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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第四部

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732/917

その729 内政、軍備、外交、調略1

「ガンドフはどうかな?」


 俺はそう聞くと、珍しくも口を結んでしまうロレッソ君。


「あれ? 良い返事(、、、、)もらえなかった?」

「えぇ、拒否されてしまいました」

「あちゃー……何でまた?」

「どうやら法王国から牽制があったようです」

「相手は?」

「勿論、一番にミケラルド様の頭に挙がった名前です」

「【ゲバン・ライズ・バーリントン】」

「殿」

「殿ね」

「ミケラルド様がガンドフの高名な鍛冶士【ガイアス】殿と共に、新たな【勇者の剣】を作る事、先の大暴走(スタンピード)で成長した聖女アリス様をガンドフに招く事、当初はこれに賛成していたウェイド王ですが、それを議題に上げたところ、横槍が入りました」

「でも、どうやって? それを防げるとは思えないけどな?」

「【聖騎士学校】ですよ」

「わー……」


 呆れ顔を浮かべる俺に、ロレッソが続ける。


「どうやら、法王陛下を守るためと称し、【ゲバン】殿は軍部統括のために新設された【将軍】の任に就いたようです」

「聖騎士学校は聖騎士団の管轄。よくそんな重要な位置(ポスト)に就けたな……クルス殿は何をしてたんだ?」


 言うと、ロレッソのジト目がまた俺を襲う。


大暴走(スタンピード)により、法王陛下が怪我をし、運ばれた先はホーリーキャッスル。そこは【ゲバン】殿管轄の城内施設だったそうです」

「おいおい、もしかしてクルス殿の回復を……?」

「遅らせたでしょうね」

「まじか……俺のせいじゃん……」

「そんな事あります」

「いや庇ってよ」

「何事も限界があるかと」


 わざとらしく深々と頭を下げるロレッソ。


「それじゃ、その間にここぞとばかりに地盤を固めたのか。その様子だとアイビス殿も施設の中には入れてもらえなかったんだろう」

「元聖女とはいえ皇后陛下の回復魔法はゲバン殿にとって厄介でしょうから」

「自分の管轄なら回復担当も思うままってか? まじかー、【テレフォン】会談の時はそんな事言ってなかったけどなぁ……ん? 今日はジト目が多いね、ロレッソ君?」

「言える訳がないでしょう」

「はい、すみません」


 確かに、俺のせいでホーリーキャッスルの勢力図が変わってしまった、なんて二人は言えないか。

 それだけに、あの二人が俺に気を遣っているという事もわかる。

 今度、菓子折でも持って行こうか? いや、でも法王国出禁くらってるようなもんだしなぁ俺……。


「法王国は法王国ですから、今は気に掛けてられません」

「まぁ、そうだよな。これ以上関わるのも問題だよなー……それで、ウェイド王は何だって?」

「『現状、聖女アリスは法王国聖騎士団の管理下にあるため、招集するにも聖騎士団の許可が必要だ。それも、ライゼン団長ではなく、その上にいる将軍ゲバン殿を何とかする必要がある。それが出来なくば、ガンドフが協力する事は出来ない』と、心苦しそうに仰っておりました」

「よかった、ウェイド王自身は前向きなんだね」

「でなければ、ガンドフの王の意味がありません」

「お、珍しく言葉が強いじゃん」

「ドワーフ国家のガンドフは魔界に一番近い国。出来るだけ早く、魔族に対抗しうる抑止力を用意したいのは当然です」

「それを妨害している法王国……か」

「たとえ、ゲバン殿が首を横に振っているだけだとしても、ガンドフの国民にはそう見えてしまいますね」

軋轢(あつれき)出来ちゃうじゃん」

「とはいえ、我々が出来る事は――」

「――【クロード新聞】」

「まぁ、それくらいしか出来ないでしょう。気をつけて頂きたいのがアリス様ですね」

「あー……確かに」


 アリスなら、これを知ったらぷんぷん状態で単身ガンドフに向かいそうだ。肩で風を切って大股で向かうだろうな。

 そして、魔族に誘拐される。


「わかった、その点も考慮してクロード新聞に載せるよう、クロードさんに頼んでくれ」

「かしこまりました。それと、シェルフと冒険者ギルドより感謝状が届いております」

「冒険者ギルドはわかるけど、シェルフってのは?」

「冒険者ギルドがシェルフのダンジョンを正式にSSS(トリプル)相当であると認めました。【聖域】の管理は希望通り冒険者ギルド指導の下、シェルフが行えるとの事です。ミケラルド様の数多くの心配りに敬意と感謝を表して、との事です」

「へー、頑張った甲斐があるね。冒険者ギルドの感謝状ってのはダンジョンの事?」

「いえ、大暴走(スタンピード)の事です」


 目を丸くする俺に、ロレッソがくすりと笑う。

 おいおい、法王国で起きた問題の感謝をミナジリ共和国(こっち)にするとか、まずいんじゃないか?


「どうやら、冒険者ギルドは法王国を敵にしてでもミケラルド様に付くようです」

「絶対中立はどこ行った?」

「中立であるからこそ、貢献してくれた国家、個人に対して感謝を述べているのですよ」

「ものは言いようだねぇ……」

「こちら、クロード新聞に載せても?」

「え? 『冒険者ギルドから感謝状もらったぜ!』って広めるの?」

「ミナジリ共和国の正当性を主張する良い機会です。勿論、シェルフからの感謝状についても載せるべきです」

「ん~……ローディ族長やアーダイン殿に確認とった方がいいんじゃない?」

「そんな必要はありませんよ。感謝状(これ)がその許可証のようなものです」

「え? 好きに使えって言ってるって事?」

「……とても【テレフォン】を発明した方の台詞ではありませんね」


 何故、こんなところで【テレフォン】が出てくるんだ?


「ん? ……あ、そういう事か」

「そういう事です。本来であれば、礼は【テレフォン】を使えばいいだけ。しかし、こうして感謝状をわざわざ送って来たという事は、その政治利用も視野に入れているはず」

「おー……孤立無援じゃないってのはありがたいね」

「もう少し、ご自分がなさった事を誇ってもいいとは思うのですが……まぁ、これもミケラルド様、という事でしょう」


 なんか、褒められているのか、(けな)されているのかわからない言い回しである。

次回:「その730 内政、軍備、外交、調略2」

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