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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

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809/917

◆その806 証拠収集2

 部屋からジュリサスが消えた直後、精神的疲弊した身体にむち打ったオリヴィエがよろよろと立ち上がる。


「わ、悪巧みって……一体何をするんですの」

「まずは私を助けて頂きたい」


 ミケラルドが言うと、オリヴィエは先日のミナジリ共和国での話を思い出し、顔を紅潮させた。

 そして、羽織の内側から取り出した一枚のマジックスクロールを見る。


「……本当にわたくしを監視するのではないのですね?」

「大丈夫ですよ、その【ビジョン】はダミーですから。この部屋に貼ったとしてもオリヴィエ殿を監視出来る訳ではありません」

「で、では……わたくしがこれを貼る意味など――」

「――意味はありますよ。役に立たないだけです」

「へ?」


 小首を傾げるオリヴィエだったが、ミケラルドがそれ以上説明する事はなかった。


「これで証拠一つ。あ、クインは捕らえたから証拠二つか」

「それは本当ですかっ?」

「えぇ、こちらに向かってる間に証言をとりました」

「で、ですが罪人……それも大罪人の証言などお父様に――」

「えぇ、握りつぶされちゃいますね。ミナジリ共和国の陰謀だとか妄言だとか言われちゃうので、それと合わせて別の証拠が必要なんですよ」

「本当にこれがミケラルド様の助けになるのですか……?」

「勿論、これがあれば私は勿論、オリヴィエ殿も助けられますよ」

「そう……ですか?」


 いまいち要領を得ない様子のオリヴィエだったが、ミケラルドの笑みには有無を言わせぬ説得力があったのだった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 ミケラルドが法王国で暗躍しているその翌日。

 深夜、ホーリーキャッスルの尖塔から尖塔へと跳ぶ陰。

 影に潜り、陰から現れる華奢な体躯。

 元神聖騎士のシギュンがそこにいた。

 シギュンといえど、法王クルスの部屋に忍び込むは困難を極める。

 何故ならシギュンにはミケラルドのような壁抜けの能力がないからだ。ほんの少しでも音を立てれば、すぐにクルスの魔力感知に引っかかってしまうだろう。

 しかし、その夜のシギュンは違った。

 まるで壁を透り抜けたように、いつの間にかクルスの部屋にいたのだ。

 窓から照らされる月明かり。

 照らされるシギュンが引き抜くミスリルの短剣。

 シギュンは震える瞳で短剣に映る自分の顔を見る。

 そして、(かぶり)を振ってから、一歩、また一歩とクルスの寝床(ベッド)に近付いたのだ。

 短剣を振りかぶり、振り下ろす際の一瞬の殺意。

 クルスの知覚を掻い潜る速度。

 ベッドに突き立てられた短剣。


「ぐぅっ!?」


 驚きと苦痛の交じった鈍い悲鳴。

 シーツは朱に染まり、シギュンは何度も、何度もクルスの身体に短剣を突き立てる。

 最後に首を跳ね、確実に命を刈り取ったシギュン。

 青白いクルスの首をベッドに転がし、シギュンはその場を後にした。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 ゲバン私邸に戻るシギュン。

 疲れた表情を見せ、ゲバンの前に現れる。


「……終わったか」

「今頃大騒ぎでしょうね」

「そうか、ならば――」


 ゲバンがそう言った直後、私兵の足音が響いた。


『ご報告!』


 執務室の外側から聞こえたその声に、ゲバンはニヤリと笑い立ち上がる。


「構わん、入れっ!」


 執務室の扉を強く開いた私兵が報告する。


「法王陛下、崩御(ほうぎょ)されたとの事! アイビス皇后より『至急ホーリーキャッスルに来られたし!』と急使より言付かっております!」


 直後、ゲバンが薄気味悪い笑みを浮かべて言う。


「事実だな?」

「はっ! 現在ホーリーキャッスルでは昼の如き灯りが無数に!」


 私兵もニヤリと笑う。


「ふっ、ようやく死んだか……あのクソ爺っ!」


 喜び以上の野心を顔に宿し、ゲバンが一歩前に出る。


「すぐに行くと伝えろ」

「はっ!」

「それと――」


 言いながらゲバンがシギュンに振り向く。


「何?」

死ね(、、)

「っ!?」


 直後、シギュンは首を押さえて苦しみだした。

 ゲバンの(あるじ)としての命令が奴隷に対して働いたのだ。

 ひっかき、血が出ても喉をひっかき、倒れ、もがき、苦しみながらシギュンは呼吸を詰まらせた。無音の悲鳴と、暴れる肢体。泡を噴いたシギュンを一瞥しながらゲバンが言う。


「惜しい女だが、ここで切るのが正解だろうな」


 そう言った後、ゲバンはシギュンを魔法で燃やしたのだった。

 シギュンという存在自体がゲバンにとっては危うい。逡巡(しゅんじゅん)する事なくゲバンはそう決断した。

 炎が消える頃、ゲバンは足早にホーリーキャッスルへと向かっていた。


(あのクソ爺が死ねば後は御し易い母上のみ。葬儀の後は私が法王だ……!)


 ニィと笑うゲバン。

 ホーリーキャッスルに近付くに連れ、ゲバンの顔が変わっていく。

 まるで父の死を(いた)む、良心を持った息子のように。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「おぉ……父上……何というお姿に!」


 凄惨というべき現場で嘆くゲバン。

 他の王子、クリス王女も集い、皆法王の死を嘆き悲しんでいる。

 心の中で嘲笑うゲバンにとって最高の瞬間だった。

 しかし、その時間は余り長く続く事はなかった。

 ゲバンが予想だにしない言葉がアイビスの口から出たのだ。


「おのれミナジリ共和国(、、、、、、、)め……っ!」


 瞬間、ゲバンの目が丸くなる。

 そんなゲバンの異変など気にしない様子でアイビスが言う。


戦争じゃ(、、、、)!」

「は、母上……?」


 意味不明な事を発する(アイビス)

 しかし、その直後ゲバンは知る事になる。


ゲバン(、、、)、戦争の準備じゃっ!」


 それは、軍部のトップを(あずか)る者の務め。

次回:「◆その807 残された証拠」

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― 新着の感想 ―
[一言] アイビスが軍務のトップをあずかる務めの号令をかけたということ?アイビスに狙っているポジションをとられたから次の狙いはアイビスになるのかな? ゲバンは戦争までする気はなかったんでしょうね。掌握…
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