表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

723/917

◆その720 大暴走9

本日二話目の投稿ですご注意ください。


 法王国西。


「【大津波】」

「【スパークウェイブ】」


 全てを洗い流すリィたんの大魔法【大津波】。

 雷龍(シュリ)は、その大津波に合わせるように雷の大波【スパークウェイブ】を放った。

 大波に呑み込まれると同時に、モンスターが焦げ、蒸発していく。

 二人が戦った場合、その相性は悪くとも、二人が共闘した場合、その相性は世界を脅かす程と言えた。


「ははは、何度見ても(、、、、、)凄まじいっ!」


 零れて法王国に進撃するモンスターを切り伏せながら、オルグが言う。

 だが、それも時間も問題だった。


「リィたん」

「何だ?」

「残り何発だ?」

「【魔力タンクちゃん】を使っても三発が限界だな」

「じゃあ、我も後三発だ」

「ふふふ、無理をするな。その魔法、消費魔力は【大津波】程なくとも、回数が回数だ。いくら雷龍とはいえ無理があるだろう」

「だから三発だと言っている。残りの魔力はお前を担ぐ時のためにとっておいてやる」

「なっ! 私だって逃げる時の魔力くらい残している!」


 ムキになって怒るリィたんだが、早くも大津波の射程範囲外からモンスターの波が押し寄せる。


「まったく、引き波にしては大きすぎじゃないか?」


 雷龍(シュリ)が言うと、


「打ち止めになればマナポーション片手に体力勝負だな」


 リィたんがハルバードを担いで返す。


「……我の分はないのか?」


 そのハルバードを見て雷龍(シュリ)が言う。


「何だ、欲しいのか?」

「付与されている武器があれば有用であろう」


 仏頂面をした雷龍(シュリ)が言うと、ニヤリと笑ったリィたんが闇空間に手を突っ込む。


「ほら、私の予備だ。お前の大好きな水の付与が施されている」


 ハルバードを投げて言ったリィたん。

 雷龍(シュリ)が受け取り、自分が帯電している紫電をそのハルバードに流す。


「なるほど、悪くない」

「これ程相性がいいとなれば、私は雷付与の武器を強請(ねだ)った方がいいかもしれないな」

「強請る? 誰にだ?」

「それは勿論、我が(あるじ)にだ」


 リィたんにそう言われると、雷龍(シュリ)は目を丸くし、そして大きく笑った。


「ぷっ、はっはっはっはっは! 龍族が()(へつら)うと言うのかっ!?」

「わかってないな、雷龍(シュリ)

「何?」

「龍族の願いすら叶えられる者に仕えていると、まだわからないつもりか?」


 薄い笑みを浮かべるリィたんを見て、雷龍(シュリ)が黙ってしまう。

 言葉に行き詰った雷龍(シュリ)は、話題を逸らすようにリィたんの胸元の首飾りに視線を移して言った。


「その首飾り」

「【魔力タンクちゃん】の事か?」

「そのふざけたネーミングはどうでもいい。我との戦闘でミケラルドがしていた物とは違うようだな?」

「あれはオリハルコン製だったな。これは違う、地龍(テルース)の鱗を使っているからな。多分こちらの方が――」

「――違う」


 リィたんの言葉を雷龍(シュリ)が止める。


「……何?」

「あれはオリハルコン製だが、何故かその首飾りより強い魔力を備蓄していた。これがどういう事かわかるか?」

「……ミックの首飾り(アレ)は、ただのアーティファクトではなかった?」


 徐々に顔に驚きを見せるリィたん。


「アーティファクトには込められるだけの魔力、その強さに限度がある。いかに神の鉱石と呼ばれるオリハルコンだろうと強度に限度があるように、アーティファクトとしての力にも限度がある。しかし、あの首飾りはそんな常識を覆すだけの魔力を秘めていた。龍族の鱗という最上の素材を超える程のな……」

「っ! まさかっ!?」


 リィたんが驚き、雷龍(シュリ)の言おうとしていた何かに気付くも、モンスターたちがその思考を止めた。


「さて、後三発だったな」

「まったく、休憩くらいさせてくれてもいいのだがな」


 呆れ、嘆くリィたんが苦笑し、極大の魔力を手に掲げる。


「【大津波】」

「【スパークウェイブ】」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 法王国南の空では、ようやくミケラルドと暗部が火竜を狩りつくした後だった。


「ん~、火竜の固有能力【竜炎】は中々いいな。火魔法のヒートアップみたいに肉体の底上げ能力じゃん。それにあいつらも……」


 ミケラルドが見下ろす先では、【徒党の親玉】の効果と、これまでの鍛錬のおかげもあり、暗部の皆は自分でも驚くような成果を上げていた。


「勝てる! 今ならあのイヅナの爺にも勝てる気がするよっ!!」

「気がするだけだぞ、ナガレー」

「ひひひ、面白い。魔力すら底上げされるのか」

「メディックのその笑い方はいつになったら直るんだー?」

「はははは! 全盛期のようなの力が溢れてくるぞ、化け物!」

「いいからモンスターを倒せ、サブロウ」

「頭部破壊、心音停止……次!」

「もうちょっとアバウトにやってくれないとモンスターがこぼれる(、、、、)んだけど、カンザス?」

「なるほど、確かにこの戦力であれば南は十分かもしれませんね。ところでボスは何もしないので?」

「ホネスティ、こぼれたモンスターを全部俺が(さら)ってるの見えないかな?」

「首、頭! あぁ!? も、申し訳ございません、ミケラルド様っ! そちらにモンスターがっ!?」

「いいのいいの。ノエルが真面目にやってるのは知ってるから」

「ハァアアアアアアッ!! 見ろ、この力を! 今、この場限りをおいて、私の力はZ区分(ゼットくぶん)だっ!!」

「ラジーンに『Z区分(ゼットくぶん)Z区分(ゼットくぶん)でも、幕下(まくした)以下』って言ったら泣いちゃうかな?」


 暗部が強力な攻撃部隊となり、南のモンスターを防ぎ、更には、ミケラルドが後方から全員への【聖加護】含む支援、回復、取りこぼしモンスターの排除を行っている。

 だが……だがそれでも――、


(……まずいな)


 ミケラルドだけが、大暴走を抑えられる限界を理解していた。

 ミナジリ共和国軍が配する北はともかく、西、東、そして南には……これ以上の波を抑えられる魔力は残っていなかったのだ。

次回:「◆その721 大暴走10」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ