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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その64 商人ギルドからの特別依頼

「おめでとうございます、ミケラルドさん。商人ランクがBとなりました」

「おぉ! てっきりランクDかCくらいかと思ってましたけど、そこまでいきましたか」

「これは流石に異例中の異例でした。本来ランクBになるには、稼いだ金額とは別に大きな商談の成立が必要なのです。何か特別な商談を?」


 微笑みながら聞いてくる受付嬢に、俺は苦笑して見せる事しか出来なかった。

 なるほど、稼いだ金額とは別の昇格条件があったのか。

 ギルドカードが認識した大きな商談とは、(すなわ)ち冒険者ギルドとの流通独占契約の事。なるほど、商人ギルドはこれを商談と認めたという事か。


「これで取引出来る商品の制限は解除されました。これからはお好きな商品を取り扱い出来ますよ」

「一つお伺いしたいのですが」

「はい、何でしょう?」

「【規制品】についてです。商人ギルドに入る時に教わりましたけど、ランクAになったらこれが取り扱い出来るようになると聞きました」

「でしたら、こちらをお求めください。商人ギルドが定めた【規制品】について詳細が記されています」


 数十ページ程の紙の束。なるほど、「お求めください」か。金貨二十枚とは中々ふんだくるじゃないか。まぁ、ランクAのまでの道は長そうだし、今後取引する上で、誤って取り扱わないために、買っておいて損はないか。


 ――【規制品】。用途を間違えれば犯罪に繋がったり、毒物になるような危ない品の事をそう呼ぶ。これを売るためには、商人ギルドでランクAになるしかないし、買うためには、その許可証を国から発行してもらう必要がある。

 似た話だと、現代の薬剤師に近いのかもしれない。薬を取り扱うにも資格がいるし、その薬を手に入れるにも処方箋が必要。

 それがこの世界ではランクAの商人という事になる。

 規制品を利用して大もうけ……なんて事は出来ないに等しいだろう。

 需要がそこまでないし、取り扱える商人ランクAにまでなっていれば、そんな必要がないからだ。ただ、自分に使う事が出来るのは非常に大きい。予め有用なモノに目星も付けているし、出来れば早いところランクAの商人になりたいものだ。


「そうでした。ちょうどランクBの商人の方にお願いしたい依頼があるのですが、ミケラルドさん今お時間あります?」

「実績なんてほとんどないに等しいのに、いいんですか? 紹介しちゃって?」

「問題ありません。ランクGから一気にランクBになる方ですから」


 淡々と言うギルド員。

 ふむ、ここは持ち上げられておくか。


「かしこまりました。ミケラルド商店にお任せを」


 ◇◆◇ ◆◇◆


「さて、ここら辺で待ち合わせのはずだ」


 まさか依頼が「運び屋」だとは思わなかったが、商人ギルドの仕事もそれだけ多岐にわたるという事だろう。

 待ち合わせ場所はマッキリーの町の北門。

 ここから向かえる場所なんて、首都リーガルくらいしかないが、リーガルまでの移動ってのを考えると面倒だな。全力で走っても丸一日は掛かる。全ては依頼人に会ってから決まるとギルド員は言っていたが、はたしてどんな依頼になる事やら。……ん?


「知ってる気配ですね」

「お気づきになられましたか。流石ミケラルド様」

「あなたが何でこんなところにいるのか、まず聞きたいですね。ゼフ(、、)さん」


 ――ゼフ。サマリア侯爵家の執事。八十路(やそじ)は超えているであろう老人執事で、その機敏な動きからして、ランクCの冒険者程の実力はあるだろう。


「こちらへ」


 ゼフに案内され、北門の(すみ)まで歩き、現れたのは、予想外の人物だった。


「おぉ、まさかミケラルド殿とは!」

「ラファエロ様……!?」


 驚きはしたものの、俺は咄嗟に声のボリュームを落とした。

 ラファエロ・オード・サマリア。サマリア侯爵家の次期当主と言われる現当主ランドルフの息子だ。俺が盗賊から助けたレティシアの兄でもある。


「一体全体どういう事ですか?」

「ゼフ」


 ラファエロはゼフに向き、何かを伝えた。するとゼフが一歩前に出て言ったのだ。


「まず、今回の依頼から。我々をシェンドの町にあるミケラルド商店二号店に連れて行って頂きます」

「は?」

「まさかミケラルド様が【運び屋】とは思わず、しかし、我々は運が良いですな、ラファエロ様」

「うむ。母上とレティシアもいる。きっと喜ぶだろう」


 何が何だかサッパリなミケラルド君である。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 マッキリーで一番豪華な宿にやって来た俺たち三人。

 なるほど。待ち合わせ場所が北門だったのは、人気(ひとけ)が少ない利点を活かし、【運び屋】である人間を遠くから見て品定めするためか。


「ミケラルドー!」


 ひしと抱きついてくるレティシア。何だよ、俺ってすっかり人気者じゃないか。

 まぁ、怖がられないのは良い事だ。

 しかし、喜んで抱きついているというよりかは、悲しくて抱きつかれている印象だ。

 レティシアに元気がない。何故だ?


「まぁ、なんという幸運でしょう」


 相変わらず優しそうな奥方である。


「お久しぶりです、リンダ様。しかし、これは一体どういう事なのですか?」


 俺がそう聞くと、リンダはとても辛そうな表情をした。


「……夫が、ランドルフが……投獄されました」

2019/6/4 本日三話目の更新です。ご注意下さい。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 商人ギルドと冒険者ギルドにそれぞれの利権のすり合わせで商売が成り立っていると思ったのですが対立を煽るやり方を商人ギルドは本当に評価しているのか?
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