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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

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◆その718 大暴走7

本日三話目の投稿です。ご注意ください。

「ちぃ!」


 ジェイルが現れた事により、イヅナの動きが更に鋭さを増した。まるでジェイルに今の自分を見せつけるかのように。

 ジェイルもまたイヅナに自身の背を見せつけるように動いた。

 魔人は両者の巧みな剣術に翻弄され、攻めきれずにいた。

 これをポカンと見ていた剣鬼オベイルは、その雑念を追い払うように(かぶり)を振る。


「ちっ、幸せな野郎共だ。おら、エメリー、レミリア、それにアリス。あっちだあっち」


 すぐに他のモンスターに三人を当てる指示を出したのだ。


「え、で、でも……」


 エメリーが聞くも、


「でもじゃねぇんだよ。今の俺たちじゃ邪魔になるだけ。だったら他のモンスター倒して別の糧とした方がいいだろう、が!」

「え?」


 言いながら、オベイルがエメリーをモンスターの大波に投げ込む。


「あぁああああああっ!?」


 わたわたとしながらもモンスターを倒すエメリー。

 それを見ていたレミリアは、オベイルの手から逃げようとしていた。

 しかし――、


「なっ!?」

「お前はあっちなっ! おらよ!」


 まるで物のようにポイと投げられた剣聖は、


「せ、聖剣! 光翼っ!」


 降下と共に十数のモンスターを蹴散らした。


「へっ、やれば出来るじゃねぇか」


 荒い鼻息を吐いたオベイルが、次に見たのは聖女アリス。


「ひっ!」


 その目は、まるで鬼を見る少女のよう。


「あ? 俺の後ろにゃモンスターなんていねぇだろうに」

「そ、そういう訳じゃないというかその通りというか……」

「お前はここだ」

「へ? な、投げないんですか?」

「そんな酷ぇ事するヤツがいるんだな」

「は、はははは……」

「ラッツたちの援護だ。それに、あの二人もな」


 未だ魔人と斬り結ぶイヅナとジェイルを指差し、オベイルが言う。


「え、でも……」

「いいんだよ。あのレベルの戦いの中、支援魔法を掛けられるヤツは、近くにアリスしかいねぇ。ま、適材適所ってやつだ」

「あの、オベイルさんはっ!?」

「言ったろ? 適材適所だってな!」


 そう言うと、オベイルは身を低くし、波を飛び越えるかのような大跳躍を見せた。

 飛び込んだ先は――魔の一番色濃い場所。

 オベイルは凶悪なモンスターの前に立ち塞がり、後方に流れぬようその身を盾としたのだ。


「もう、ほんと無茶苦茶な人です……」


 言いながら、アリスはイヅナとジェイルに視線を戻す。

 二人の技術、力があってようやく魔人と対等。

 だが、それは端からそう見えるだけ。

 オベイルの目は勿論、アリスの目にも、その均衡が崩れつつあるのがわかったのだ。


(イヅナさんの魔力は剣神化の影響で徐々に低下し続けている。ジェイルさんの魔力もそれを補うように動いてる。傷がない訳じゃない。だから、私がそれを回復し、サポートする!)


 掲げた杖。


「ヒール!」


 最初に行ったのはイヅナへの回復。


「ちっ、生意気な小娘め……!」


 魔人が睨むも、ジェイルがその敵意すら遮る。


「ダークヒール!」


 アリスが次に行ったのは、ジェイルへの回復。


「聖女がダークヒールだと!? ふざけた事をっ!」


 魔人が言うも、それを否定したのはアリスではなかった。


「わかってないな。時代は常に進んでいるのだ。お主は時代に取り残されているのではないか?」


 イヅナが言い、


「あれが聖女というものだ。魔族の私にそれが理解出来て、人間のお前にそれすら理解出来ないとは、面白いものだな」


 ジェイルが言った。


「嘗めるな三流剣士風情が!」

「「っ!?」」


 これまでにない魔人の攻撃。その凄まじい威力に弾き飛ばされる二人。

 着地し、その衝撃を堪えるも、受けた剣に残った魔力を見て、イヅナとジェイルが見合う。


「これは……!」

「聖なる魔力だと……?」


 驚きを見せる二人と怒りを露わにする魔人。


「だからどうしたというのだ……」

「謎解きは後だな」

「あぁ、止めねば止まらぬ。それだけだ」


 イヅナとジェイルが頷くと同時、背後からアリスの支援が届く。


「パワーアップ!」

「ほっほっほ! 良き聖女に育っている」

「ミックが育てているのだ、こうでなくては困る」


 これを見た魔人がアリスを見る。

 鋭い視線にビクンと恐怖を感じたアリスが、咄嗟に杖を構える。

 イヅナ、ジェイルがその視線を塞ぐように動いた。


「させぬと言ってるだろう」

「物忘れが激しいのだろう」

「き、貴様ら……!」

「神剣! 荒鷲(あらわし)!」

「竜剣! 鉤爪(かぎづめ)!」


 大回転したイヅナの猛剣と、空間すら断ち切るジェイルの剛剣。

 これを同時に受け、魔人が苦悶の表情を浮かべる。


「ぐっ! カァアアアアアア!」


 しかし、それは一瞬の出来事だった。

 再び吹き飛ばされる二人。


「ス、スピードアップ!」


 アリスの援護を受けるも、ジェイルの表情は驚きに満ちていた。魔人の異常事態に目を丸くさせるジェイル。


「馬鹿な、【覚醒】だと?」

「攻撃には聖なる魔力、吹き荒れる魔の覚醒……何ともおかしな人間だな」


 ジェイル、イヅナがそう言うと、魔人はアリスを指差して言った。


「まずはお前からだ――フンッ!」


 その速度、凄まじく。

 イヅナ、ジェイルの剣の結界を一瞬にして潜り抜け、魔人の攻撃はアリスを狙う。


((間に合わないっ!))


 イヅナとジェイルが飛び掛かるも、最早(もはや)魔人は届かぬ場所。


「アリスさんっ!」


 その時、後方の援護に徹していたメアリィが叫んだ。

 声と共にアリスに向かって飛んでくるのは、ミケラルドお手製の【反射の円盾(まるたて)】。

 アリスはこれをメアリィの援護と信じた。

 受け取った反射の円盾(まるたて)を掴み、


「魔力を!」


 メアリィの言葉通り、盾に魔力を通したのだ。

 魔人の攻撃の瞬間、盾で攻撃を防いだ瞬間、その魔力はバチンと弾けた。


「っ!」


 アリスは吹き飛ばされたものの、身体に傷はなかった。


「はぁはぁはぁ……」

「くっ! 厄介な盾を!」

「ち、違いますっ!」


 アリスは否定する。


「厄介な人が造った盾です!」


 そう、断言したのだった。

次回:「◆その719 大暴走8」

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― 新着の感想 ―
[一言] >厄介な人が作った盾 道具に罪は無いもんな。道理道理。
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