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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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71/917

その70 首都リーガルのダンジョン

2019/6/6 本日三話目の更新です。ご注意ください。

「「父上!」」

「あなた!」

「おぉ! リンダ、ラファエロ、レティシア! ゼフ、お前にも迷惑を掛けた……!」


 約束通り、俺は最速でリンダ、ラファエロ、レティシア、ゼフをリーガルまで送り届けた。

 抱き合う皆を、俺は微笑みながら見つめる。

 家族ってのはいいもんだな。まぁ、俺の家の家族は魔界で俺を殺そうとしたんだけどな。

 はたして、俺は家族と呼べる存在を得る事が出来るのだろうか。

 それにはやはり嫁をもらうしかないのか?

 いや、それは難しいか。


「ミケラルド殿! 本当に、本当にありがとう!」

「私は依頼をこなしただけですよ」


 俺がそう微笑み返すと、ランドルフはうんうんと頷きながら喜んだ。

 これで、ようやくサマリア侯爵家の問題は片付いたと言えるだろう。

 家族の感動の再会が落ち着きを見せ、俺は改めて皆に礼を言われた後、ゼフに応接室へ通された。

 暫くすると、そこへランドルフとゼフがやってくる。


「やぁ、待たせたね。ミケラルド殿」

「いえ、お気になさらず」

「まず、今回の報酬だ。受け取ってくれ」

拝領(はいりょう)致します」


 ゼフから金銭が入っているであろう革袋を受け取ったランドルフ。

 俺はそれを受け取り、テーブルの手前に置く。


「白金貨にして二百枚入っている」


 ざっと見積もって日本円換算およそ二億円。

 やはり侯爵ともなると払いが違う。まぁ、今回の働きとしては少ないとは思うが、それは仕方ないだろう。侯爵とはいえ、民の税金を無駄に使う訳にもいかない。サマリア侯爵がどんな事業をしているかはわからないが、これが最大限の報酬という事だろう。


「ありがとうございます」

「まぁ、それはついでのようなものだ」

「は?」

「一番の報酬はこれだ」


 テーブルに置かれたのは一つの金印。半円形の取っ手が付いた非常にシンプルなものだった。

「……これは?」

王商印(おうしょういん)というものだ」


 初めて聞く名称だ。

 多分これは、この世界独自の文化。


「これを持つ者、(すなわ)ち王家を代表する商人である」

「えっと、つまり……どういう事です?」

「何かあった際、王家が後ろ盾になるという事だ。当然、王家からの依頼も多く入る。陛下に相談した際、これを与える事を許して下さった。とても栄誉な事だぞ」

「はぁ……」

「ふふふふ、今はまだ理解が及ばずともいい。だが、これだけは知っておく事だ。リーガル国でそれを持っているのは【ドマーク商会】と【ミケラルド商店】だけであり、他の商人は喉から手が出る程、それを欲しているという事を」

「つまり、巨大な看板って事ですかね?」


 そんな俺の要約に、ゼフが「ほっほっほ」と笑う。


「ふっ、(じき)に公布される。その効果はおそらくすぐに現れるだろう」


 俺の聞き間違いじゃなければ、今「公布」って言ったな?

 それってつまりリーガル国の全員に伝わるって事か。

 しかしまだしっくりとこない。やはりこの王商印ってのの効果がまだわからないな。

 まぁきっと凄いものなんだろう。

 俺はそう気楽に考えながら、屋敷の皆に見送られた。

 サマリア侯爵家の本家はマッキリーの東にあるとの事で、今度そこに遊びに行くという約束をし、俺は屋敷を後にした。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 リーガル国の首都リーガル。ここへはそうそう来る用事がない。

 何しろ、今の俺の実力では、ミナジリ村から二十時間は掛かってしまうからだ。

 なので、今回はリーガル国にあるダンジョンを攻略しようと思う。

 リーガルのダンジョンはランクB以上の冒険者しか入れない事もあり、非常に閑散していると聞いた事がある。それもそのはずで、そもそもランクBになる程の冒険者が少ないという事と、攻略するにはもっと上位ランクの実力が必要になるからである。

 冒険者ギルドを着くとニコルが笑顔で迎えてくれる。


「これはミケラルド様。お疲れ様です。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「リーガルにあるダンジョンを攻略しようと思って」


 瞬間、ニコルの表情が固まる。まるで時が止まったかのようだ。


「えぇっと……まさかお一人で?」

「連れがいるように見えます?」


 ニコルは目頭を押さえ、何か考えているようだ。

 そして、小さな溜め息を吐き、カウンターの内側から何かを取り出した。


「ミケラルド様、これをご覧ください」

「【魔導書(グリモワール)】一冊で白金貨五枚。へぇ、これは凄いですね?」

「この魔導書(グリモワール)は、魔法を使える者が魔法を込めると、他者がその魔法を覚えられるという貴重な書物です」

「それが、リーガルのダンジョンに?」


 ニコルがコクリと頷く。


「けれど、過去それを取ってくる事が出来た者はほとんどいません」

「つまり、それだけ危険だと」

「ギルドが定める事が出来るのであれば、ランクSのパーティを組んで臨むべきだと存じます」

「けど、潜ってない人はいないんでしょう?」

「それは単純な事です。リーガルのダンジョンは二十階層。冒険者が潜ったとしてもせいぜい十階層までです。その過程でも貴重なマジックアイテムは入手出来ますので」

「じゃあ、そこまでならニコルさんはオーケーだと」


 俺の強情っぷりに、ニコルはついに観念したように深い溜め息を吐いた。


「はぁ……リーガルの北西にダンジョンがあります。挑戦されるのでしたら細心の注意を払ってくださいね」

「ありがとうございます!」


 俺だって自殺願望がある訳じゃない。

 まずは侵入し、自分の限界ラインを確認する事が重要だ。

 さて、俺はリーガルのダンジョンにどこまで通用するのか、それが楽しみでならない。

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