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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その74 面倒事

「あ、あの……先程の方、一体どうされたのです? ミケラルドさんと話してたらもの凄く悲しそうになって帰っちゃいましたけど……?」

「男の悲しみ、プライスレス」

「へ?」

「アイツ、最近ちょこちょこ来てたんですか?」

「えぇ、日曜大工が趣味だとかで、毎日木材を――」


 ――アイツか!

 ま、まぁ他にも木材を買ってるヤツもいるが、マックスもその中の一人だったという訳だ。それに、エメラ目当ての男は、この先いくらでも来るだろう。

 マックスには本当の事を言ったが、他のヤツは今はまだファンのままの方がいいだろう。

 売り上げ的にも売り上げ的にも売り上げ的にも。それと売り上げ的にも。

 先走ってエメラに近付く人間がいれば、エメラがどう断るかにもよるかもしれないな。

 旦那がいる……って言うのだろうか? 性格的にあり得そうだけど、「エルフの旦那がいる」とは流石に言えないよな。

 クロードが聞いたらどんな反応するのか楽しみではあるが、関与もしたくないというのが本音だ。ナタリーに何を言われるかわかったもんじゃない。


 その日、ミケラルド商店二号店は終始盛況のまま閉店時間を迎えた。


「よっと」

「毎回思いますけど、豪快な()ですね」


 強固な岩壁に包まれたミケラルド商店を見るエメラ。

 現在倉庫にある商品はかなり多い。

 俺が出掛けていた際は商品の数を絞っていたが、戻ってからはまた倉庫が充実している。半日目を離すともなると、土塊操作で店を覆うくらいしないと心配だというものだ。


「それにしても、これ、本当にいいんですか?」


 自分の足下を見るエメラ。

 装備されているのは【隠密ブーツ】、【フレイムダガー】、【力の指輪】、【速度の指輪】、【魔力の指輪】、【力の腕輪】、【速度の腕輪】、【魔力の腕輪】。当然、自宅に帰る際は聖水を使う。従業員を守るためである。これくらいしないと心配だというものだ。


「何か買って帰ります?」

「いえ、今日は大丈夫です。ミケラルドさんは?」

「俺は家具を買って帰ります。あっちは住民が増えてますからね」

「ふふふ、本当、いい王様になりそうですね。ミケラルドさん」

「い、いいから気をつけて帰ってください! ほら、【ヘルメスの靴】掛けておきましたから!」

「ふふふふ、は~い」


 ぬぅ、あれは確かにマックスもコロリと落ちてしまうだろう。

 俺はエメラを見送った後、家具を扱っている店に向かおうとした。

 すると、正面から現れたのだ。――彼女(、、)が。


「ミケラルド様!」

「カミナ!?」


 おかしい、彼女のホームタウンはマッキリーのはずだ。


「えっ!? お店閉まっちゃったんですか!?」

「ん? あぁ、うん。帰りに色々買う事があるから、他の店より閉店が早いんだよ」

「帰り? ミケラルド様ってここに住んでるのでは?」


 あ、やっべ。

 流石に土地持ってて帰る場所がシェンドの西っていうのは不思議人間過ぎるな。


「ま、まだ家具を入れてないから今日はこの町の宿――」

「――え!? それなら一緒ですね!」

「じゃなかった。マッキリーに用事があるんだった」

「こ、こんな時間からですか……?」


 完全に下手打ってしまった。

 しかし、付いて来られても困る。


「じゃ、じゃあ急ぐからまた明日ね! 明日もお店にいるからさ! ばいばーい!」

「あ、あの! ミケラルド様ぁー!!」


 とかいう声が聞こえようとも、俺は振り向く事なく家具店に向かった。


「いらっしゃいませ。ミケラルド様」

「どもっす。あ、これ注文書です」

「承ります。……これは、馬車ですかな?」

「いえ、ただの箱ですよ。外装や内装のセンスは任せます」

「かしこまりました。完成しましたらミケラルド様のお店までご連絡致します」

「ありがとうございます。それ以外にベッドやチェストの注文がまた多くなりそうなんですけど、いけますか?」

「勿論です。ミケラルド様はお得意様ですから」

「ありがとうございます。木材なら安く卸しますからね」

「はははは、感謝致します」


 そんな家具店とのやり取りも束の間、俺は町の外の人気(ひとけ)がない場所でとある練習をしていた。

 それは、【土塊操作】と【サイコキネシス】の併用による運搬法。これを自身に使えないだろうか。そう思い俺は自分を持ち運ぶ練習をしていたのだ。

 これが成れば、俺は間接的ではあるが、空を飛べるという事になるのだが、はて?


「くっ……くく…………このっ!」


 じりじりと前に進むものの、やはりその速度は牛歩並み。これでは使い物にならないが、進歩がない訳ではない。二時間程練習すれば、それは人間の歩行速度並みにまでなったのだ。


「……ふぅ。要練習、だな」


 それは、この身体が万能ではない事を示し、身の丈を改めるには十分な結果だった。

 何が起こるかわからない世界だ。努力をするのに越した事はない。

 これからも、役に立つ事はどんどんやっていこう。

 そう思いながら、俺はクロードの家に戻った。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「へ?」

「へ?」

「へ?」


 時間差のある「へ?」ではあった。

 がしかし、そのどれもが違う色を伴っていた。


「ミックゥ~……」


 困った様子で言ったナタリー。

 それもそのはずだった。

 ここには、来てはならない者、居てはならない者がいたのだから。


「ミケラルド様!?」

「ミック!?」


 それは、本日会った二人の声。

 眼下から聞こえる驚きの声。

 侵入者と判断し二人を押さえ込んでいるのは、勇者殺しのリザードマン。

 帰ったばかりのエメラはカミナの登場に頭を抱えている。吹き出しがあったとしたら、「あちゃ~……」という台詞が合うだろう。

 そのエメラの旦那の事を教えたのは確かに俺だ。だが、尾行はよろしくないのでは? マックスよ。


「面倒臭ぇ」


 そう零してしまった俺を、誰が責められよう?

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