表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

839/917

その836 対話7

 面接を始めても尚、シギュンは優雅に腰掛けている。

 強者にだけ許される態度とはいえ、これでは示しがつかないのでは?

 そう思いロレッソをちら見すると、俺が渡した履歴書をざっと流し読みしながらシギュンに質問した。


「ではまず、ミケラルド様の秘書志望との事ですが――」


 殺気が凄い。

 誰も志望なんてしてないと言わんばかりの殺気である。


「――その志望動機をお伺いしたく存じます」


 怒髪天が天井貫いてラジーンまで巻き込むんじゃないかってくらい怒ってらっしゃる。

 ロレッソのヤツ、何か考えがあるみたいだな?

 頑張れシギュン、俺は君の味方だ。


「気持ち悪い笑みね」


 が、シギュンちゃんは俺の気持ちを汲んでくれなかった。


「ミケラルド様、ミックスマイルが出てらっしゃいます」

「え、うそ? 慈しみが籠もってなかったっ?」


 ロレッソの指摘により、俺は慌てながら顔を揉みほぐした。

 疲れたのか、不遜なだけか、シギュンは背もたれにどっと身体を預けて先の問いに答える。


「そこの吸血鬼に誘われたから」

「それはここにいらっしゃるまでの経緯ですよね?」

「は?」


 俺も「は?」である。


「誘われたからここまで来るのですか? あなたには拒否権もそれを考える時間もあったはずです。ミケラルド様が用意した屈辱的なコスチュームを身に纏ってまでここに来た理由を……私は聞いているのです」


 何? 今日のロレッソ怖いんだけど?

 いや、いつも怖いけどな。

 シギュンは意表を()かれたのか、目を丸くし……それが徐々に怒りに変わっていく。自分が、自分より武力を持たない者に(あお)られたと理解したからだろう。

 ところで、あのスーツってそんなに屈辱的?


「再度伺います。シギュン殿、あなたの志望動機を聞かせてください」


 直後、シギュンは俺に向けていた殺気をロレッソに移行させた。

 鋭く突き刺さるような強い殺気。オベイルが殺気大会とかやってたのを思い出す。シギュンが出場すれば、リィたんと良い勝負をするんじゃないかってくらいの殺気を受け……凄いな、隣のロレッソは涼しげな様子。


「黙ってばかりでは何も進まないのですが?」


 ロレッソのジャブが的確にシギュンの怒りゲージを上げていく。


「……私が何も出来ないと高をくくってるんじゃない?」


 確かに、これ以上はシギュンが何をするかわからない。

「このまま刺激を続ければ行動を起こす」と、シギュンは言ってるのだ。


「それはご自由になさって結構です」

「……は?」


 俺も「……は?」である。

 シギュンが暴れても問題ない理由。それは――、


「ミケラルド様、その時はよろしくお願い致します」


 そう、俺がいるから。


「え? は? 俺……ですか?」

「私にシギュン殿を御する力はありませんから、この場で一番の適役はミケラルド様かと」

「いやまぁ確かにそうなんですけどね?」


 直後、シギュンが大きく噴き出す。


「……はっ。あはは……どんな手があるのかと探ってみれば結局ミケラルドだよりじゃない? 虎の威を()る狐ってところかしら?」


 シギュンの逆襲。

 しかし、やはりロレッソは首を傾げたままさらりと返した。


「……それが、何か悪いのですか?」


 強い、今日のロレッソは過去一で強い。


「っ! ミケラルドがいなければ何も出来ない癖にね……!」

「それはどうでしょう? 私がいなければ、少なくともミケラルド様が困る事も多いでしょうし、ミナジリ共和国という器にも綻びが出るでしょう」

「口だけでは何とでも言えるわね」

「では、口以外を出したらいかがです?」


 俺、元首。俺、蚊帳の外。


「そこにいなければとっくに首を()ねてるわよっ」

「えぇ、ですから私はここにいるのです」

「は?」

「何かおかしな事を言いましたか? 私は弱者故にミケラルド様の隣でミケラルド様を支える職務に付いているのです。私にミケラルド様程の力があれば、そうする必要がありませんので」


 …………なるほど。

 ロレッソの言わんとしている事が、なんとなくだがわかってきた気がする。

 それがわかってくると……確かにシギュンの志望動機は聞いておきたいかもしれない。


「今一度聞きます。何故ここへ?」


 先程のようなかしこまった言い方ではない。

 ロレッソはわざわざここまでかみ砕いて聞いてみせた。


「だから……っ!」


 こうして見ると、綺麗なお姉様という印象だったシギュンが、子供のように見えてくる不思議。というより、ロレッソの追い込みが凄いだけなんだけど。

 的確に相手の弱点を衝き、食らいついたらテコでも離れない。宰相ならではの戦いの場、か。

 そもそもここは元首執務室。俺もこの部屋ではロレッソに負けっぱなしだからな。勝てるはずもない。

 何も言えなくなってしまったシギュンは、俯き、自身の手を眺めていた。その手を強く握った後、小さく一言。


「……何なのよ」


 苛立ち半分、困惑半分の……そんな一言。

 しかし、そんなシギュンの全部を吹き飛ばすかのようにロレッソは言った。


「『自分の居場所を守るため』、それだけの事なのではありませんか?」


 そんな質問と共に、シギュンは顔を上げる。

 そして俺を見て、小さく一言。


「……気持ち悪い笑みね」


 どうも、オチ担当のミケラルドです。

次回:「その837 対話8」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ