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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

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その760 世界会議の調整

「お忙しいところ申し訳ありません、クルス殿」


 魔界の資源調査からミナジリ共和国に戻った俺は、早速ロレッソに魔族四天王討伐について提案をした。

 そして、ロレッソの進言によって、まずは法王国に世界会議の調整役を願い出るべく、法王クルスに連絡したのだ。


『たまの暇潰し程度の【テレフォン】会談だ。今や仕事が少なくなって、やる事が少なくなってしまったよ。それで、今回はどういった話だ? よもや本当にオリヴィエに惚れてしまったなんて事はないだろうな?』

「『ゲバン殿を裏切って、私と一緒に糾弾しませんか?』って交渉したんですが、断られてしまいました」

『んなっ!? 正気かミックッ!?』


 そう言うも、法王クルスの声は少々弾んでおりましたとさ。


『はははは、外交の「が」の字も出てこない正攻法だな!? 面白い。それで、オリヴィエはなんと?』

「親の罪は子の罪、それに連れ添うのが道理……まぁそんな感じの事を言われてしまいました」

『ふむ、そうか』

「あれ? 意外にあっさりしていますね?」

『ゲバンがそれだけオリヴィエに深い楔を打ち込んだという事だ。最近あの子の事でアイビスと話し合う事が多くなったからな。様々な可能性を視野に入れつつ動いているという訳だ』


 なるほど、つまり法王クルスは、たとえオリヴィエにゲバンの罪が及ぼうとも、ある程度の落とし所は見つけている訳か。

 今のあっさりとした答えから察するに、悪い結果にならないだろうという政治的判断か。

 まぁ、ここら辺は法王クルスの領分だ。あえて深く突っ込む必要はないだろう。


『話が逸れてしまったな。それで今回の用件は何だ?』

「【テレフォン】で結構ですので、世界会議の調整をお願いしたく思います」

『議題は?』

「魔族四天王の殲滅」

『っ! ついに動くつもりか!』

「最近魔界で遊んでたんですけど、そろそろやっちゃえるなって思いまして」

『一国の元首の言葉とは思えない発言だな……』

「まぁ、そういう事で私としては動きたいんですよ。でも、他国に話を通さずこれをしてしまうと角が立つ……というのが、ミナジリ共和国の公式見解でして」

『だろうな。失敗すれば大きな被害を受けるのだ。たとえミックが魔族四天王を倒そうとも、魔族の残党が最初に狙うのはガンドフに他ならない。ガンドフからの糾弾を恐れるならば、話を通すのが筋だ。まぁ、それを差し引いてもガンドフは乗るだろうがな。世界最強のミックが動くのだ。断る国があるとは思えない』

「それが、実はありそうなんですよね」

『何、どこだ!?』

「リーガル国の南にあって、リプトゥア国の南西にあって、ガンドフの西にある巨大国家なんですけど、ご存知です?」

『大変だ、もしかしたら私はその国の法王をやっているかもしれない』


 こういうノリノリなところは相変わらずだな。


『しかし何故ウチが……いや、待て? なるほど、ゲバンか』

「そういう事です。反対できる要素はあるので、世界会議の後、軍部に掛け合えば必ず動いてくるでしょう」

『だろうな、一度の会議で出せる結論ではない。ましてや国のトップ同士で決められる問題でもない。会議の後、国内で議論すべき問題……か。そんな中、ゲバンが動かない訳がない』

「『ガンドフの次は法王国』だとか『法王国の威信』だとか言いそうなんですけど、パパの意見としてはどうでしょう」

『本当に言ってきそうだな……』


 オリヴィエの時とは打って変わって沈んだ声でいらっしゃる。


「出来れば、クルス殿にはゲバン殿に丸め込まれて頂きたいというのが、私の本意です」

『ミックの本意? っ! ……そうか、世界会議に民主主義を取り入れるつもりか』

「えぇ、今回の議題でこじれれば、国のトップ同士の多数決を導入したいんですよ」

『ふむ……面白いかもしれないな』


 ミナジリ共和国、法王国、リーガル国、ガンドフ、シェルフの五カ国がこれに同意すれば、法王国の軍部がいくらごねようが理にかなった議題が通り易くなる。

 それどころか、魔族四天王を倒す事に成功すれば、反対したゲバンを各国から糾弾する事が出来るのだ。やらない手はない。


『しかしミック、これはある意味諸刃の剣(、、、、)とも言えるんだぞ。それはわかっているのか?』

「えぇ、各国が結託してミナジリ共和国を貶める事も可能になる……という事でしょう?」

『無論、それはどの国にも言える事だ。我が法王国にもな。魔族四天王の殲滅については意見を揃える事は可能かもしれないが、多数決の導入は難色を示す国も出てくる可能性がある』


 確かにその通りだ。

 他国に理解を求める事が可能になるが、反対に他国から理解を強いられる可能性が出て来る。それが民主主義の良いところであり、難しいところだ。

 ましてや国同士の問題だ。

 場合によっては【真・世界協定】から外れる国も現れるかもしれない。

 それ故に、こちらからの選択肢は多い方がいい。

 なら、根回しよりも国力増強に勤めた方がいいだろうな。


『だが、ミックのやりたい事はわかった。世界会議の調整役、このクルスに任せておけ』

「助かります。ご連絡お待ちしてます」


 そう言って、俺は法王クルスとの【テレフォン】会談を終えたのだった。

 さて、世界会議までの間……何をしようかな。

次回:「その761 ヤツを探して東奔西走1」

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