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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

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その799 出航

 黒のタンクトップに金刺繍の入った派手な赤いロングコート。

 腰元から抜いた装飾用のカットラスを明日に向かって掲げ、神々しいお胸様を揺らす。

 潮風に飛ばされぬよう海賊帽(キャプテンハット)目深(まぶか)に被り、ズレた左目を覆った眼帯を直す。


「ははははは!! 世界の海は私の海ーっ!!!!」


 今日もリィたんは輝いている。

 満潮も干潮も何のその。最高潮に達したリィたんのテンションは誰にも止められない。何なのあの船長、マジでカッコいい。


「ミック、(いかり)を上げろ!」

「アイマム!」


 対し俺は、可愛い髑髏のアップリケを刺繍した赤いのバンダナを頭に巻き、雲色と海色のボーダーシャツを着て腰元には()えてボロボロに造ったカットラス。

 下っ端感満載の俺はリィたんに敬礼をした後、すぐに錨を上げた。というか、今回は進水式なので、錨は使ってない。

 留め具を外しただけである。だが、キャプテンの言う事は絶対なので、俺は言葉を違えたりはしないのだ。

 が、少々問題が起きた。

 進水と同時に、中々ビッグなウェーブが発生してしまった。

 サイズがサイズなだけに、この勢いは近隣住民に迷惑がかかる。

 勿論、リィたんの【津波】程ではないが、人間にとってはどっちだろうが関係ないし、ミナジリ共和国の立場が危うくなってしまう。

 が、流石はリィたんなのだろう。


「ふん」


 すぐにその波を霧散させてしまったのだ。

 指パッチンの演出までついている。

 いや、ホントカッコイイ。

 既に私はリィたんファンクラブの会員ナンバー0番なので、リィたんのイケメン度は理解しているはずなのだが、改めて遺伝子に書き込まれたと言っても過言ではないくらいに。最早(もはや)俺はリィたんの子孫なのではないか、そう思ってしまう程だ。

 直後、ナタリーが手を挙げる。


「【迷彩(ステルス)モード】!」

「アイサーじゃ!」


 それに呼応し、マジックスクロールを稼働するサブロウ。

 近未来型海上都市【魔導艇ミナジリ】に搭載されている【迷彩(ステルス)モード】。魔導艇全体に光魔法【歪曲の変化】を施し、外部の視界から捉えにくくするのだ。

 軍部を預かるナタリーは、これ以上ないくらいに暗部を統率し、船員たちに指示を出す。


波魔(はま)変換!」

「波魔変換アイサー!」


 カンザスが波力の運動エネルギーを魔力に変換する【波魔変換】機能を機動。


風魔(ふうま)変換!」

「風魔変換アイサーです!」


 ノエルが風力を魔力に変換する【風魔変換】機能を機動。

 ところで、ナタリーってサーなんだね。

 俺? 俺は半端で下っ端である。

 部屋の隅で霞でも食べる生活をしているのがとてもよく似合う四歳児である。

 その後も、太陽光を利用した【光魔(こうま)変換】機能や、重力を利用した【重魔(じゅうま)変換】機能、さらには搭乗者の余剰魔力を利用する【吸魔(きゅうま)】など、日常的に【魔導艇ミナジリ】にかかる負荷などを利用した通称【ミナジリシステム】を起動した。

 開発当初、この【ミナジリシステム】の命名会議が行われたのだが、何故か俺が提案した名称【得々パック】は全面棄却された。

 リィたんの【船長の威厳】、ジェイルの【光熱費相殺システム】も大概だとは思ったのだが、最終的に命名神ナタリーの【ミナジリシステム】に落ち着いた訳だ。

 このミナジリシステムは最終的にどの【魔導艇】にも搭載するつもりだし、周辺国家もいつかは手に入れる事になるだろう。しかし、最高の変換効率を易々と他国に渡す訳にはいかない。変換効率を五十%に落としたとしても、魔導艇の役割(のうりょく)は十分に発揮出来る。

 だが、最高効率を誇るのはこの【試作型】などのミナジリ保有の【魔導艇】のみとする……ってのがロレッソからの提案である。

 当然、システムの一部に安全装置を仕込むのは俺も納得の事だった。魔導艇のレンタルや売却はあくまで商売だが、その武力を大きく行使するのであれば、本家本元には絶対に敵わない事が絶対条件。

 国を預かる者としてその行動は間違いないと思っている。

 さて、今回の進水式……とはいえ、あくまで【魔導艇】の試作型である。ランドルフやラファエロ、ましてやブライアン王は呼んでいない。試作型は試作型、この進水式でボロを出す訳にもいかないし、完成かどうかの判断はまだ下せない。


「ミック、進水完了だ」


 俺と同じ衣装を着たジェイルが肩をポンと叩く。

 嬉しそうなジェイルだが、それもそのはずだ。

【ミナジリシステム】を稼働させれば、ジェイルの出来る事が増えるからである。

 ジェイルが赤いバンダナを脱ぎさり、純白のコック帽を被る。


「では、厨房に火を入れてくる」

「あ、うん。行ってらっしゃい」


 小走りに厨房へ向かうジェイルだったが、その足取りがスキップに見えたのは気のせいじゃないのかもしれない。何だ、あれ?

 ロレッソに見送られながら、魔導艇ミナジリ最初の航海が始まる。

 カットラスの切っ先が眩しい太陽に照らされる。リィたんの指示する進行方向は未来(あす)


「出航っっ!!」


 今日この日の事を、後の歴史家が語る。

 ミナジリ共和国最高の防衛能力を保有した【魔導艇ミナジリ】が、完成した日であると。


「アイマム、出航っっ!!」


 航路は続くよ、どこまでも。

次回:「その800 来訪という名の飛び込み」

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