表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/917

その65 心眼のレティシア

「んな!? まさかそんな事がありえるんですか!?」

「勿論、王家による査問があるので、待遇こそ悪くありません。しかし、王家転覆の容疑を掛けられているのは確かです」

「公爵家……ですか」

「「っ!?」」


 この場にいる誰もが驚く。

 そうか、この人たちは、俺がランドルフに報告した内容を知らないのか。


「知っていらっしゃったのですか……」

「えぇ、以前ランドルフ様から直接依頼を受けましたから」

「そういう事でしたか。それでランドルフは、『ミケラルド殿を頼れ』と言い残していたのですね」


 勝手に言い残さないで欲しいものだが、こういう事態になってしまっては仕方ないか。


「それで、一体どんな証拠があってランドルフ様を?」

「サマリア侯爵家の倉庫から、リプトゥア国の物と思われる軍事品が見つかったのです」

「それを、偶然を装って公爵家が見つけたと」


 リンダとラファエロが静かに頷く。

 なるほど、リーガル国の侯爵家から、隣国であるリプトゥア国の軍事品が見つかれば、国家転覆罪に問われても仕方が無い。だが、これはおそらく公爵家の仕込み。

 ランドルフは公爵家にハメられたという訳か。


「ここまでは一体どうやって?」

「マッキリーの町に向かう商人に助けてもらいました」

「そういう事でしたか。冒険者ギルドを頼らず商人ギルドを頼ったのは正解でしたね。リーガルの冒険者ギルドには、公爵家の手の者が潜んでいる事でしょう。そして、この町の冒険者ギルドにも」


 レティシアが俺の服の裾をぎゅっと掴む。

 公爵家はおそらくレティシアの【看破】の特殊能力を、今度は侯爵家ごと消そうとしたのか。前回はレティシア個人だったが、サマリア侯爵家全ての人間が邪魔という判断は、敵ながらいい目をしている。仮にレティシア暗殺が成ったとして、公爵家が王位を狙う際、必ずサマリア侯爵家は邪魔となる。そもそもランドルフが黙っているはずないだろうからな。

 王位を狙う前であれば、侯爵家への攻撃もそこまで目立たない。王家もまだアルフレド・フォン・リーガルの陰謀には気付いていないだろうからな。

 それ故、ランドルフが王家と通じる事は難しいだろう。当然それをアルフレドが阻止するからだ。

 なるほど、中々厄介な敵を相手にしてるな、ランドルフ。

 さて、ランドルフを助けるにも、まずはここの皆を助けなくちゃな。


「ミケラルド殿、どうか!」


 ラファエロの懇願するような言葉。

 これは……良いチャンスかもしれないな。

 そう、相手が窮地だからこそ、俺の正体に触れられる。


「ランドルフ様はお助けすると約束します。当然、あなた方も」

「おぉ!」

「――ただ、一点だけご理解頂きたい事がございます」

「言ってみてください! 父上が戻り次第報酬は弾ませて――」

「――いえ、この場で可能な事です」


 俺がこの宿の一室で暴露を選んだ理由は一つ。

 ここが個室であり、皆がまとまっているからだ。

 もし俺の正体に恐怖し、敵対する事になったとしても、ここにいる全員を【催眠スモッグ】などで気を失ってもらってから、全員の血を頂いて催眠療法をすればいいだけ。

 そう思ったからだ。

 ――だが、

【チェンジ】を部分的に解き、俺の瞳が赤く、そして肌が青白くなっていく。

 ゼフは普段見えない細目を開き、ラファエロは驚愕し、リンダは口を手で覆った。


「ま……魔族……!」


 ラファエロの驚きは当然だろう。


「姿を見るに、吸血鬼……ですな」


 ゼフの警戒も当然だろう。


「まさか、こんな事……!」


 リンダが嘆くのも仕方ない事。

 ――だが、違った。

 レティシアだけが違ったのだ。

 驚きもせず、警戒もせず、嘆きもしなかったのだ。


「それがミケラルドの本当の姿なのですか?」


 ただ、単純な興味本位であるかのように、小首を傾げてレティシアは言ったのだ。

 俺はそんなレティシアに一瞬だけ驚き、しかしすぐに顔を戻し、レティシアの頭にぽんと手を乗せた。


「実は身長をかなりサバ読んでる。本当はレティシアより小さいんだよ」

「何故小さくならないのですか?」

「服が脱げちゃうからだよ」

「あっ! ……ご、ごめんなさい」


 レティシアはほんの少しだけ頬を赤らめて謝罪した。

 なるほど、【看破】の特殊能力を持つが故の行動か。レティシアの反応が変わらなかったのは、既に俺の悪意(、、)に気付いているからだ。そう、悪意がないって事に。

 レティシアの能力を知らない者はおそらくこの場にいないだろう。

 だからこそ、まずリンダの反応が変わる。


「忘れていました。この方はレティシアの恩人だったという事を」


 そして、ラファエロも溜め息を吐いて反応する。


「そうです。それに、父上は仰いました。ミケラルド殿を頼れと」


 ……まぁ、ランドルフはまだ知らないんだけどな。

 ゼフも警戒を解き、俺の目をジッと見た。品定めというより、俺の本質を覗くかのような視線。


「レティシアお嬢様程ではありませんが、私も善人と悪人の区別くらい見分ける術を心得ております。が、少々驚きましたな。ほっほっほ」


 どうやら、【催眠スモッグ】の魔法は必要ないみたいだな。

 俺はホッと胸をなで下ろし、皆に「ありがとうございます」と礼を述べてから再び【チェンジ】を発動した。


「詳しい話は道中で。まずはシェンドの町へ」


 時間は少ない。

 ――急がなくては。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ