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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その69 真相は闇の中

2019/6/6 本日二話目の更新です。ご注意ください。

「ハッハッハッハ! ミケラルド殿!」

「お待ちしておりました、ランドルフ様」


 リーガル城から嬉しそうな顔で出て来たのはランドルフ・オード・サマリア。

 どうやら、俺の仕込み(、、、)が上手く働いたようだ。

 ランドルフが釈放されたという事は、あの醜悪極まりないアルフレド公爵家は……もう終わりって事だな。


「アルフレド様の処分はどうなりました?」

「私と入れ替わりであの尖塔に幽閉されている。おそらく爵位剥奪は免れないだろう。まぁ、詳しい話は後だ。まずは我が屋敷に」


 証拠のねつ造なんて、実に魔族らしいが、アルフレドは今回の主犯に間違いはないので、自己弁護するならば、刑事物のドラマでよくある違法捜査みたいなものだと思っている。

 アルフレドの血を吸い、自供するように命令すると共に、アルフレド直筆のリプトゥア国への密書を作らせる。これと最初の密書の二通を、リーガル国王の寝室に置いておけば、翌日の査問で、ランドルフが釈放される事は明白だった。

 正直、ぶくぶくに太ったあのアルフレドの血を舐めるのは、少なからず躊躇を覚えてしまった程だ。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「いや、まさか出迎えてくれるとは思わなんだ」


 屋敷に着いた俺たちは、前と同じ応接室にて向かい合って座っていた。

 どうやら、ランドルフは俺の出待ちに驚いたようだ。


「商人ですからね。ランドルフ様が復職されたのであれば、取り立てなくてはいけませんから」

「ふふふふ。人が悪いな、ミケラルド殿」

「人ではありませんから」

「はっはっはっはっは! うむ、確かにそうであったな!」


 上機嫌になればここまで笑う人なのか。

 中々耳に響く笑い声だが、喜んでくれたのであれば俺も嬉しい。


「して、リンダたちはどこに?」

「内密にして頂くという条件でお教え致します」

「無論だ」

「……結構です。実は、シェンドの町の西に小さな村を作りました。リンダ様、ラファエロ様、レティシア様、ゼフさんはそこに匿っています」

「ほぉ、シェンドの町の西に?」

「当然、リーガル国無認可の集落のような場所です。私としては、今後ランドルフ様には、あの土地の自治権獲得のために、お力添えして頂きたく存じます」

「それはまた……骨が折れそうだな」


 そう言うも、ランドルフの顔はどこか嬉しそうだった。

 魔族が自治権を欲しいって言ってるんだから、普通は怖がるべきだろうに。

 ……ふむ、この顔はアレだ。子供が秘密基地を作ろうとしているかのような顔である。


「ランドルフ様、楽しんでませんか?」

「ふふふふ、わかるかね? しかし仕方が無いだろう? もしこれが成れば、我が国は強力な友を得る事が出来る。そうではないかね?」

「過度な力は、己を滅ぼしますよ」

「使う必要はない。私はミケラルド殿の力をリプトゥア国への抑止力だと思っているよ?」

「まるで、私の力を知っているかのようですね」

「全てを知らずとも、君が何を成したかはわかるつもりだ」


 なるほど、リーガル国王の寝室に置いた二通の密書の事を、国王自らランドルフに話したという事か。

 つまりランドルフは、単身で国王の寝室に忍び込める俺の実力を評価した。そういう事だ。俺との友好関係を保てば、一回、いや二回程リプトゥア国王の寝室に忍び込めば、リーガル国は政治的有利に立ち回れる。


「私としてもサマリア侯爵家、そしてリーガル国とは良好な関係を築きたいと思っています。しかしお忘れ無く。我々は魔族なのです。この障害を乗り越えるには、時間が必要です」


 ランドルフは静かに頷く。


「わかっている。だからこそ、ミケラルド殿は商人になったのだろう?」

「流石にわかりますか」

「商売を牛耳れば、それだけ多方面に強い影響力が出る。それは当然、国にもな」


 ランドルフはにやりと笑いながら話した。

 利益だけ見れば、俺たちと組む判断は間違っていない。

 しかし、魔族という存在がリーガル国の中で明るみになれば、民衆がそれに付いてくるかどうかというのは、別問題とも言える。

 その溝を、今後どう埋めていくか……というのは、やはり時間と、こちらの奮闘によるものが大きいだろう。


「あ、一点だけお願い……というより、お任せしたい事が」

「何だね?」

「アルフレド様のお屋敷にいる使用人たちが困っていると思うので、出来れば早めに救出(、、)を」

「わかった。すぐに手配しよう」


 使用人たちは戦闘能力を持たないに等しい。

 屋敷内にいるので問題はないだろうが、(あるじ)の不在と護衛の不在に心細い思いをしているはずだ。この対応は、ランドルフに任せる他ない。


「それで、ミケラルド殿」

「はい、何でしょう?」

「家族はいつごろこちらに?」

「……報酬は期待してもよろしいので?」

「ハッハッハッハ! 流石ミケラルド殿、抜け目がないな! 期待に添えられるよう努力すると約束しよう!」

「二日後にはお連れ致しましょう」

「なんと! いや、ミケラルド殿ならでは、なのかもしれぬな! ハハハハハ!」


 仲良くなったらただの調子の良いおじさんという感じだな、まったく。

 ランドルフは「泊まって行きたまえ」とも言ったが、出来れば今日中にミナジリ村に着きたかったので辞退した。

 今夜はゆっくり眠れそうだな。多分。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >正直、ぶくぶくに太ったあのアルフレドの血を舐めるのは、少なからず躊躇を覚えてしまった程だ。  アンデッドからも、不潔なモンスターでさえも体液を摂取した経験があっても嫌だったんですね(笑…
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