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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

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654/917

その651 第三十八回、ミナジリ会議2

2021/9/19 本日一話目の投稿です。ご注意ください。

 額に指をトントンと当て、リズムを取っているロレッソ。

 ロレッソこんぴゅうたあが激しく動く。

 チーンとでも効果音が鳴ったかのようにロレッソがこちらの世界に帰ってくる。


「打倒魔王、確かにこの線ならば敵は作らない……やはり残るはシェルフの答え次第となりますね」

「確かに、それが妥当だよね〜」


 言うと、ナタリーがお叱りモードの視線を向ける。


「ミック、ふざけないの」

「すんません」


 すると、リィたんが俺に言った。


「しかしSS(ダブル)ダンジョンの報酬がSSS(トリプル)ダンジョンへの道標とはな」

「ランクSダンジョンの報酬がSS(ダブル)ダンジョンで使う鍵だったからね。十中八九合ってるはずだよ」

「ミックが我々にも教えられなかった理由はシェルフにあったか。確かにどこから漏れるかわからない政治の話だ、それが正解だったのかもしれないな」

「ロレッソに話したとしても、俺と同じ事をしただろうからね」


 すっとロレッソに視線を持っていくと、彼は呆れるような溜め息を吐いた。


「確かに、これ以上ない一手です。私でもこれだけの回答を出せたかどうか……クロード殿の手前、これを言い切ってよいのかどうかは悩むところですが」

「あ、いえ……私も驚いただけで、確かに動揺しましたけど……」


 クロードはエルフ。

 シェルフの【聖域】の意味をよくしる人物だ。ロレッソが配慮するのも仕方ない。しかし、その後クロードが口にした言葉は、俺を驚かすものだった。


「で、ですが今、私はミナジリ共和国の臣民。ならばミケラルドさんの考えに賛成です」


 そう言って、ニコリと笑ってくれたのだ。

 目を丸くした俺とナタリーは見合い、そして互いにくすりと笑ったのだ。俺はミナジリ共和国を自国と言い切ったクロードに嬉しくなり、そしてナタリーは……はてさて、何故笑ったのだろうか。


「ありがとうございます。その言葉は力になります。時が来れば、クロード新聞でもその事に触れるでしょう。その際は是非よろしくお願いします」

「ははは、ではバルト殿に添削でもして頂きましょう」


 くっ、何て眩しいんだ、この童顔エルフの笑顔は!

 国のマスコットキャラクターにしたいじゃないか!

 まぁ、エメラもクロードのこういうところに惚れたのかもしれない。


「ところでよ」


 切り出したのはドゥムガだった。


「ん?」

SS(ダブル)ランクのダンジョンはSSS(トリプル)になればソロで潜れるが、もしSSS(トリプル)のダンジョンが見つかったらどうするんだ? ガキ一人じゃ潜れないんじゃねーか?」

「そこは冒険者ギルドとの交渉次第かな。イヅナさんとオベイルさんを連れて行ければ臨時で潜れるのか、ソロで潜っていいのか。でも、最終的には勇者エメリーと聖女アリスが潜らないといけないから、ギルドによる規定は必要だと思うよ」

「……て事は、パーティランクがSSS(トリプル)にならなくちゃ潜れねぇって事か」


 オリハルコンズのパーティランクがSSS(トリプル)に……と、考えると先の長い話になってしまうかもな。

 たとえリィたんが冒険者ギルドの要請に従ってSS(ダブル)に上がったとしても、すぐにSSS(トリプル)に上がれる訳ではない。何故ならSS(ダブル)の依頼が有り余ってる訳ではないからだ。

 ここら辺はアーダインを突っついてみるしかないなー。


「よーし、来年こそは!」


 と意気込むのは、この中でランクSになっていないオリハルコンズのメンバー――ナタリーだった。


「来年には魔王復活してたりして」

「えぇ!? そ、それは困るなぁ……」

「いつ復活するかわからない相手だからね。それまでに出来るだけ強くなっておくのは変わらないよ」

「ミックでも勝てない相手だったらどうするの?」

「そうならないようにするのが元首としての俺の仕事なんだよな……」

「その仕事を今回した、って事ね」

「そう受け取ってくれると嬉しいねー」


 くすりと笑って言うと、ナタリーもにへらと笑い返してくれた。どうやら先の件は許されたようだ。


「あ、そういえば結果はどうだったの? 武闘大会の戦士部門は?」


 聞くと、ナタリーはリィたんと見合ってからVサインを見せてくれた。


「おぉ、もしかして三人ともっ!?」

「もっちろん! ミックの予想通り、ハンさんと接戦を繰り広げたクレアさんが決勝進出、それでラッツさんとクレアさんが……もう、凄かったんだからっ!」


 身を乗り出し、語彙力を失ったナタリーは興奮気味に語る。それを補足するようにリィたんが言った。


「ラッツもクレアの攻撃に手間取っていたからな。そのクレアと接戦に持っていったハンも評価されたという訳だ。幸か不幸か、今年の武闘大会はオリハルコンズ一色だったという事だな」


 幸か不幸か……ね。まぁ、その通りなんだよなぁ。

 そう考え、俺が苦笑してると、ナタリーがリィたんに言った。


「リィたん違うよ」

「ん?」

「二年連続だよ!」


 嬉しそうに言って、ナタリーはリィたんの目を丸くさせたのだ。確かにそう言われてみれば、去年の優秀者は俺、リィたん、勇者エメリー……か。

 なるほど、三人ともオリハルコンズである。

 そして今年は、魔法使い部門から聖女アリスとキッカ。戦士部門からラッツ、ハン、クレア。

 こりゃ、冒険者からの(ひが)みの対象になるかもなー。

 きゃっきゃと喜ぶナタリーに、エメラが素敵な一言を添える。


「ナタリー、三年連続……頑張ってね!」


 珍しくも固まってしまったナタリーだった。

次回:「その652 胃痛」

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