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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

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703/917

その700 二階層

「これはまた随分広いところに出ましたね」


 周囲を見回すとそこは、疑似的な太陽に照らされる密林のような場所だった。


「こんな場所まで造ってしまうなんて……凄い」


 と、メアリィが一歩前に出たところで俺が止める。


「え?」

「メアリィさん、リプトゥアのダンジョン(、、、、、)って潜った事ありますか?」

「え、以前一度、ガーディアンズの時に潜りましたけど……?」

「最後まで?」

「大変でしたけど、なんとか」

「あそこの二十一階層以降に出て来る【アサルトカメレオン】ってモンスターいたでしょ?」


 俺はそう言いながらメアリィの前から密林の木に向けて人差し指をスライドさせた。


「あぁ、あの擬態をする…………」


 指の先をじっと見るメアリィ。


「……ぁ」


 どうやら俺の言いたい事を理解してくれたらしい。

 メアリィは視線の先にアサルトカメレオンを見つけ、杖を強く握る。


「でもどうして? あれはランクAのモンスターじゃ……?」

「ランクAのモンスターをSSS(トリプル)のダンジョンに出しちゃいけない決まりなんてないですよ。そもそも、ここでは霊龍が法ですし」

「確かにそうですけど」

「おっとこの腐臭は……」


 また視線を移動させる。そこにはツタに絡みつくマミーがいた。あれはマッキリーダンジョンの……。

 ガサと音がする方を見ると、ガンドフダンジョンにいたソルジャースケルトンがこちらを覗いている。


「あ、あれってもしかして……マスターゴブリンッ?」


 メアリィが見つけたのは、記憶に新しい法王国ダンジョンの難敵。

 木の枝を見上げれば……またリプトゥアダンジョンの【リンクモンキー】。あ、目が合った。


「やばい……」


 俺がそう零したのも無理はない。

 リンクモンキーは非常に恐ろしい特性を持っている。

 奴の叫び声は、周囲のモンスターをかき集め、一瞬にしてモンスターハウスと化すからだ。


「キィイイイイァアアアアアアアアアアアッ!!」


 鳴いちゃったよ。

 瞬間、俺はメアリィを抱きかかえ、分裂体と共に空へ向かった。


「わわわっ!?」

「ちょ~っとまずい展開なので空の観光をお楽しみください」

「ミ、ミケラルドさん! あれ!」


 眼下を指差すメアリィ。

 そこにはリンクモンキーに釣られて集まった……何だあれ、モンスターの波か何かだろうか?


「あ、そういえば一階層で宝箱出ませんでしたね。今回はそういう仕様なんでしょうかね?」

「そんな事言ってる場合じゃないです! 金狼がっ!」


 お空に向かってブレスを吐く金狼さん。リプトゥアダンジョンに行った時、あいつには手こずったなぁ。


「あれってもしかしてヒドラですかっ!?」

SS(ダブル)ダンジョンのボス、アンセスターヒドラですねぇ」

「じゃ、じゃあここって……!」

「これまでのダンジョン全てのモンスターが登場しそうですね」

「何でそんなに楽しそうなんですかっ!?」

「これを、使うからですよ!」


 手を掲げ、放出する魔力は過去類を見ないだろう。

 しかし、疑似スタンピードとさえ思えるこの状況ではこれが一番の最適解。


「【大津波】……!」


 リィたん最強の水魔法を発動。

 直後、密林の木々が音を立てて折れ、流されていった。

 モンスターはこれに巻き込まれ、ブレス攻撃をしていた金狼やヒドラは消え、こちらにむかって木を投げていたゴブリンチャンピオンも消えていった。


「凄い……!」

「あちらに見えるのが波で、あちらに見えるのが波です。あ、あそこの密林は……あ~波になっちゃいましたねぇ」


 バスガイドのように見どころスポットを紹介するも、メアリィは耳を傾けてくれなかった。ただ、眼下で呑み込まれていくモンスターたちを見るばかりだった。


「ふむ、空から見れば……これはドーム型のダンジョンですね」


 波が円形に広がり、その形を教えてくれる。


「じゃあ波の向こうに見える景色は……【歪曲の変化】」

「そういう事です。しかも、景色をスライドさせて進行方向を狂わせようとしています。性質(たち)が悪いですね」

「ノーコメントですぅ……」

「じゃあ、水の広がり方をよーく見ておいてください。何らかの異変があれば、そこに三階層へ繋がる転移装置があるかもしれません」

「はい!」


 しかし、二階層からいきなりこのレベルとは。

 全ダンジョンのモンスターが大集合したらそれはもうSSS(トリプル)なんかではない。モンスターたちのまだ見ぬコンビネーションがあるだろうし、アンセスターヒドラだけでもとんでもない惨事になる。

 調査云々言えない状況に追い込まれるとは……大津波がなければ、空を飛べなければ……くそ、霊龍のヤツ、覚えてろ?


「あっ!」


 メアリィが指差す。

 俺はそちらを見ると、そこには波が不自然に引っかかっている場所を見つけた。しかも二ヶ所。

 それ以外には……特にないか。

 波がおさまるまで周囲を見渡すも、そこ以外には何か違和感のある場所はなかった。周囲には生き残っているモンスターもいたが、そのどれもが瀕死状態と言えた。

 波が引っかかていた場所まで降りると、そこには二つの転移装置があった。

 どうやら、両方起動しているようだ。

 横には古びた文字で【進む】と【戻る】。


「ミケラルドさん、これって……」

「えぇ、霊龍の救済措置ですね」

700話更新やったね! 何だ、700話って?

特に何もないですが、これからも更新頑張りまーす!


次回:「◆その701 調査報告」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 700話おめでとうございます! これからもお願いしますね!
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