表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

715/917

◆その712 大暴走1

 ◇◆◇ 法王国 東郊外 ◆◇◆


「ふん! おらぁ!」


 巨大な大剣(バスタードソード)を振り回す男――剣鬼オベイル。千切れ飛ぶモンスターの腕が、宙を舞い、炎龍(ロイス)の方へと向かう。


「あーん、なのだ!」


 パクリとそれを一呑みした炎龍(ロイス)に、顔をヒクつかせるオベイル。


「美味くねぇだろ、そんなもん」

「お菓子よりまずいのだ……」

「食ってから後悔すんじゃ、ねぇよ!」


 (とど)めの一撃を放ち、モンスターの首を刈り飛ばす。

 ピタリと止まり、残心。その剣先の上にトンと乗る男――剣神イヅナ。


「何やってんだよ、爺」


 そう聞くも、イヅナは剣先の高い位置から遠く見つめるばかり。

 仕方なしとオベイルは剣を高く持ち上げる。


「おらよ」

「……うーむ、このようなところまでランクSモンスターがやって来るのは異常な事だ。何か起こったやもしれんな」

「やっぱ冒険者ギルドに報告した方がいいかよ」

「ふむ、それが賢明やもしれんな……ん?」


 剣先の上でイヅナが反転し、ホーリーキャッスルの方を見る。

 そこへやって来たのは――――、


「あれは……」

「あん? 何でミックが聖騎士学校の生徒を引き連れてるんだ?」


 そう、オベイル邸へやって来たのは選抜メンバーを引き連れたミケラルドだった。その顔にはいつもの剽軽さがなく、ただ事ではないと感じ取ったイヅナとオベイルが顔を見合わせる。

 オベイルたちの家へやって来たミケラルドは、外にあるモンスターの死体を見て言う。


「……ゴブリンチャンピオンですか」

「あぁ、単独で現れやがった。それより何があった?」

大暴走(スタンピード)です」

「「っ!?」」


 二人は驚き、顔を見合わせる。

 それからミケラルドは、これまでの経緯を二人に説明した。


「なるほどな、敵が一枚上手だったか」


 顎を揉み、イヅナが生徒たちを見る。


「ボン、ここをデッドラインとしたか」


 頷くミケラルド。


「あぁ? そりゃどういうこってぇ?」


 オベイルが聞くと、ミケラルドは言った。


「東郊外の外れ。ここが法王国に登録している住所の中で一番法王国から離れた地点です」

「そりゃ炎龍(ロイス)を置くからな」

「つまり、ここを守れば法王国に被害は出ないという事です」

「おいミック、そりゃ無茶だぜ。たとえここを守ったとしても、北や南、西はどうするんだ?」

「えぇ、なので東に振り分けられる戦力はこれが限界です」

「いくらなんでも多勢に無勢だぜ。空を飛ぶモンスターもいるし、たとえ爺でも一度に抱えられるモンスターは五匹が限界だ。ガキ共には二匹抱えられるかどうか。その間をすり抜けられたら――」


 オベイルの肩に手を載せ、その言葉を止めたのはイヅナだった。


「そんな事はボンにもわかっている。だが、やるしかないという事だろう?」

「……その通りです。ここが少数精鋭なのはディノ大森林のモンスターは、木龍(クリュー)が止めてくれるからです」

「ほぉ」


 イヅナが得心を顔に浮かべ、オベイルに視線をやる。

 するとオベイルは、壁に掛けた世界地図を指差し言った。


「だとすると、東、北東から波状的に来るモンスターが厄介だな。知らず知らずにここを抜かれている可能性がある」

「細かいモンスターたちは、騎士団が何とかしてくれます」

(うえ)は?」

「パーシバルとグラムスを呼んでます」

「あのツルツル爺とガキんちょか。場合によっては炎龍(ロイス)に動いてもらって……ふん。まぁ、何とかなるんじゃねぇか? アリスの聖加護があればやりやすいしな」


 ちらりとアリスに視線を向けるオベイル。


「が、頑張ります!」


 緊張の面持ちでそう言うも、ミケラルドは首を横に振った。


「頑張ると成果が落ちる場合もあるんですよ」

「うぇ、そうなんですか?」

「えぇ、モンスターを前に緊張するのは仕方ないですが、適度なリラックスを忘れずに」

「わ、わかりました……」


 いつになく真面目なミケラルドを見て、アリスは口を結ぶ。

 地図の西側を指差しオベイルが聞く。


「西は?」

「聖騎士団が動きます。両サイドにリィたんと雷龍(シュリ)

「盤石じゃねぇか。北は?」

「クルス殿に骨を折ってもらい、ミナジリ軍を置けるよう折衝中です。まぁ、何と言われようとも置きますけど」

「はっ、こういう時、魔族国家は有利だな。ジェイルにフェンリル(ワンリル)もいるなら、まぁいけるだろう。で、南は? あっちのモンスターは(つえ)ぇぞって……は?」


 オベイルがピタリと止まる。

 何故なら、自らを指差し、それに答えていたのがミケラルドだったからである。


「一人かよ!?」

「はははは、そんな訳ないじゃないですか。ちゃんと私兵を使いますよ」

「私兵って何だよ、私兵って」

「まぁ私の場合、一人で動いた方が守り易いってのもありますけどね」

「……確かに、お前の魔力にさらされて動けるようなヤツのが稀だしな」

「誉め言葉として受け取っておきます」


 手をヒラヒラさせたミケラルドが扉に向かう。


「換えの武具は外に置いておきます。傷んだら好きに使ってください」


 そう言いながら出て行くミケラルド。

 外で宙にふわりと浮かび上がった。

 ミケラルドを止める三人の乙女――、


「「ミケラルドさんっ!」」


 アリス、エメリー、メアリィ。


 ミケラルドが振り向くと、


「ミケラルドさんも……リラックスですからね!」


 アリスが心配そうに言い、


「こっちが終わったら応援に行きますっ!」


 エメリーが笑って言い、


「ご武運を……」


 メアリィは祈るように言った。

 くすりと笑ったミケラルドは、三人の乙女に、生徒たちに手を振り、南の空へと向かうのだった。

次回:「◆その713 大暴走2」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
[気になる点] なんか戦力ガク落ちのミナジリ本国の方が心配なんだが
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ