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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その83 ミケラルドの憂鬱

2019/6/12 本日二話目の投稿です。ご注意ください。

「うわぁ! すごーい! ねぇねぇ! あのお店がドマーク商会?」


 煌びやかな外観と細部の装飾。広大な敷地と渦に飲まれるかのように出入口に入って行く無数の客。どんな商品すらも扱うと豪語するドマーク商会本店。そこを指差しながら、人間に(ふん)したナタリーが嬉々として俺に聞く。


「そうだよ。明日正式にライバル宣言されに行くんだ」

「あら? そんな重要な予定が?」


 エメラが歩きながら聞いてくる。


「えぇ、まさか正面の店とは思わず……失敗しました。まぁでも、ご近所付き合いみたいなものですよ。……多分」

「天下のドマーク商会とご近所付き合い……ミケラルド様の感性には脱帽です」


 まるで憧憬のような眼差しを俺に向けるカミナ。

 がしかし、ドマークとの話も悪い話ではない。もしかしたら協力して皆の暮らしを豊かにすると共に、一儲け出来るかもしれないからな。


「ミック、私は服が見たいぞ」

「あ、私もー!」

「それは良い考えです!」

「うふふふ、それじゃあドマーク商会さんに行きましょうかっ♪」


 リィたんは長旅でボロボロになった衣服の新調をするために、ナタリーとカミナは女の子として、そしてエメラは便乗しつつもドマーク商会の視察といったところか。

 エメラは最近商売人として目覚ましい成長をしている。昨日なんて魔導書(グリモワール)を更に二冊売ったそうだ。もしかして、エメラの給料は、基本給の数倍になるのではなかろうか?

 まぁ、それは許してる事だからまったく問題ないんだけどな。

 出来れば店員を増やし、色んな場所に店舗を構えたいが、それをするとなると、どうしても身内しか選択肢がなくなってしまう。

 店を構えるならば、テレポートポイントを必ず設置する。それを見られてもいいのは今のところ身内だけだ。店に開かずの間を作って地元の人間を雇う事も考えたが、バレた時のリスクを考えれば、やはりそれは不可能だ。

 アルフレドの公爵家から逃げた元騎士シュッツや、公爵家地下牢の番人ランドは、俺が【チェンジ】を使っているから人相バレはしないけど、ミナジリの村要員は皆悪人ばかりだからなぁ。まぁ俺の催眠療法で善人にはなってるが、手配されてた人間も多いだろうし、店員としても向かない。極力顔を変えるのも避けたいとくれば、頭打ちだろうか。

 エルフへの差別意識の改善もあるし、ミナジリ村の発展もあるし、商売も軌道に乗せなきゃいけないし、ほんと、後二千人くらい……とは言わないけど、後一人くらい俺がいてくれれば、もう少し捗るんだけどなぁ。


「何か、悩み事がありそうですね」


 リィたん、ナタリー、カミナが洋服を選んでいる中、俺は店内にあるベンチに腰掛けていた。その隣に腰を下ろしたのがナタリーの母エメラだった。


「そんな顔してました?」

「えぇ、クロードがよくそういう顔をしてましたから」

「クロードさんが?」

「人間界に住めないから、私に何度も謝ったり、ナタリーにも辛い思いをさせていると、とても辛そうな時期がありました」

「あの明るいクロードさんが……?」

「それは、ミケラルドさんが希望をくれたからですよ」

「へ?」

「どんな小さな一歩でも一歩は一歩です。自分たちの住める場所、自分たちでも入れる町、ミケラルドさんの全ての行動が、その実現への一歩だと、あの人は信じていますよ。勿論、私も」


 微笑みながら、エメラは言った。


「どんな小さな一歩でも一歩は一歩……か」

「性急過ぎるのもよくありません。だってミケラルドさん、私たちが活動を始めてから、まだ三ヶ月ですよ? その間にミケラルドさんは何を成しました? 冒険者ランクA? 普通の冒険者はまず辿り着けません。商人ランクB? 才覚を持った商人でも並大抵の努力でなれるものではありません。リーガルの王商(おうしょう)? リーガル国の王商(おうしょう)は、このドマーク商会とミケラルド商店だけです。今日で四店舗目? 商売を始めて三ヶ月で四店舗出す商人なんて、世界中探しても見つかりっこありません。……ミケラルドさん以外は」


 微笑みながら、ちょっと芝居がかった感じで諭すように言ったエメラの言葉には、確かにもの凄い説得力があった。

 そういえばそうだった。俺がこのリーガル国にやって来て、まだ三ヶ月しか経っていないのだ。寧ろ、これだけの事を三ヶ月で行った事が、そもそも異常なのだと、俺は気付くべきだった。何度も乗せられたり、持ち上げられたりしたが、地道にやるのも一つの手だ。

 エメラは、それを教えてくれた。

 ……ったく、出来ればクロードと出会う前に出会いたかったというものだ。


「ねぇ、ちょっと聞いてよミック!?」

「ん? どうした、ナタリー?」

「リィたんがコレがいいって言うのよ!? 信じられる!?」


 ナタリーの怒りの先、男共の下心満載な視線の先、俺はそれを追ってみた。

 すると、そこにはしたり顔で立つリィたんがいた。


「それ、ホットパンツってやつか?」

「どうだミック! 凄く動き易いぞ!」


 アダルトな下着よりアダルトに見えるのは気のせいだろうか。

 いや、確かに、朱色のシャツと似合ってはいるのだが、俺が隣に立った時、別の部分が立つというか、反応してしまうのではなかろうか。と、思える程には、リィたんの新しい服は似合っていた。

 ナタリーは「絶対ダメ!」という感じだが、リィたんは「最高!」という感じで、俺なんか「ご馳走様です!」という感じなので、民主制を導入するのであれば、この多数決の結果は明らかだった。


「とてもいいと思います」

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