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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

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689/917

その686 ボーナスタイム

 皆に向かってVサインを送った後、俺は、その指先を尖らせた。

 それを見た木龍(クリュー)が一瞬ピクリと反応するも、すんと鼻息を吐いた後、冷静に戻ってくれたようだった。

 俺は静かに雷龍シュガリオンに近付き、その首元に爪を置いた。


「もう気がついているでしょう?」


 言うと、雷龍シュガリオンの目がパチリと開く。


「そうだな。……が、身体がピクリとも動かない。見事という他ないな」

「生殺与奪の権利は私にあるという事で?」

「……不本意ながらな」

「では、失敬」


 俺は自身の爪を雷龍シュガリオンの前脚に突き立て、そこから流れる紅い滴をペロリと舐める。それを見た剣鬼オベイルがリィたんに聞く。


「ありゃ一体何やってるんだ?」


 そう、ここにいる者の中で、俺の能力を知っているのは、ミナジリのオリジナルメンバーと木龍(クリュー)、そして霊龍(れいりゅう)から俺の能力について聞いた雷龍シュガリオンだけだろう。

 リィたんがオベイルに言う。


「ミックは、対象の血を体内に入れる事で、その対象の力を得、操る事が出来る」

「「っ!?」」


 俺が皆の目の前で血を舐めた事で、リィたんは俺に確認をとる必要はないと判断したのだろう。事実、俺もそのつもりだったので、最早(もはや)、俺とつうかあ(、、、、)の仲と言えるだろう。


「まさかボンにそんな能力があったとはな。いや、だからこそのこの急成長……と言える訳か。なるほど、それで私の血を……」

「何だよ爺、ミックに血吸われてたのか?」

「操られた事はないがな」

「だが、これで闇ギルドが早々に崩壊した謎が解けたぜ」


 剣神イヅナとオベイルの二人は概ね問題なさそうだが、さて、勇者と聖女側はどうだろうか。


「ミ、ミケラルドさんっ! 私の血は吸ってないですよね!? 吸われてませんよねっ!?」


 自身の顔や身体をペタペタと触り、過去血を吸われたかを思いだそうとしているアリスちゃん。

 アリスの血を吸ったらナタリーに怒られそうで、吸いたくないんだよな。まぁ、一番はアリスの血自体怖いんだよな。血液に【聖加護】とかかかってそうで。もし、舐めた瞬間に蒸発したらと考えると本当に怖い。

 そんな中、勇者エメリーが俺に近付いて来た。


「およ?」


 俺の目の前でちょこんと腰を落としたエメリーが言う。


「魔王と同じ能力――【血の連鎖(ブラッドコントロール)】……ですね?」

「博識ですね。誰ですか、そんな危なっかしい事をエメリーさんに教えたのは?」

「聖騎士学校で仲の良い吸血鬼の特別講師の方が教えてくれました」


 くすりと笑ったエメリーを見て、雷龍シュガリオンが俺に言った。


「あれだけの実力を持っていながら、勇者の前では形無しだな」

「あれだけの実力を持っていながら、霊龍(れいりゅう)には大人しく従うんですね?」


 そう言うと、ふんすと鼻息を吐いた雷龍シュガリオンがジト目を向ける。


「お前はまだアレの恐ろしさを知らんのだ。だからそんな軽口が叩ける」

「どうでした、霊龍(れいりゅう)は? 私たちにちょっかい出した後、一戦やったんでしょう?」

「……そこまで見通していたか。ならば先に聞かせろ」

「何を?」

「先程のあのアーティファクト、あれは一体何だ?」


 雷龍シュガリオンが聞くと、エメリーが手を挙げた。


「はい! 私も気になります! 継続的に魔力を回復させる珍しくもないアーティファクトでしたけど、あの容量は異常でしたっ!」

「ん~…………ノーコメントという事で」

「全てを言わぬつもりか」


 雷龍シュガリオンのギロリという強い視線を受けようとも、今の俺が答える訳にはいかないのだ。


「少々危険でしてね、身内にすら明かせぬ……そうですね、【外法(げほう)】といったところでしょうか」

「外法……?」

「褒められた作り方じゃないので、そういうようにしました。魔族の目や耳がどこにあるかもわからないご時世なので、今は私だけに留めさせて頂きます」


 そう言ったところで、ナタリーを肩車したリィたんがやって来た。


「それは寂しいものだな」

「ははは、何でも気軽に言える世の中ならいいんだけどね」

「いや、ミックはちゃんと考えて、そこまでは(、、、、、)言ってくれるじゃないか。だから私も信ずる事が出来るのだ」


 リィたんがそう言うと、雷龍シュガリオンを見た。


「どうだ雷龍? 我が(あるじ)は凄いだろう?」

「本日付で我が(あるじ)とも言えるが?」

「ふん、変な意地が出なければそうなる事もなかったのだ」

「かもしれないな」

「さぁナタリー、早速こやつに名前を付けてやれ。『雷龍シュガリオン』など、長ったらしくて仕方がない」


 すると、ナタリーが雷龍シュガリオンを指差し言う。


「【シュリ(、、、)】!」

「……ほぉ」


 なるほど、雷龍(シュリ)か。

 長すぎず安直すぎず、雷龍シュガリオンの機嫌も損ねない。

 ナタリーのネーミングセンスも、板についてきたのかもしれない。


「ふむ、雷龍(シュリ)……か」


 もう気に入っているようだ。

 がしかし、気になる事がある。

 俺はリィたんに耳打ちするように聞く。


「やっぱり雷龍(シュリ)も人化すると女性に?」

「何だ、ミックは知らなかったのか。龍族は皆、女だ」

「それって何か理由があるの?」

「前にミックが欲しがってただろう?」

「何を?」

「龍族の鱗や牙、そして何が欲しいと言っていた?」

「……卵の殻」

「そう、卵を生むためには皆、女である必要があるという事だ」


 目から鱗というか、卵の殻というか……。

 だが、雷龍(シュリ)の人化は見てみたいかもしれない。

次回:「その687 新たなる仲間、シュリ!」

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