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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その72 ダンジョンマスター

2019/6/7 本日二話目の更新です。ご注意ください。

 最終階層に降り、視界に映ったのはこれまでの人工的なダンジョンではなく、岩肌がゴツゴツとした薄暗い洞窟の奥底のような場所だった。

 正面には細い川のような水路があり、右から左に水が流れて行く。岩の隙間から零れ、左にながれ、小さな橋をくぐり、水は岩壁に吸い込まれて行く。

 おそらく小さな水の通り道があるのだろう。

【探知】にモンスターの反応はない。ダンジョンの最奥には遠目ながらも魔導書(グリモワール)が見える。しかし、岩の台座に立て掛けられた魔導書(グリモワール)以外、目立ったものは見えないのだ。モンスターはどこだ?

 依然、【探知】に反応はない。【嗅覚】にも反応がないところを見ると――罠か。だが、【罠感知】の特殊能力には反応がない。なら【危険察知】の方だろう。

 俺が歩を一歩進めると、それは反応した。

 もう一歩足を進めると、更に反応した。


「なるほどね。この距離なら、あの橋を渡った段階で、モンスターの強制出現。そしておそらく脱出の階段も塞がれるんだろうな」


 ならこちらも警戒度を上げて対応するだけだ。

 耐性系の能力を発動し、あらゆる局面に対応出来るように準備した俺は、じりじりと橋に向かう。ほんの数歩で渡れるような小さな橋。それを渡りきった瞬間、ソレは現れた。

【探知】が知らせる一瞬の反応。それは、俺がいる場所だった。

【嗅覚】が知らせる出現位置。しかし、それは同じ場所ではなかった。


「上か!」


 見上げると、頭上から降ってきた巨大な足。

 踏み潰されそうになる一瞬、俺は側面に回避する。と同時に、階段への通路が塞がれる。


「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」


 身体の奥底まで響く威嚇の叫び声。岩壁はピシピシと音を上げ、叫び声に悲鳴をあげている。俺の回避先を睨むは巨大な赤き一つ目。茶肌で筋骨隆々の巨躯。数本の丸太を束ねたかのようなぶっとい腕の先には、更に太い棍棒。


「サイクロプスか……!」


 巨大な人型の一つ目モンスター。

 一つ目とはいえ、眼球が顔半分以上を占めている。死角はそこまで無さそうだ。


「ガァ!」


 攻撃は単調だが、速度が異常。素の状態なら避けるのに一苦労しそうだ。

 棍棒で地面を弾き、岩飛礫を浴びせる。フリーの左手で岩壁の岩をはぎ取り投げてくる。

 棍棒攻撃後の自分の隙についても考えている。流石人型。知恵は働くようだ。

 これから身内の誰が潜るかわからない。相手の行動パターンは、覚えておくに越したことはない。

 といっても、


「ガァ……ガァ……ガァ……ガァ……」


 この辺が限界みたいだな。


「よっと」


 ふらふらになったサイクロプスを横切りながら首を刈ると、ソレは静かに大地に落ちて行った。

 ついでに打刀(うちがたな)に付着した血をぺろり。


「【打撃耐性】と【視野拡張】か。中々いいね。さて、台座の裏に宝箱発見。中身は……残念【マナポーション改】か。ま、目的の魔導書(グリモワール)もゲット出来たし、初回としては上々だろう」


 台座の奥にある転移装置に乗った俺は、満足げな顔で、外に戻った。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「ミケラルド様!」


 夜、冒険者ギルドに戻ると、出入り口の前でニコルが俺を迎えた。

 はて? 一体何でニコルはこんなところで立っているのだろう。


「もうっ! いつまで経っても戻って来られないから心配したんですよ!」


 ニコルがここまで怒気を見せるとは意外だった。

 さっきは落ち着いて対応してたし、普段はおっとりしている印象もあるしな。


「あぁ、すみません。でも、依頼は受けてなかったはずですけど?」

「それでも、ミケラルド様のお身体はもうご自分一人のものではないと、ご自覚くださいませっ」


 あぁ、そういえばそうか。

 ギルドマスターのディックが言ってたな。大きな問題が起きた時頼りたいという感じの話を。ニコルはあの時の事を言ってるのだ。冒険者とはいえ、一目置かれている。だからこそ、いざ頼りたい時に死んでると困る。そういう話だ。


「それはすみませんでした。今日は調子に乗ってしまいました。ハハハハ」

「調子に乗った……?」

「やっぱり二十階層って大変ですね。一周するのに三十分掛かっちゃって、マッキリーのダンジョンとは大違い。今日は様子見だった分も勿論あると思うんですけど、やっぱり慣れないとダメですね」

「三十分?」

「あ、そうだ。とりあえず魔導書(グリモワール)は二十冊あるんですけど、ギルドでは今何冊欲しいんです?」

「ん~?」


 ニコルは首を傾げるばかりで、それ以外の反応をしてくれない。

 俺の説明が下手なのか、ニコルの理解が悪いのかはわからないが、ニコルが俺の説明を呑み込んでくれるまで、何故か三十分以上掛かった。おかしい。後一回ダンジョン潜れただろうに。


「こ、こほんっ。えっと、少々ミケラルド様を過小評価していたみたいです」

「過大評価よりマシですよ」

「そ、それでその……魔導書(グリモワール)を二冊お譲り頂く事は難しいでしょうか」

「勿論です。けど、あんまり依頼ってないんですね」

「ありがとうございます。まぁ、モノがモノだけに……としか」

「まぁ確かにそうですね」

魔導書(グリモワール)二冊で、白金貨十枚です」

「ありがとうございます。あ、ちょっと質問いいですか?」

「個人的な事以外でしたら」


 意外にガードが固いんだな、ニコルって。

 まぁこれだけの美人だ。口説かれ慣れてるって事だろう。


「えっと、俺はこの魔導書(グリモワール)を商品としてミケラルド商店で売るつもりです」


 すると、ニコルの顔が不安気になる。

 まぁ、過去の流通独占のアレがあるし、そう警戒するのもわかるけどな。


「もちろん、通常の価格は冒険者ギルドの買い取りより高く設定するので、今度はモメないとは思うんですけど、それ以外にも手はあるんじゃないかなーって思って」

「というと?」

「当然、予め魔法を魔導書(グリモワール)に込めてから販売するという手段です」


 全属性の魔法が使えるメリット。それがコレだ。

いつも読んで頂きありがとうございます。


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