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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

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666/917

その663 アリス式盗賊討伐1

2021/9/29 本日二話目の投稿です。ご注意ください。

 ここは、以前オルグが使っていた聖騎士団の団長室。

 そこの椅子に座り、俺たちに鋭い視線を向けてくるのは、現在多忙を極める聖騎士学校の学校長であり、現聖騎士団団長のライゼン。


「なるほど、聖女アリスのコネクションを使い、聖騎士団を動員し、その盗賊を倒そうとした……か」

「はい!」


 それが通るか通らないかは別として、アリスの意気込みは素晴らしい。


「確かに、実力を考えれば聖騎士を動員するレベルにあると考えられる。しかし、この任務自体は聖騎士団から聖騎士学校に落としたもの。聖騎士学校側で解決してもらわなければならないものだ」


 なるほど、ものは言いようだな。

 盗賊は聖騎士が扮しているものだから、聖騎士団が動けるはずもない。こう言っておけば、アリスも何も言えないのではないだろうか?


「聖騎士学校の学校長判断が間違っている事を考慮頂けませんでしょうか?」


 お、意外に突っ込んできたな。

 これもなるほど面白い。聖騎士団長と聖騎士学校が同じだからこそ、これを訴える事が出来る。

 そもそも、ナタリーとかメアリィにこの任務を任せる事がおかしい。当然、アリスにも見合っていない。その判断を下した聖騎士学校に問題がある。アリスはそう訴えているのだ。

 これには驚いた様子のライゼンお爺ちゃん。

 あの、少しばかり頬が緩んでますよ。

 正規の手段で任務の違和感を最高責任者に訴え出る行為は、褒められたものではない。しかし、アリスは今回の趣旨に気付いている。それを踏まえた上でという事であれば、確かに有効な手段である。聖騎士学校の校長として、確かに嬉しい行動ではあるのだろう。

 当然、俺としてもアリスの成長は喜ばしい事である。


「何で、お二人が笑ってるんですか……?」


 アリスは、気味悪そうに俺を見る。

 何故、気味悪そうにライゼン学校長を見ないのか不思議だが、確かに俺にだけ向けるというのはこの場の空気として間違っていないのだろう。


「……ふむ、順調に育ってきているようで何よりだ。だが、それを受ける訳にはいかん」

「何故でしょう」

「アリス殿、現在アリス殿は聖騎士学校の管轄にある。その任務自体に問題があるのだとしたら、まずは聖騎士学校の上官に報告すべきではないかな?」

「むぅ……」


 まぁ、これはライゼン学校長が正しい。

 既にアリスがライゼン学校長に報告し、それが受け入れられていないのであれば、この聖騎士団に報告してもいいのだろう。しかし、ここにいるのはライゼン学校長ではなく、ライゼン団長である。


「聖女アリスのコネクションを使う判断は間違いではない。運も力、コネも力。自身の力を持て余す事なく任務に当たろうとする姿は敬意を抱く程だ。素晴らしい成長をしているな」

「……お時間頂き、ありがとうございました」


 アリスとしても、ここが引き際だろう。

 団長室を出たアリスは、親指の爪をカリっと齧っていた。

 少し悔しそうである。

 今回の相手がライゼン団長ではなく、以前のオルグ団長であれば通ったかもしれないな。

 筋が通っているだけに悔しいのはわからないでもない。


「くっ、まさかこっちの手を使う事になるとは……!」


 おやおや? その悔しがり方はなんか違いますね?

 一体どうしたんだろうと思いながら、俺はアリスに付いていく。

 やって来た場所は……冒険者ギルド?

 不穏な空気が漂う中、アリスはまたもその顔というフリーパスを使って、ギルドマスターの部屋へと向かった。

 まさか任務中にこの巨人に会うとは思わなかった。

 冒険者ギルド総括ギルドマスター――神風(しんぷう)アーダイン。


「こりゃ何とも、面白い組み合わせだな」


 アーダインが言う。

 アリスは一歩前に出て、小さく頭を下げる。


「聖騎士学校より参りましたアリスです」

「ルークです」


 この挨拶を聞いただけで、俺はアリスの意図が読めてしまった。この子、冒険者を雇う気だ。

 凄いな、今度は財力を使って任務を攻略しにきたのか。


「ほぉ、話を聞こうじゃないか」


 そこから、アリスはアーダインにこれまでの全てを説明した。聖騎士学校から通常であれば攻略不可能な任務を承った事。しかしながらこの任務を攻略したい事。サポートに俺が付いているが、ただの監視役だという事。


「……な、なるほど」


 アーダインをしても、アリスの頑固さにやや引き気味である。親指でこめかみをポリポリと掻いたアーダインが、要約した概要を書いた紙を見ながら言う。


「聞いた感じからしてSS(ダブル)の依頼だな。依頼をうければウチから勇者エメリー、剣聖レミリアが出せる」


 すっげぇな。財力でSS(ダブル)の冒険者を動かすか。これで、エメリーかレミリアが直接関与できるようになる。ナタリーもそうだったけど、アリスも逞しく成長していらっしゃる。


「いえ」


 しかし、アリスはそれを拒否した。


「パーティ指名をお願いします」


 アーダインの片眉がピクリと上がる。


「ほぉ? だとすると、パーティランクSの依頼だな。青雷は今忙しいだろうが……いや、まさか?」


 アーダインも俺も、ふんすと鼻息を荒くするアリスを見る。


「確か、最近パーティランクがSに上がって、法王国で有名なパーティがありましたよね? 名前は確かそう……【オリハルコンズ】」


 ここに、創設パーティメンバーが二人いるんですけど?

本日はもう一話投稿する予定です。


次回:「その664 アリス式盗賊討伐2」

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