その764 宝を探せ!
「ミック、何だそのダウジングというのは?」
俺は人差し指を立て、雷龍の言葉を一旦止めた。
そして、【闇空間】の中から備蓄のオリハルコンを取り出し、針金状のL字に加工した。それを二本用意すると、ロレッソが興味深そうに言った。
「ミケラルド様……これは一体?」
俺は地面に、握りこぶし大のオリハルコンの塊を置き、皆の注目を集めた。
が、リィたんが……、
「ミック、どうしたんだ?」
そう言いながら拾っちゃったよ、この子。
相変わらず純粋だな、リィたんは。
「リ、リィたん……それ、そこに戻しておいて」
「そうか? ふむ……」
そう言って俺が置いた場所にオリハルコンの塊を戻したリィたんは、膝を抱えてちょこんとしゃがみ、それをじーっと見ていた。
何だ、あの可愛らしい生物は? 本当にかつて俺を殺そうとした存在なのだろうか?
そんなギャップに萌えながらも、俺はダウジングを始めた。
オリハルコンのL字ダウジングを二本持ち、正面に向けて歩いた。そして、オリハルコンの塊の真上付近までL字がくると、それが徐々に横に広がっていったのだ。
正面に立っていた雷龍が、目を丸くしていた。
ぱちくりする雷龍に、俺は目を丸くしてしまった。
こういう表情もするんだな。本当にかつて俺を殺そうとした存在なのだろうか?
まぁ、雷龍がそんな顔をするのだ。リィたんやロレッソなんて興味津々に決まっている。
「おぉ……」
目を丸くし、口を尖らせ感嘆の声を漏らすロレッソと、
「ミック! どうやったんだ!? わ、私にも! 私にもやらせてくれ!」
と、子供のようにダウジングを強請るリィたん。俺はリィたんにL字を渡し、思う存分ダウジングをさせてあげた。
「ミケラルド様、これはどういう原理でしょう?」
「故郷でも謎に包まれた都市伝説みたいなもんだよ」
「そんな曖昧なものなのですか……?」
「魔力をまぜたらすぐ反応したから、もしかしたら故郷にもそういうのがあったのかもね」
「そういえば、ミケラルド様の故郷には魔法が存在しなかったそうですね」
不思議そうに見る雷龍と、雷龍にドヤ顔を向けるリィたんを横目に、俺とロレッソは話を詰めていった。
「では、このダウジングなるものを使い、リーガル国の北を調査するという事ですね」
「うん、これならリーガル国の領地を侵害せずに安全に見つけられるだろうからね」
「かしこまりました。では作業は――」
「「――我らに任せろ」」
と、リィたん雷龍の二人の口から言われた時は驚いた。
海という環境である事から、リィたんには頼もうと思っていたが、まさか雷龍までやってくれるとは。
「ミケラルド」
そんな雷龍さんがギロリと睨んでくる。
「はい、何でしょう?」
とても怖いみっくん。
「面白いな、この国は」
「……はい?」
雷龍の意外な言葉に毒気を抜かれてしまった。
ロレッソと顔を見合わせてしまった程だ。
「そ、そりゃ何よりだけど……」
「霊龍が興味を持つのもわかる。その内、ヤツの仕事もなくなるかもしれないな」
そんなニヤリとした笑みを見せられた後、リィたんが再びドヤる。
「どうだ雷龍! ミックの凄さを思い知ったか!」
「我を倒したその時点で、ヤツは十分凄い。それ以上に興味が湧いたというだけだ」
「ふっ、そうか。ミックと一緒にいると楽しいという事がようやく理解出来たようだな」
「楽しい……か。ふむ、確かに毎日を新鮮に感じられるというのは久しくなかったかもしれないな」
「そうだろうそうだろう」
リィたんは鼻高々だな。嘘でも吐いたのかと思うほどだ。
まぁ嬉しそうなので放っておこう。
「じゃあ二人に任せるよ。同じものを造るからちょっと待っててー」
「うむ」
こうして、最強の助っ人を得た俺は、オリハルコン捜索を二人に任せたのだった。
「「北へ……!」」とキメ顔で我先にと出て行った二人を見送ると、ロレッソが俺に言った。
「世界会議の日程が決まりました」
「あ、そう? いつやるって?」
「明日です」
「明日っ!? 急だね?」
「【テレフォン】会議という事がなければそうはならなかったでしょうが、世界の窮地とも言える状況でしょう。各国の王、首長は事を軽んじてはいないという事です」
その中には、当然法王クルスの訴えも入ってるんだろうな。
何にせよ、人選に間違いはなかったし、法王クルスもそれを汲んでくれたという事だ。
明日、魔族四天王を殲滅出来るのかどうか、それが決まる。
おそらくゲバンが動き出すだろうし、こちらの動きも慌ただしくなるだろう。
しかし、オリハルコンが見つかり、魔導艇作成に見通しが出来れば、世界は魔界への侵攻を決める他ないだろう。
プリシラの依頼もあるしな、早いところ魔王を復活させてしまいたいのだが……心のどこかで「本当にそれでいいのか」という不安もある。だが、俺はやるしかない。進むしかないんだ。
「……それで、そのキメ顔は一体?」
未だロレッソに小言を言われる俺だった。
次回:「その765 世界テレフォン会議1」




