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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その73 新商品入荷

「いよっし! 今日はこれでいってみましょう!」

「はい。ふふふふ、とても楽しみですね」


 ニコルと話した後、俺はマッキリーの町に向かった。

 そこで日課という名のダンジョン探索を行った後、俺はシェンドの町に戻って来た。

 エメラの手腕はもの凄く、既に常連と呼べる野郎共が何人もいるようだ。

 毎日毎日やってきては木材か骨を買って行くそうだ。まぁ、早い話がエメラのファンである。

 開店までの時間、俺はエメラが書いた帳簿をパラパラとめくる。

 俺が渡した商品の数と収支がちゃんと合っている。

 これを見るだけでエメラが優秀であると理解出来る。当たり前の事を当たり前に出来る人材って、意外に少ないからな。

 さて、この店を作ってそろそろひと月になるか。


「エメラさん」

「はい?」

「お給料ってどれくらい欲しい?」


 実は見切り発車に近かったので、こういった事は全く決めていなかったのだ。

 だが、これは非常に重要な事である。


「え? いいですいいです! 私たち、どれだけミケラルドさんにお世話になってると思ってるんですかっ!」


 普段はお金に目の色を変えるエメラではあるが、あれは単に眺めるのが好きだったのか? と思える程には、エメラは給与の支払いに対して抵抗を見せている。


「そうはいかないですよ。働いてる人にはお給料を払う。これは当たり前の事ですからね」

「で、でも――」

「――でももへったくれもないですよ。クロードさんやナタリーにも払うので、そこはそこでしっかり稼いでください。あ、でもナタリーの教育上問題があると思うようでしたら、ナタリーの分の支払いはクロードさんにしますからね。まぁ、でもあの子の場合貯金しそうですけど」


 そもそも、ナタリーはハーフエルフで町に中々入れないから、お金を使う場がない。ゆくゆくはミナジリ村で導入したいが、それはまだ先の話だ。

 何か買って欲しい物があれば、俺やエメラに頼むから大丈夫というのもあるが、自分でショッピングを楽しむ権利が、あの子にないはずがない。早いところ実現させてあげたいものだ。


「ミケラルドさんって……三歳なんですよね?」

「見えません?」

「えぇ、全然」

「まぁ、魔族は成長が早いって事で納得してください。それでいくらがいいです?」

「そういうのって、店長さんが決める事なんじゃ?」

「基準がわかればそうしてるんですけどね。一般的な商店の店員って、どれくらいもらってるんです?」

「……う~ん、そうですねぇ。ひと月、金貨二十二枚……くらい?」


 ひと月あたり金貨二十二枚。

 サラリーマンの初任給か? 勿論、もっと過酷な人もいるだろうが、そこまで元の世界と変わる事はないのか。

 だが、あの世界の賃金は安すぎる。ならば自由のきくこの世界でくらい、夢があった方がいいだろう。俺は過去のコンビニ店員の時給の安さを思い出し、しみじみとうんうん頷いていた。


「あの……ミケラルドさん?」

「それじゃあひと月、白金貨一枚にしておきましょう」

「えぇ!?」

「あ、金貨百枚での支払いのがいいですよね。白金貨って持ち歩くには便利ですけど一々崩すのも面倒ですからね」

「あ、あのミケラルドさん!?」

「大丈夫です」

「何がです!?」

「ちゃんと歩合も付けますよ。もし魔導書(グリモワール)を売ることが出来たら、売り上げの一割を給料に上乗せします」

「あ、あの、ちょ……えぇ……?」


 純利益ばかりの店舗だ。

 これだけやっても十分に利益は見込める。というか利益しかない。

 エメラの焦り、困る顔を見るのはとても楽しいが、どうやら開店の時間のようだ。

 外がガヤガヤと賑わい出した。それもそのはずで、本日は表の「本日のオススメ」という看板にでかでかと刻み込んだのだ。「新商品入荷」と。


「さ、商売の時間ですよ」

「そう、ですね。うん! 頑張りましょう!」


 エメラが店の扉を大きく開ける。

 ゾロゾロと入って来る好奇心旺盛なお客たち。

 地道な宣伝効果もあり、最近ではマッキリーの町からもお客が来るそうだ。

 そして、当然リプトゥア国からも商人が出向いて来る。

 どんな嗅覚しているのかわからないが、商人たちの情報網はやはり侮れない。

 色んな商品を安価で提供するミケラルド商店の秘密。これを探ろうとする者も、今後出て来るかもしれない。まぁ、かなり強引な力業なんだけどな。


「ぬぉ!? こ、これは魔導書(グリモワール)!?」


 恰幅のいい商人風の男が魔導書(グリモワール)を見て驚く。


魔導書(グリモワール)一冊、白金貨六枚でーす♪」


 エメラの色っぽい声。しかし、言ってる金額がなかなかエゲツない。

「六百万円の本でーす♪」と言われてる小市民たちは、金額の高さに恐れおののくだろう。


「こ、こんな安っぽい作りの店に何故こんなものが!?」


 こんな事言われても一々目くじらを立てない。

 だって、正にその通りと言いたくなるからだ。

 出来ればショーケースとか作りたいものだ。店の拡張もしたいけど、この町ではそこまで大きな店も無意味だ。そもそもの人口がリーガルとは違って少ないからな。


「【隠密ブーツ】に【吸魔のダガー】。それに【フレイムダガー】もある。むぅ、どのマジックアイテムも安い……!」


 商人たちはやはりマジックアイテムを見るようだな。


「【修理(リペア)】に【錬金術(アルケミー)】、それに【付与(エンチャント)】も!? おいミック、一体どうなってる!?」


 ふむ、この町で俺をミックなんて呼ぶヤツは一人しかいない。

 俺は振り返りながら言う。


「安くしとくぞ、クマックス」

「マックスだよ!」


 何だ、まだ改名してなかったのか。


「久しぶりだな、マックス」


 ――マックス。レティシア誘拐事件で俺が捕まった際、親身になって話を聞いてくれた、この町の警備主任である。相変わらずの剛毛に、クマみたいな容姿だ。


「商人になったのは知ってたが、まさかこんなに早く店を建てるとは思わなかったぞ」

「誰がどんな商売するかわからないからな。先んじて出来るならやるしかないだろう」

「はははは、正に商人の考え方だな」

「何か欲しいのか? マックスだったら都合つけるぞ?」

「おぉ! 本当か!?」


 現金なヤツ。とも思ったが、安く売ってくれると聞いたら、大抵はこれくらい喜ぶよな。

 さて、マックスは一体何を?


「それで、何が欲しいんだよ?」

「じ、実はな……」

「何だよ? その身体でもじもじすんなよ」

「エ、エメラさんを紹介してくれないだろうかっ!?」


 どう見たらあの美人妻が商品に見えるのだろう、このクマは?

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