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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

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694/917

その691 SSSダンジョン

「ふん? ふんふんふん?」

「ミ、ミケラルド殿……?」

「ほー? ほーほー? なるほど、ふんふん」


 地面をペタペタと触る俺を、そわそわしながら見ているバルト。

 遠目にはローディ族長の代わりにディーン君が見える。

 相変わらず鋭い視線である。龍族が交渉したとはいえ、おれが先程から入っているのはまごう事なき【聖域】である。あの視線も納得だというものだ。


「本当に【聖域】にダンジョンなどあるのでしょうか?」

「朝陽が差した時、精霊樹の影の頂点こそ【聖域】……か。この小さな祠は? 聖域を祀ってるという事です?」

「そのように聞いていますが……」

「壊したら怒りますよね?」

「……あちらの御方が」


 ちらりの向けられるバルトの視線。

 当然それはディーン君へと向かっている。


「ふむ……この柵くらいはいいでしょう?」

「うーん……ですが……いやしかし……」


 ここまで唸るバルトも珍しい。

 聖域は精霊樹の影の頂点というだけあって、基本的に何もない。あるのは人工的な柵と人工的な祠のみだ。柵の外にこそ小屋はあるものの、聖域の範囲外ではある。

 以前、ヒミコがダークマーダラーを連れシェルフにやって来た時はあの小屋にアイリスがいたのだろう。

 エルフの民はこの周囲に避難していたのかな?

 まぁ、ここには入り切らないよな。


「多分、この柵の下かと」

「それは何故……?」

「影の先は本当に先っぽという意味ではなく、広義的な先端という意味だと思います。一概に先って言われても人によって捉え方が違うでしょう?」

「た、確かに……」


 俺はディーンに手を振り、合図を送った。

 そして、柵の下を指差し、柵を引っこ抜くという事を伝えると、ディーンは少し頭を抱えはしたものの、諦めた様子で一度だけ頷いた。

 俺は【サイコキネシス】で柵を四、五本抜き、その地面を探った。


「……どうでしょうか?」


 魔力の波を地面に流す。

 すると、地中に(おぼ)げながらダンジョンの輪郭を捉える事が出来た。そして、その上部には……。



「あー、ここで鍵が必要なのか」

「鍵……ですか? というともしやランクSダンジョンの報酬の?」

「いえ、あっちではなく、こっちのマジックスクロールです」


 俺は、SS(ダブル)ダンジョンの最深部で手に入れたマジックスクロールを取り出し、バルトに見せる。


「それを一体?」


 首を傾げるバルトを前に、俺はマジックスクロールをダンジョン上部の真上に起き、魔力を通した。

 すると、マジックスクロールのコンパスの光がくるりと一周まわった。

 直後、【聖域】から魔力の光が噴射した。


「こ、これは!?」


 地面から空に向かう魔力(ひかり)の中心。

 その地面がピキリと音を立てる。その音の後、そこが震源であるかのような大きな地震が起こった。

 超大掛かりの仕掛けのようである。

 おー……揺れる揺れる。

 そう思ってた矢先、遠目にいたはずのディーンが物凄い形相で走って来た。

 俺に……ではない。ディーンは祠に向かってダッシュしていたのだ。見れば、祠はぐらぐらと揺れ、今にも崩れそうである。


「んぁあああ!」


 凄い、バレーのレシーブを飛び込みでキメるようにディーンが跳んだ。……まぁ、届かなかったんですけどね。

 ボロボロと崩れ落ちる祠。頭を抱えるバルトと頭を掻く俺。ディーンの顔が凄い。お菓子を取り上げられた炎龍(ロイス)みたいに絶望した表情をしている。開けた大口に拳骨くらいなら入りそうである。

 石とか入れてもバレないんじゃないだろうか?

 そんなどうでもいい事を考えていたら、地面からダンジョンがせり上がってきた。

 これまで見てきたダンジョンと何ら変わりない出入り口。

 だが、これで――、


「ほ、本当に聖域にダンジョンが……!」


 バルトが驚きを露わにし、ディーンがどうしようもない悲しみを露わにする。本当に大切にしてたんだな、聖域。

 少しばかりディーンが可哀想だったが、元々はエルフの勘違いから出来た場所だ。仕方ないと割り切る他ないだろう。


「じゃ、仕事しちゃいますか」

「お願い致します」


 バルトが深く頭を下げると共に、俺は聖域ではなくダンジョンに対して強固な土壁という柵を造った。

 ダンジョンを土壁でドーム状に囲い、ドアを用意。ドアの横には『シェルフ冒険者ギルド管理。入場にはギルドの承認が必須である』など、諸注意が書かれた貼り紙を用意した。

 すぐに入りたいところだが、そうもいかないのが世の常である。

 まずはダンジョンを発見する。それが今回の俺の役目である。この後、シェルフのギルドマスターであるリンダを介しアーダインへ報告。アーダインが冒険者ギルド本部の意見をまとめ、調査依頼を冒険者に出す。おそらくその調査団の中に俺の名前が入るはず。

 なので、俺はこのままシェルフへ帰るしかないのだ。

 半泣きのディーンを放って帰るか迷ったが、流石にそれは可哀想だなと思い、俺はダンジョンの隣に新たな聖域の祠を造ってみせた。

 ボロボロになった祠そっくりにし、新たに柵を囲い小屋の場所も移した。

 正直、最初からここが聖域だったと言われてもわからないエルフもいるんじゃないかって程、そっくりに造った。

 これを見て、上機嫌になったディーンを見て、情緒不安定かな? とも思ったが、きっとこういうところにアイリスは惚れたんじゃないか、と結論づける事で自分を納得させた。させるしかなかったのだった。


次回:「その692 ご報告」

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