が雷龍(シュリ)を指差し俺に聞く。


「止めないのか?」

「言って止まる方じゃないんですよね」

「別の方法があるだろう」


 なるほど、流石は(いにしえ)の賢者だ。

 雷龍(シュリ)の血を俺が得ている事を知っているようだ。


「ミック、止めるなよ」


 雷龍(シュリ)は振り返らず背で語り、俺とリィたんは見合って肩を(すく)めた。

 視線を戻すと、そこには俺たちを真似ている賢者がいた。


「まぁ雷龍なら死なずに済む……か」


 賢者のその言葉を口火(くちび)に、雷龍(シュリ)が戦闘を開始した。

 大地が()ぜ、轟音よりも速く雷龍(シュリ)の拳が賢者に向かう。

 直後、雷龍(シュリ)が俺の後ろに吹き飛んでいった。

 リィたんはそれを追いきれなかったようで、一体何が起きたのかわからなかったようだ。


「なっ!? ミ、ミック……今のはっ?」

雷龍(シュリ)の拳をかわして一発……蹴り、かな?」

「ご明察」


 賢者は俺を指差し言った。

 おそらく雷龍(シュリ)も見えなかっただろう。

 いや、俺でも正面から受ければ何が起こったのかわからない。それ程の一撃を賢者は見せた。

 やはりこの古の賢者……強いな。俺、リィたん、雷龍(シュリ)とでは天と地の差がある。

 賢者が【闇空間】から椅子を取り出し、俺もまた三人分の椅子を【闇空間】から取り出した。

 ん? うわぁ……ガンドフへの関所が近いからここで長く戦って欲しくないんだけどなぁ。

 椅子に座ろうとしていた賢者がやれやれという様子で俺たちの背後を見据える。

 後ろから先程の逆再生のように賢者に向かって行く雷龍(シュリ)

 俺たちを横切り、雷龍(シュリ)の雷撃が賢者に迫る。

 直後、賢者の身体が発光する。


「【リチャージ】か」


 雷魔法の【リチャージ】。

 雷の力を魔力に変換する雷龍(シュリ)にとっては相性最悪の魔法だ。


「しゃらくさい!」


 雷撃が大地に向かい、直撃と共に隆起する。

 なるほど、雷撃の衝撃で砕けた岩でダメージを狙う気か。


「ただの目くらましだな」


 まぁ、それが賢者に通用するかと言われればそうでないんだろうな。


「そうだ、目くらましだ……!」


 おぉ、凄いな。

 岩の弾幕を上手く使い、雷龍(シュリ)は賢者の背後に回っていた。


「なるほど」

「余裕ぶっていられるのも今の内だ!」


 賢者の背から拳を……おぉ!?


徹し(、、)か」


 リィたんの言葉通り、雷龍(シュリ)は賢者の身体(とお)し、雷撃を打ち込んだのだ。

 なるほどな、【リチャージ】は雷を吸収する膜のようなもの。その膜を介さず、雷龍(シュリ)の雷撃を賢者の体内に徹したという事か。


「作戦はよかったぞ、作戦はな」


 賢者はそう言いながら自身の胸をトンと叩いたのだ。


「ガッ!?」


 直後、雷龍(シュリ)は遠目に見える山にまで吹き飛んで行った。

 ……マジか。背から伝わる雷龍(シュリ)の徹しを、賢者は胸から徹し押し返したのか……!


「だ、大丈夫かな……雷龍(シュリ)?」


 俺が聞くも、リィたんは唖然としたまま動いてはくれなかった。


「リィたん、大丈夫?」


 ハッとした様子のリィたんは、驚いた表情で俺を見た。


「あ、あれが古の賢者か……」

「さっきも聞いたよ、リィたん」

「あ、あぁ……すまない」


 龍族をもってしてもこの衝撃。

 彼の存在は、この世界にとってイレギュラーであるという事。


「それは、お前も(、、、)だろう……ミケラルド」

「っ!」


 心を読まれた……!?

 その瞬間、賢者の口元が笑ったように見えた。

 なるほど、情報の小出しが始まったか。

 言いようによっては、少なからず彼との信頼関係を築けたのかもしれない。

 俺たち三人は、ようやく椅子に腰かけた。

 賢者の背後からのそのそ歩いて来る存在。

 深紅の唾を大地に吐き捨て、何食わぬ顔で俺の隣に座る雷龍(シュリ)


「珍しく大人しいじゃん」

「勝てない事がわかった。何だコイツは?」

「それを聞くのがココって事でしょ。あ、回復いる?」

「いらん」


 悟りの境地でも開いたのか、雷龍(シュリ)はボロボロになりながら身体の快復に努めた。

 俺は苦笑し、リィたんは呆れつつも警戒は解いていなかった。やはり古の賢者の存在が気がかりなのだろう。


「さっきのどうやったんです?」


 俺の質問は先程の読心術(どくしんじゅつ)にあった。

 まさか心を読めるとは思わなかったしな。


「お前ならいつか出来るようになるかもな」

「出来ればすぐに出来るようになりたいんですが」

「お前らしいが、こればかりは修練が必要だ。気が遠くなるような時と、鍛錬がな」

「ははは、とてもいい答えをありがとうございます」


 明確な答え以上の答え。

 この言葉から賢者がどれだけ生きてきたのかがわかる。


「さて、密談といこうじゃないか」


 魔界の荒野に四つの椅子。

 新興宗教みたいな密談が、図らずも始まってしまった。

そういえば、私の過去最長作品だった『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』(

1,886,719文字)を、『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』(

1,907,280文字)が超えました。いつの間にか・x・ もうすぐ200万文字なので、そこからは未知の領域ですね٩( ᐛ )( ᐖ )۶

これからも半端者をよろしくお願いしまーす!


次回:「その849 再会、そして対話3」

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― 新着の感想 ―
[一言] アズリー越えおめでとうございます。ますます面白くなっていきますね。最初の頃とまるで違うのはアズリーの経験があってこそなのでしょうね(*´∀`)♪更新おまちしています。
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