表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

728/917

◆その725 大暴走14

 大暴走(スタンピード)の前日、ミケラルドはシェルフのダンジョンの最下層で、龍族の長――霊龍と会った。

 そのダンジョン報酬。

 三つの内、ミケラルドから霊龍へ投げかけた最後の質問。


 ――俺の中には一体何がいるんだ?


 霊龍からの返答は、単純明快だった。


「俺の中には何もいない。なるほど、だから霊龍はあの時あんなに迷っていたのか……!」

「ソウイウ事ダ。オ前ノ中ニ私ガイルノデハナイ」

お前の中に(、、、、、)……俺がいる(、、、、)


 ルークがそう言うと、ミケラルドがニヤリと笑う。


「ヨウヤク気付イタカ……異界ノ木偶(デク)ガ……!」

「木偶呼ばわりされるなんて心外だな……」

「意外ニ冷静ジャナイカ……イヤ?」


 言いながらミケラルドがくすりと笑った。


「ポーカーフェイストイウヤツカ……ワカルゾ? オ前ノ身体ガ教エテクレル。不安デ不安デ仕方ナイトナ。自分ガ世界ニトッテ、トルニ足ラナイ存在ダト気付キ、恐怖ニ(オノノ)イテイルトナァ?」

「……俺の顔で薄気味悪い笑みを浮かるなよ。気持ち悪い」

「気持チ悪イ? ドノ(クチ)ガ言ウ? 私ニトッテ何ヨリモ気持チ悪イノガオ前ダ」

「は?」

「世界ヲ手ニ入レラレルダケノ能力(チカラ)ガアリ、何故ソレヲ行使シナイ?」


 ルークが首を傾げる。


「どういう事だ?」

「全世界ノ人間、魔族、モンスターヲ問ワズ、ソノ血ヲ得ヨウトセズ、怠惰(タイダ)ニ時ヲ(ムサボ)ル。何故勇者ノ血ヲ得ヨウトシナイ? 何故聖女ノ血ヲ得ヨウトシナイ? 何故法王ノ血ヲ得ヨウトシナイ? オ前ガソノ気ニナレバ、世界ノ統一(トウイツ)一瞬(イッシュン)ダトイウノニ」

「黙れ! 世界は俺の物じゃないんだよ!」


 そうルークが声を荒げるも、ミケラルドは嬉しそうに反応した。


「ソウ、ソレニハ私モ同意ダ」

「……どういう事だ?」

「世界ハ……コノ私ノ物ダカラナ……!」


 瞬間、強力な闇の魔力が吹き荒れる。

 ミケラルドのものではない魔力は暗雲を呼び、ルークは一瞬で呼吸を遮られた。


「っ! カハッ……!?」

「カカカ、分裂体ヲ人間ニ寄セ過ギタナ……! ヌン!」

「ガッ!?」


 正面にあった魔力が弾け、北に向かって吹き飛ばされるルーク。

 未だ止まぬモンスターの波を止めるため、北ではミナジリ共和国軍が、土で出来た城塞の上から魔法攻撃を続けていた。

 そんな中、上空からルークが落ちてきた。

 簡易設置された軍幕の下で、ナタリーが目を丸くする。

 大地を穿つ程の衝撃。大きなクレーターの下に駆けつけたナタリーが叫ぶ。


「ルーク!? 何してるのっ!?」

「ちょっとピンチかも……」


 苦悶の表情を浮かべるルークを見て、ナタリーはルークが落ちて来た方を見上げた。


「……ミック?」


 しかし、ナタリーはその様子を見てすぐに(かぶり)を振った。


「ううん、あれは――」

「――ミケラルドさんじゃありません!」

「ミックじゃない!」


 被った声は、ナタリー、そして聖女アリスの声。

 クレーターに降り、ルークを支えるアリス。


「あれ、アリスさん早いですね? 成長したんじゃないです?」

「質問してる場合ですか!? 何ですか、アレ!?」

「私の黒歴史みたいなものですよ」


 ミケラルドを見上げ、冗談を言うルークだったが、アリスは何も返せずにいた。

 何故なら、ルークには既に力などなかったのだから。

 全体重を預けなければ立てないルークに、アリスは何も言えなかったのだ。


 上空では、世界から魔力を集めるミケラルドがニヤリと笑う。


「イイゾ、ミケラルドノ肉体ガ我ガ魔力ニ近付イタガ故ニ、コレダケノ自由ヲ得タ」


 ルークを見下ろすミケラルドが呟く。


「ソノ点ニ関シテハ感謝シヨウ」


 悪魔的な笑みを浮かべるミケラルドは、更に魔力を集め始めた。

 そしてそれは――、


「嘘っ!?」


 ナタリーは周囲を見渡し、仲間から漏れ出る魔力を見る。

 それを見たルークがナタリーに言う。


「魔力の弱い者から吸ってるみたいだね」

「それじゃ北も危ないって事じゃない! どうしようルーク……!」


 低ランクの冒険者や騎士や義勇軍、彼らの魔力が徐々に減っていく。次第にしゃがみ、倒れる者までいる中、ルークたちに成す術はなかった。


「「私たちに任せろ」」


 三人がその声に振り返ると、異変に気付きやってきた三人の魔法使いがいた。


「法王陛下! それに、リルハさんにヒルダさん……」


 アリスが驚くも、それに構っている場合ではなかった。

 クルスたちは見合い一度頷くと、北のミナジリ共和国軍上空に魔力の結界を作って見せた。

 それと同時に、北から魔力が吸い取られる事はなくなったのだ。

 それを見たミケラルド。


「チッ、邪魔ナ奴ラダ」


 三人に対して向けられた手から放出される、高密度の魔力砲。


「ぐぁ!?」

「「あっ!?」」


 結界は一瞬にして砕け、法王クルス、リルハ、ヒルダが吹き飛ばされる。


(トド)メダ……」


 ミケラルドが追撃を放とうとした瞬間、


「グッ!?」


 突如、ミケラルドの動きが拘束された。

 両手含む胴周りに見える闇の鎖。その闇はミケラルドの背後に続いていた。

 そこにいたのは、豊かで長い白髭と髪、ウィザードハットを被った世捨て人風の老人だった。


「あれは……!」


 ルークが零した言葉と、


「オ、オ前ハ……!?」


 ミケラルドの言葉。

 そして老人は言う。


「何も言うなよ? こっちでは今、古の賢者(、、、、)って事になってるんだからな」


 大暴走(スタンピード)最中(さなか)、ミケラルドの謎が一堂に会した瞬間だった。

次回:「◆その726 大暴走15」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
[一言] まさかですが、時を遡ったミックって事は無いですかね? ふとそんな気がしたもんで。
[一言] 急展開?夢落ちと思ったら一話飛ばして読んでました。 何者なんだろう?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ