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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

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その675 集う龍族

 ホネスティが迎え入れたのは計五人。

 剣神イヅナ、剣鬼オベイル、炎龍(ロイス)、テルース、木龍(クリュー)である。

 暗部の人間を散らした後、俺は応接間で彼らを受け入れた。

 そこは異世界というか異界というか……ホント、変な空間になっていた。


「どうなってんだよ、おい」


 壁に寄りかかったオベイルが俺に聞く。


「ホント、どうなってるんでしょうかねぇ?」


 そう答えると、オベイルが俺をずびしと指差して言った。


「俺はな、そこの木龍グランドホルツに龍族が集まった理由を聞いたら、『ミナジリ共和国に行けば全てわかる』って言われたから付いて来たんだよ」

木龍(クリュー)だ」


 木龍(クリュー)の名前アピールは健在です。


木龍(クリュー)さんですよ、オベイルさん、以後注意するように」


 ここは会議の議長としてオベイル君を注意すべきだろう。

 じゃないと、オベイルの命が危ない。


「ちっ、ほざいてろ……」


 人類の中ではトップクラスに強いんだけど、この空間にいるとオベイルが浮く(、、)からな。何も言えなくて悔しそうなオベイルに優しいファンレターでも届かないだろうか。そう、不信感Pあたりから。


「が、しかしだ」


 そう切り出したのはイヅナだった。


「何かとてつもない事が起こる……その前兆だという事は理解出来る。そうだろう、ボン?」

「えぇ、私もイヅナさんと同意見です。ただ、答えを持ち合わせていません」

「あぁ? そりゃどういう事だよ?」


 オベイルが木龍(クリュー)を見る。

 しかし、木龍(クリュー)からは何も返ってこなかった。

 苛立ちを見せるオベイルだったが、そこへ意外な存在が口を出したのだ。


「私が教えてあげるのだ!」


 コリンより年下の炎龍(ロイス)ちゃんです。


「ガキのたわごとに付き合ってられねぇんだよ」


 オベイルが唯一強く出られる相手の炎龍(ロイス)ちゃんです。


「ちゃんと知ってるのだ! な? なっ?」


 両側に座る木龍(クリュー)、テルースに確認をとるように炎龍(ロイス)が言うと、リィたんがピクリと反応した。


「……もしや、またか?」


 リィたんの言葉にテルースがくすりと笑う。


「だから言ったじゃない。ミケラルドさんのいるミナジリ共和国へのテレパシー干渉は出来ないって」


 テルースがそう言うと、リィたんがしゅんと項垂れる。

 あんなリィたん、珍し過ぎて写真に収めたい欲が凄い。

 だが、テルースの言葉で話の全体像が見えてきたな。


「くっ……霊龍め……」

「「っ!?」」


 リィたんが愚痴のように零した名前によって、ジェイル、ナタリー、イヅナ、オベイルの四人が硬直する。

 そんな彼らを引き戻してやるため、俺は木龍(クリュー)に聞いた。


「では、お三方には霊龍さんから連絡が届いたと」

「そうなのだ!」


 でも、答えてくれたのは炎龍(ロイス)ちゃんでした。

 言いたがりの年頃ってあるよね。

 俺は木龍(クリュー)を見ると、彼女は仕方なさそうにアイコンタクトを送って来た。


 ――炎龍(ロイス)に聞いてやれ、と。


 俺は『話のわかる系元首』として名前を売ってる節があるので、炎龍(ロイス)に聞いてみた。


「それじゃあ炎龍(ロイス)、何でここに集まったのか皆に教えてくれるかな?」


 言うと、ニヤリと笑った炎龍(ロイス)がふふんと鼻息を吐いた。


「ふっふーん! どうしようかな~?」


 今、少しだけ……ほんの少しだけ「このクソガキが」とか思ってしまったけど、すぐに俺は冷静に戻った。褒めて欲しい。特に霊龍に。


「じゃあテルースさんに聞くね?」


 こういう時は、手柄を誰かに取られてしまう可能性をほのめかしてやればいいのだ。功を焦り、慌てて皆の聞きたい話をゲロってくれる。


「わ、わわわっ! それはダメなのだ!」

木龍(クリュー)さんに聞いてもいいんだけど?」

「ダメったらダメなのだ!」

「じゃあ教えてくれるかな?」

「そ、そこまで言うのなら仕方ないのだ! 実は……招待状を貰ったのだ!」


 おっと、まだ全貌が見えないぞ?


「招待状ってどういう事?」


 ナタリーが聞くと、炎龍(ロイス)はうんうん唸った後……ハッと気づいて木龍(クリュー)に言った。


「ど、どういう事なのだ……?」


 俺ががっちがちのギャグ路線を走っているのであれば、ここでコケて見せるのだが、いかんせん、このシチュエーションに合わない気がする。


「じゃあ回答権が戻ってきたようなので、教えてくれますか、木龍(クリュー)さん」

「ミック、今お前はシェルフにあるSSS(トリプル)ダンジョンについて、ローディ族長と折衝中らしいな」

「おいおいマジかそれ!?」

「ほっほっほ、まさかSSS(トリプル)ダンジョンが実在したとはな!」


 オベイルとイヅナが驚くのも無理はない。


「国家機密を世間話みたいに話しちゃってからに……」


 やれやれと溜め息を吐く俺に、木龍(クリュー)が続ける。


「持てる力を全てそこに注ぎ込んだ事も霊龍から聞いた。がしかし、シェルフの【聖域】にダンジョンがあるともなればまだ弱い。それはミックも理解しているだろう」

「まぁ、そうですね。間もなく回答は得られるでしょうが、やはりまだ弱いと言わざるを得ません」

「だからこその招待状だ」

「……読めませんね」


 言うと、テルースがその中身を教えてくれた。


「明日、雷龍シュガリオンがここ、ミナジリ共和国へやって来ます」

「「っ!?」」


 ……なるほど。

 そういう事か……霊龍。

次回:「その676 招待状」

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