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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

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その674 予兆

 プリシラの葬儀が終わって数日、シェルフからの回答もそろそろだと思っていた矢先――俺の部屋にジェイルがやって来た。


「ミック」

「あぁ、おはようございます、ジェイルさん」

「……あぁ」


 挨拶の返しはなく、いつものジェイルのようでそうでない。

 つまり、ジェイルもアレに気付いたという事なのだろう。


「気付きましたか?」

「あぁ。これはもしかして――」

「――いやいや、雷龍シュガリオンがこの程度(、、、)なら私も楽なんですけどねぇ」


 そう、今ここに、強い魔力が向かって来ている。

 それも、一つや二つじゃない。


「そうか、違うか……」

「でもイイ読みですよ」

「というと?」


 ジェイルが小首を傾げると、次に部屋をバタンと開けたのはリィたんだった。


「……ふむ、ジェイルも気付いたか」

「以前のように前触れがなかった事もあってな、急いで来たはいいが、ミックはこの調子だ」


 お茶を(すす)る俺を見て、ジェイルが呆れた顔を見せる。


「なら、我々も(あるじ)(なら)うだけだ」


 そう言いながらリィたんが俺の対面のソファにどかっと腰掛ける。


「……そうか」


 ジェイルもまた、リィたんの隣に腰を下ろした。

 相変わらず信頼されてる感が凄い。「内心不安でいっぱい」なんて言ったら怒られるんだろうな。

 そう思いながらまたお茶を啜る。


「ミックミックたいへーん!」


 最後にやって来たのは、いつものようにナタリーだった。

 バタンと扉を開け、リィたんとジェイルがいる事に小首を傾げるナタリー。


「おはよう。どうしたの、ナタリー?」

「うん、ドゥムガがね?」


 ナタリーは俺の隣にちょこんと座りながら言った。


「なんか震えちゃって、様子がおかしいの。『きょ、今日は調子が悪いぜっ!』って叫びながら布団被って頭隠してる」

「尻は?」

「凄く出てた」


 頭隠して尻隠さずを体現しているドゥムガに異変を感じ取ったか。ドゥムガの実力は、まだこの魔力反応に気付ける段階ではない。しかし、直感的に身体が反応したという事か。

 だがそろそろ――、


『こ、こらお前たち! やめ、やめるんだ! あっ!』


 外から聞こえたのはラジーンの声。

 彼の制止を振り切ってここに入って来られる存在はそう多くない。

 バコンと蹴破られた扉。


「入るよ」


 元首ってこんなに雑に扱われるもんなんだ、と思われてしまっては困るんだが、彼ら相手なら仕方ないのだろう。


「何だよナガレ(、、、)、コッチは今雑談中なんだよ」

「アタシたちの緊急事態とアンタの雑談のどっちが重要なんだい」


 ナガレの悪態。

 すると、ナガレの後ろからウチの暗部がゾロゾロと現れた。


「お前たちの緊急事態と俺たちの雑談はきっと同じ話だよ」


 ナガレ、サブロウ、カンザス、ノエル、メディック、ホネスティが立ち並び、窓の外からはグラムスとパーシバル、それにフェンリル(ワンリル)が覗いている。


拳鬼(けんき)とアスランは?」


 俺が聞くと、サブロウが答える。


「なんぞ知らんが、あの仔龍は『大丈夫だ』と言っておったな」

拳鬼(けんき)はその仔龍の修行に付き合わされてるよ」


 ナガレの補足にリィたんが口を尖らせる。


「ほぉ、今の拳鬼(けんき)を相手するまでになったか」

「何事も修行だな」


 ジェイルが腕を組みアスランを称える。


「それよりも気になる事があるんだけど?」

「何だよ?」


 ナガレの鋭い目つき以上に気になる事。


「何でナタリーの後ろに整列してるの?」

「ふん、条件反射だよ」


 何が条件反射なのかわからんが、ナタリーの指導が行き届いているという事は理解出来た。


「ねぇ、ナガレ」


 そんなナタリーがナガレに聞く。


「……何だよ?」

「何が起こってるの?」


 それに答えたのはカンザスだった。


「強い魔力がこちらへ向かってるんですよ」

「え? じゃあ皆がここに集まってるという事は……」

「退避行動と言っても過言ではないですねぇ」


 それ、髪をかき上げながら言う事だろうか?


「ひひひひ、強い者が現れた時、群れのボスに子分が集まるのは本能と言って差支えない」


 メディックの補足は暗部の役割としてどうなのか、とも思うが、リィたんやジェイル、それにフェンリルまで集まって来ているという事は、やはりそれだけ緊急事態という事だ。


「ミケラルド様、逃げる準備は既に」


 ノエルって真面目だよな。


「だめだめ、ミナジリ共和国から逃げる時は世界の終わりを悟った時だよ。あ、ホネスティ。お客さんが来るから歓迎の準備をお願い」

「歓迎……ですか?」

「フリじゃないからな。友好国の王族が来ると思え。ただ、出迎えはシュバイツ(シュッツ)には荷が重い。だからホネスティね」

「この魔力を前に一人で立て、と?」

「大丈夫だよ、何もしてこないから」

「命を張る理由としては些か情報不足かと」


 まぁ、そうなるわな。

 近付いて来たのが誰かわからない以上、ホネスティにすら荷が重い。でも、彼らがここまで来ればわかっちゃうんだな。

 まずは――、


「炎龍ロードディザスターの【ロイス】に……イヅナさんとオベイルさんが乗ってるね」

「え、ロイスが?」


 ナタリーの驚きをよそに、リィたんが聞く。


「それだけではないだろう、ミック?」

「うん、【地龍テルース】、それに木龍グランドホルツの【木龍(クリュー)】がいるね」


 皆が絶句する中、俺はぬるくなったお茶を啜る。

 ジェイルは雷龍シュガリオンかと思っていたようだが、これだけ強い魔力を保有している強者が集まるのだ。そう思ってしまって無理もない。

 だが、ここにリィたん含む四色の龍が集まるとなると……それはもう予兆と言うべきなのかもしれない。

次回:「その675 集う龍族」

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