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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

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その735 緊急会議

「第三十九回! ミナジリ会議ぃいいいい!! いぇいっ!!」

「「いぇーい!!」」


 とはいえ、今回集まったのは、そう多くなかった。

 俺、ナタリー、ジェイル、ロレッソ、エメラ、そして扉前に控えるシュバイツ(シュッツ)だけである。

 カミナは忙しく、リィたんはシェルフの依頼消化、初のレミリア正式参加にしたかったが、やはりオリハルコン集めが最優先事項である。クロードもクロード新聞の締め切りが近いし、ここまで余裕のない会議開催は初めてかもしれない。


「緊急会議とは珍しいですね、何か問題が?」


 シュバイツ(シュッツ)が聞く。


「間もなく、俺の……お嫁さん候補がやってくる」

「っどーゆーことよっっ!」


 食い気味で牙を向いたナタリーに、俺は悔い気味である。


「ミケラルドさん、詳しく聞かせてください」


 エメラが怖くて目を合わせられない。


「ロ、ロレッソ君……説明を頼む……」

「はい」


 怖かったのでロレッソに全部任せた。

 ロレッソはこれまでの経緯を話し、ゲバンの娘、【オリヴィエ】がミナジリ共和国に向かっている事を話した。


「なぁにがお姫様よ! 私が追い返してあげる!」

「ナタリーさん、話聞いてました?」

「聞いてたわよ!」


 聞いてソレだとしたら、ちょっと怖いミケラルド君である。

 いつもよりナタリーの八重歯が三倍くらい長く見えるけど、あの子吸血鬼だったっけ?


「シュッツ、昨日出発って事は、いつごろリーガルに?」


 聞くと、彼は目を伏せて言った。


「リーガル国の国境までだと、馬の足を考えれば遅くとも明後日。三日後にはミナジリ共和国に着くかと」

「マジかぁ……」


 俺が頭を抱えていると、珍しくジェイルが「ふむ」と声を零した。


「ジェイルさん、何か名案でもありますか?」

「今ならばまだ法王国領だろう」


 出発して間もないし――、


「まぁそうでしょうね」

「何者かがそのオリヴィエという小娘を誘拐するというのはどうだろうか?」

「くっ……中々名案だけどリスキー過ぎる」


 そのままホーリーキャッスルに返還したとしても、ただ時間稼ぎをするだけだ。


「そうか、では暗さ――」

「――おぉおおっと! ジェイルさん、それはなしです!」


 シュッツもロレッソも冷や汗いっぱいである。

 ミナジリの創設メンバーが、法王クルスの血統を暗殺――なんて事を口にしたら、問題も問題、大問題である。

 まぁ、ここから外に漏れないから言っただけだろうけど……気になるな。


「ふむ、難しいな」

「でも、ジェイルさんがそういう事を言うのって珍しいですね。何か思うところでも?」


 聞くと、ジェイルは思いがけない事を言ったのだ。


「弱者なりともミックを追い詰める一手を打てる相手だ。後に大きな障害となり得るならば、今の内に仕留め、ミックを守るのが私の仕事だ」

「ジェイルさん……」

「なーんでミックが頬を赤くしてんのよっ!」


 ナタリーのツッコミは今日も全開である。


「コホン、ロレッソ、何かある?」

「そうですね、クルス様には申し訳ありませんが、ミナジリ共和国としては、オリヴィエ殿を受け入れた方が得策です」

「だねぇ……」


 頭が沈む俺。


「というより、オリヴィエ殿の訪問を突っぱねる事自体がナンセンスです。法王国と敵対しうる行動は世界的に見てもあり得ません」

「ほんとだねぇ……」


 会議室のテーブルに突っ伏し、力尽きている俺を横に、ナタリーが言う。


「じゃあ、そのオリなんとかっていう小娘を迎え入れなきゃいけないって事っ!?」

「オリヴィエ」

「そう言ったじゃない」


 そうは聞こえなかったな?


「むぅ……」


 老練なうなり声を発したナタリー。

 そこで、エメラが小さく手を挙げる。


「どうしました、エメラさん?」

「オリヴィエ様がミナジリ共和国にいらっしゃれば、法王国でのゲバン様の評価が上がる。まずはここに焦点を当ててみてはいかがでしょう」


 俺とロレッソが見合う。


「「というと?」」


 二人で聞き、エメラが答える。


「ゲバン様の評価を上げないようにオリヴィエ様を迎え入れられませんか?」


 エメラが言いロレッソが要約する。


「つまり、ゲバン殿の令嬢であるオリヴィエ殿に何らかの過失を起こさせると」

「確かに、そうすれば父親のゲバンだけを糾弾する事が出来る……か」


 でもなぁ、右も左もわからない子供に過失を起こさせるってのはちょっと気が引けるっていうか。


「ダメよ」


 俺たちの案を一蹴したのは、ナタリーだった。


「ナタリー……?」


 そう零すと、ナタリーは言った。


「右も左もわからない子供にそういう事しちゃうのは……ダメ」


 同い年じゃありませんでしたっけ?

 なんて言うと怒られそうだから、賢い俺は黙っているのだ。


「それに、お母さんはそうは言ってない、でしょ?」


 ナタリーが言うと、エメラは微笑んで頷いた。


「え、エメラさん。それ以外にゲバンだけの評価を落とす方法なんてあるんですか?」


 俺が聞くと、エメラはいつもの調子でハキハキと言う。


「オリヴィエ様を懐柔してしまうのはどうでしょうっ?」


 言ってる事は確かにわかる。

 だけど、父親を裏切るような懐柔って、どんな懐柔なんだろう。

次回:「その736 オリヴィエ」

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